様々な小説の2次小説とオリジナル小説

 胸のペンダントを握りしめたマポルがほろりと涙した。
 一体ナニを考えているのかは知れないが、そろそろ目先の目的に集中してほしい。
 巨大ダンジョン。ここからでも山のようにデカい入り口。
 山そのものが入り口でそれがずっと地下に続いているんだから凄いなんて形容じゃ全く足りない。
 マポルはどうやらそこを踏破することを旅の目的としているらしかった。

「マポル様はかつての勇者様のご子息なのです。私如きがこんなことを申していいのかはわかりませんが、その、歴代の勇者様は全員色欲が酷くてですね……」

 フレデリアの説明を受けているのは俺だ。
 カナリアに外と会話する手段が欲しいと言ったら大人しく魔法を使ってくれた。
 ありがたかったので髪の艶に99ポイント振ったら涙目で喜んでくれたよ。
 どうしてそんなことが出来たのかって、眠ってる間に俺がいたずらしたからかもしれない。
 項目にルチェル、シュレ、カナリア、俺と増えてたからな。
 そして、2つ気づいたことがあった。
 一つは山巫女以外にも別の人のスキルが使えることだ。
 その別の人のスキルとは、綾芽と岩渕のスキルである。
 どうやら取り込んだ魂とやらがスキル習得するカギみたいだ。
 綾芽の能力は時間操作であった。
 岩渕の能力は空間衝撃であった。
 岩渕の能力は8億であった。
 綾芽の能力は蘇りの能力以上のポイントであった。
 大体20億であった。
 どちらの能力も習得することにした。
 2つ目に気づいたことはポイントがかなり増えていたことだ。
 山巫女のときが52億だったが綾芽たちのスキルを習得していなかったら142億ポイントはあったみたいだ。現在のポイントは114億ポイントである。それ以外にも使えそうなスキルを習得することにした。
 そのスキルとは変換効率と時間操作効率と引継転生というよくわからないスキルである。
 引継転生は意外とポイントが消耗して残りポイントが70億ポイントである。
 次に地力を上げることにした。
 限界突破やらに割り振っていった。

「私が代わりにその色欲を受け止めるためにマポル様のお世話係になったのですが、初めて寝床を共にしたときわずか6歳で私の股間を弄ってきまして……それで軽くトラウマになってしまったのです」

 こいつ、それで多数の死者が出てるのを分かって言ってんのか?

『それで、何処まで許したわけ』

「その、触るのには慣れたのですが、いざ本番となるとどうにも及び腰になってしまい、またマポル様のものはまだ小さく無理だと勝手に思っておりました」

 フレデリアの説明はそんなところだった。
 まあ、裸でもつれてるマポルと姫を見て絶叫したくらいなんだからあまり耐性がないのは分かってはいた。
 だがここまでとは思ってなかったよ……。

 巨大ダンジョン前に到着した俺たち。
 そこは大都市と呼べるほどの人口密集地があった。
 まるで山を街全体で囲っているようだ。
 今までとはまったく技術の違う建物も多く見られる。
 ここだけ文明の水準が飛び抜けているかのようですらあった。

『巨大ダンジョンは人間に多くの利益をもたらしてきたといわれています。得にここから取れる素材の中には魔法と同等の力を持つモノさえあるとか』

 アリヤの説明にとりあえず納得はするが、この垂直に切り立った壁面はコンクリートみたいだし、家の造りも地球のものに酷似している。
 ただ、国のそれは違って英国風だったり日本風だったり大きな差違がある。
 まるでどこかのアミューズパークみたいだ。

 ダンジョンの巨大な穴蔵は下手すると世界が闇に覆われるのではないかと思われるほどだ。
 それなりにダンジョン内にも物流が存在するのか、金属レールなどもあり列車が行き来してハイテクダンジョンを思わせる。
 入場案内と書かれた標識はあれど人気は無い。

「何!? 入場できないとはどういうことですか」

 巨大ダンジョンを前にして閑散とした入場申請場に俺たちは訝しんでいた。

「先月大規模のアウトブレイクが起こった際に多数の高ランク冒険者が死亡しました。現在は少数精鋭で最下層の探索だけを進めている状況です。交代制なので――「ふざけるな」

 マポルが切れた。
 受付の男は勇者の悪名でも知っているのか小さく震えている。

「ここに来るだけでどれだけの面倒が掛かったと思ってる」

「そうおっしゃいましても新王の命令でして……前王の許可状では我々もどうすることもできないのです」

 フレデリアの声が潜む。

「でしたら新王への謁見を求めます」

「管轄が違いますのでどうぞ王城の方へお越し下さい」

 対応は素っ気ないものだった。
 ほっと胸を撫で下ろす受付の男をマポルは舌打ちして尻目に去る。

「ん、ターニャ?」

 一行の端にいた少女に声を掛けたのは怪しいお兄さんではなかった。

「お兄ちゃ……」

「良かった、そろそろだろうと思ってこっちに配属希望を出して正解だった」

 長髪のイケメンは肩に青いローブを羽織っていかにも高級そうな服に袖を通している。

「勇者マポル様、お初にお目に掛かります。私はこちらのターニャの兄、フレン=スイレイヤという者です」

「男に興味はないよ。早く消えて」

「はは、手厳しいですね」

 こいつ、ターニャの兄とか言ったのか。

「お兄ちゃん、どうしてこんなところにいるの? 王宮の仕事は?」

「そんなもの知ったことか!」

 そんなものときたぞ。

「世界の何より私はターニャが大切だ。例えマポル様が男の私を認めて下さらないとしても私はターニャの命だけは守るつもりだからね」

 おおう……この兄貴凄いシスコンなのか?

