「あ・・・うん。そこ、いい・・・」
「すごい。すごく気持ちいいよ、有香」
暗い迷宮の中、若い男女の嬌声が響く。敷物の上に裸身を寝かせた女の上に、下半身だけ鎧を脱いだ男がまたがっていた。
ちゅくちゅくと音を立てながら、男の一物がすっかり濡れそぼって湯気すら立てそうな女陰を抽送する。
「あふぅんっ」
女は悦楽の混じった声で一声鳴くと、びくびくと小ぶりな乳房を震わせて痙攣した。
「うわっ、締まるっ」
女の絶頂した膣肉が男を締め上げ、やがて男も女の胎の内に若い欲望を吐き出した。
「あぁ、いい。雄太の、出てるぅ」
女は恍惚しながら、男の逞しい腹筋を指でなぞる。男もまたむき出しになった女の乳房に指を這わせる。
「これ、病み付きになっちゃうね」
「ま、な」
男はそう言って苦笑した。渋谷特区松涛迷宮一階層。初心者向けと称されるこの迷宮にもぐる学徒たるこの恋人達は、いずれも伍レベルを数える強者である。 毎月単純なステータスによって発表される学閻ランキングでは惜しくも100位圏外ではあるが、1万数千人の学徒達の中では、有数の存在と言って差し支えない。
そんな二人がわざわざ松涛迷宮にまで脚を運んだのは、若い恋人である二人が迷宮内でのセックスに夢中になっているからだった。
本来命を懸けて挑む迷宮。富の象徴。そしてなにより死の象徴。ただの屋外行為とは一線を画すこの第一級のスパイスに、二人はつい最近はまりだしていた。
それでも最前線の迷宮で行うには危険が高すぎる行為だ。だからわざわざ二人なら間違っても命を落とすことのない松涛迷宮まで出向いているというわけである。
「静香が待ってるから、そろそろ帰ろうか」
「あん、待って。もうちょっとだけぇ・・・」
男が女陰から肉棒を引き抜こうとすると女が男の腰にしなやかな脚を絡ませる。
「おいおい」
「いいでしょ?もういっか―――」
甘ったるい声で女が行為を催促しようとした時、二人はその気配を感じて表情を変えた。
「もう!いいとこだったのに」
女は男のペニスを引き抜くと、すぐさま傍らに散らかされていた軽鎧を身に着けた。男も下半身の鎧を着込み、男の身長ほどもある巨大な剣を背に負った。
「馬鹿にデカイ気配だな?」
「松涛迷宮だよ。大したことないよ」
誰もが若かりし頃、一度ならず経験する全能感と慢心。学閻3年生の二人がその甘美な人生の罠の中にあったことを、誰も責められはしない。
ただ増上慢の報いを、本人等が受けるだけだ。
『嗚呼、恨めしい。恨めしや・・・』
怨嗟の声と共に迷宮の奥から現れた固体に、二人はその目を僅かに見開く。
「戌神?」
女がその敵性生物の姿を見てつぶやく。確かにそれは体長5mほどの巨大な獣の姿をした戌神と呼ばれる敵性生物だった。ただし、その体毛は常なる固体の黒と違って純白だった。
白い戌神。
呪いを吐くこの固体に、女の端末が反応してそのステータスを表示する。
『固体名:戌神(太母)
レベル:捌
種族:神獣(艶)
筋力:28,011
敏捷性:30,800
知力:19,600
魔力:9,600
魅力:31,605(ただし狡猾スキルにより230)
保有スキル:特異固体 魔力無哮 狡猾 繁殖 寄生 千年を生きし魔獣 解析不能 解析不能 解析不能 解析不能
!狡猾スキルにより魅力値を抑えています。
!何らかのスキルによって、いくつかのスキルの解析がジャミングされました
!警告 適正レベルではありません。討伐不可能生物です。速やかに撤退してください』
「レベル・・・は、捌?」
「ば、ばかなっ」
男が何度も端末を見直すが表示の内容が変わることはない。戌神が松涛迷宮にいるだけでおかしいのに、この冗談の様な固体は何だと言うのだ。じっとりと嫌な汗が背中を伝うのを男は感じる。
『うぬらがそうかえ?愛しい我が子を殺したのかえ?匂いがせぬなぁ。うぬらではないなぁ。あの子の断末魔の匂いがせぬなぁ』
「有香」
戌神と対峙しながら男が女を呼ぶ。蒼白な顔でガチガチと歯を鳴らす女に、男は優しく微笑んでみせた。
「有香。逃げるんだ。ここは僕が時間を稼ぐ」
「でもっ」
「静香を頼む。頼めるのは君しかいない。頼んだぞっ」
「雄太!!」
男が大剣を抜き放ち、戌神に向かって走り出した。俊敏と言っていい風のような速度。しかし戌神は意にも介さず、ただ悠然と歩くのみ。
『戌神(太母)がステータスを開放しました』
「!?んぐ・・・」
「くはぁっ・・・」
『逃がさぬよ。うぬらには我の役に立ってもらう』
ただ魅力値が開放されただけ。それだけで、二人は動けなくなってしまう。自慰を始めたり気絶したりと言う無様を晒さないのは流石だが、3万を超える魅力値に腰が砕け、立ち上がることも出来ない。
ただの人間であれば、目にしただけで発狂して絶頂に達しながら脳が破裂する。3万とはそれだけの魅力値だった。
「うっく・・・。有香・・・」
戌神が女に向かってひたひたと歩く。その場に突っ伏した女の顔を獣の舌がベロリと舐めた。
「あふぅんっ」
獣の一舐めで、女はびくりと震えて痙攣する。口はだらしなく半開きに開かれ、舌を出したまま目を見開いている。
「あ・・・あが・・・ふわぁ・・・」
「有香・・・」
男は無念で歯を食いしばった。立ち上がることもできない彼では、到底女を救うことなど出来そうになかった。
『外に出るには衣がいる。女、うぬの身体をもらうえ』
獣はそう宣言すると、長い舌を開かれたままの女の口に差し入れた。
「あ、あひ、んんぐ、んんぐぅ・・・」
「有香!!!!」
すると恐るべきことが起きた。巨大な戌の体躯が舌先からどんどんと女の口の中に吸い込まれていったのだ。
「あ、あひ、ひぎ、ひぐぅ、ぎぃ、ひがっ」
女の身体がめきめきと膨らんだり縮んだりを繰り返す。伸縮性のある袋の中に、容量以上の荷物を詰め込んでいくようなそんな感じの膨らみ方だった。
蛇が巨大な獲物を顎関節をはずして丸呑みするのに近かったかもしれない。軽鎧は内側から圧迫されて弾けとび、ごきごき、めきめきと音を立てながら、女の裸体が戌神を飲み込んでいく。
「うあわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
その光景は地獄よりも尚凄惨なものだった。男は恋人が、生きながら身体を作りかえられ、別の生き物にのっとられていく様を見せ付けられているのだ。
「ひゅー、はひゅー・・・」
最早意味のない風音だけを立てる女の口に、戌神の尾までがしゅるりと飲み込まれた。それでも尚しばらくはごきごきと女の身体が変形を繰り返し、10分程後、元の美しい姿のまま、女が立ち上がった。
「ん、んん・・・。久しぶりだけど、こんなものかしらね」
「有香・・・?」
いや、元のまま、ではない。
さっきまでとは数段美しく変貌した女がそこにいた。瞳は妖艶に輝き、ぷっくりとした唇を