 凄い妹思いなのはいいが、マポルに殺されないかな。

「どうですか、勇者様。私のターニャはきちんとやれていますか? 特に夜のお供などはもうお済みに?」

 顔を赤くするマポル。
 そうか、既にそういう知識はあるわけだもんな。

「そうですか、いえお答え頂く必要はございません。全てこの兄めにお任せください」

 くるりと振り返ってフレンは髪を横に払う。なんなんだよその仕草。

「ターニャ、悪いことは言わない。早く勇者様のお子を宿すんだ。君に必要なのは荒くれ者達が跋扈する闇の世界じゃない、幸せな生活と幸せな家族だ」

「お兄ちゃん……私今ではこの生活でも幸せよ」

 フレンが頭を振って溜息を付く。

「勇者様、是非私めもご一緒させて頂けませんか。何でも致します、女装しろというのであれば喜んで致しましょう、靴の裏を舐めろと言われれば例えどんな糞がついていたとしてもお舐め致します」

 フレンが土下座してマポルに頭を下げている。
 フレデリアが苦悶の表情を浮かべているが、あれは軽蔑か? まるで汚物でも見ているようだ。

「君はえっちなの好き?」

「は……」

 一瞬顔に神妙が差したもののフレンはすぐに作り笑いを浮かべた。

「もちろんですとも、私はこれでも王宮中の女性を誑かして毎夜を香しく過ごした者。これまで女性の扱いに困ったこともありません。いうなればデブとブスと 幼女(ロリ)以外の女性であれば世界中の女性は全て私と寝たことがある、もしくは寝たいと思うでしょう」

 確かにそれくらいイケメンだけど言葉にされると殺したくなるな。

「お兄ちゃん……」

 こんな兄を持ってターニャも大変だ。

「ターニャ、あなたのお兄様は随分と特殊なようね」

「私が勇者様にお会いした頃には兄の存在は伏せられていたんです。理由はわかりません……」

「それきっとマポル様の教育によくないからよ」

 フレデリアの顔が引き攣っている。
 そらマポルのこのきらきらした顔を見れば分かるな。

「僕はね、女の子の股でびくびくなるのが好きなんだ。フレンもそう?」

「もちろん、男でそれを嫌いな者などおりません。勇者様がよろしければ世界中の様々な女性とそのようなことをするサポートを私めが致します」

「ほんと!?」

「ええ、本当ですとも。私の目が黒いうちは勇者様の気持ちよいところをびくびくさせる女性を好きなだけご用意致しましょう」

 こいつらマジではやくなんとかしないと巨大ダンジョンのアウトブレイクどころじゃなくね?
 イケメンとエロガキがタッグを組むなんて前代未聞の性犯罪だぞ……。

「兄は世界精霊術師会の副会長も務めているんです。精霊術においては右に出る者はいないことで有名ではあるんですが、兄の名前はなぜか伏せられていてただ精霊術師会副会長の魔法は凄いってことしか広まらないんです」

 いや、その副会長早くクビにしたほうがいいよ。

「とにかくフレンといいましたね。いくつですか?」

 フレデリアが若干怒り混じりに聞いている。

「今年で22になりますね。子供は5〜60人います。まあ、私が認知した数がそれだけということですが」

 怖ぇわ!
 性欲の化け物かコイツ。

「そ、そんなこと聞いておりません……」

「私に変な気は起こさない方がいいですよ、好きじゃなくても身籠もってしまいますので」

 だから怖いっての! 下手にイケメンなのがリアルな恐怖を煽るわ。

「わ。わかりました。兄妹でもあまり似ていないようですね」

 フレンはターニャを見下ろす。

「それは妹が可愛すぎるという意味でしょうか?」

 ターニャはそばかすのあるどこにでもいそうな女の子だ。
 フレンには悪いが、この兄にこの妹はあり得ないというほど平凡だ。

「ま、まあ……」

「そうでしょう! そうでしょう! ターニャの美しさがわからない人間は誰であろうと消し去ってきました。世にはターニャのような女性で溢れるべきなのです」

 あ、なんか世の中の行く末が見えてきたわぁ。

「とてもご立派な志をお持ちで……」

 結局王城まで着いて来ちゃったよフレン。
 ターニャが茶髪の横髪に赤くなった頬を隠しながら歩いている。
 今は絶賛ターニャの過去エピソードがフレンによって暴露され続けている。

「そのときターニャは生まれて24回目のお漏らしをしました。あの時初めて頬を染めて濡れた瞳を私に見せたのです」

 もはや公開処刑だ……。
 これを耐えて聞いているターニャはいつか兄の前から消えていなくなるかもしれないな。

「まて、何日前と言った?」

「1648日と21時間前です」

「兄の記憶力は普通じゃないんです……」

 本人でさえ忘れているようなことを克明に記憶している。
 そんな人間ではあるものの、致命的に人格は欠陥だらけのようだ。

『あんなお兄さん欲しくないですね』

 アリヤがぼそりと呟く。

 それから王城で前王の許可状を手渡したが、謁見は通らなかった。
 そげなく突き返された書状をフレデリアは受け取る。

「くそ、殺してやる!」

 マポルが切れるのをフレンは諫める。
 手渡した衛兵は憐れにも尻餅を着いた。相手が分かっているのだろう。

「勇者様、びくびくするのがお好きなのでしたら誰彼構わず殺してはなりません。特に王殺しなどもっての外、王ほど経済力のある人間はおりませんからそれだけ女が寄りつきます。女のいるところに新しい女ありです。女は1人では子供を産めませんのである程度の男も必要なのです」

「子供を産む?」

「そうです、勇者様もいかに強いとはいえ人の子、この世界の至高の美である私でさえ人の子なのです。必ず、男女両方が必要。勇者様は殺す人間を選ばなければ気持ちいい女性は生まれてこないのです」

 マポルは神妙な顔になった。
 最後の例えは最悪じゃないか?

「どうやって子供が作れるの?」

「それは今夜お教えしましょう。それより今日はもう宿を取りお休みください、あなたたちの旅の目的はダンジョンの解明、そうですよね?」

「そうです、前王が多額の報酬を我ら南国に支払うことを条件に我々はここまで来た。それをこのように無碍にされるなどあってはならないことです」

 フレンはとにかく休めるところへと一行を案内した。

 宿はあるもので店主の話では前回のアウトブレイク以降閑古鳥が鳴いているらしい。
 全部屋貸し切りだとフレンが言うと店主は泣いて喜んだ。
 フレデリアとフレンはカウンター前のテーブルに着いて水を前に話し始める。

「報酬についてですが……詳しい内容は聞いていますか?」

 フレデリア以外は思い思いの場所で過ごし始めている。方針が定まらないためだ。
 マポルは奴隷姫と寝室に向かった。

「いいえ、王は渋い顔をしていただけでした」

「私が南国を左遷された理由についてはご存知で?」

「あなたは高名な精霊術師のようですね」

「ええ、かつては南国随一。それも10年も昔のことです、当時最高権力者の魔術師会会長は20代の女性でした。お察しの通り今では妻の1人です」

「それは聞いてないです……」

「ですから、当時12歳だった私に子供が出来ること自体が左遷の理由なのです。南国の王は力の至上主義、勇者マポル様もそのうちのお1人のはず」

「はい、マポル様の祖先は元々この世界の人間ですらなかったそうですから」

「待ってください。あなたが私達の旅の目的を知っている理由はなぜですか?」

「私はこう見えても南国中の女性と寝た男です。いいですか? 南国中です」

 その言葉にフレデリアは思い至ったらしい。

「王妃が? そんなまさか」

 水を一口呷る。

「話を戻しましょうか」

 とにかくそんな王が他国の利益のために行動することは考えにくいとのことだった。
 不穏を感じ取ったフレンは急遽旅の最終目的地であるこの地へ向かい、俺たちを待っていたらしい。

「私は王の目的はダンジョンの解明ではないと思います」

 案の定ここで旅が行き詰まり今は手持ちぶさたになってしまっていた。

「では、私達をここで釘付けにして王は何を考えてらっしゃるのでしょう?」

「近々、新しいアウトブレイクが起こります。前回は魔女教会が出て事なきを得たようですが、今回は世界規模の災厄となるでしょう」

「一体何が」

 フレンは少し間を置いた。

「古代種の復活、それが最深層で囁かれているという噂です」

「古代種というと、竜や巨人でしょうか……?」

 ターニャとマウリールは談笑しながら寝室に上がって行って叫び声を上げた。
 そんな騒ぎにこの2人は無頓着だ。

「いいえ、神話以上に凶悪な存在のようです。ドラゴンエンゼルという魔物をご存知ですか」

「神話じゃなく終焉の書に記された魔物ですか?」

「はい、今の時点でここには数多くの強者が集められていますが、ドラゴンエンゼルはひとたび姿を現せば黄金の輝きと共に大地を全て焼き払うと書かれてあります」

「まさしく終焉……というわけですか」

 フレデリアの声がパコパコという音の中に沈む。

 パコパコパコ――……2階からその音はいつまでも鳴り続けていた。


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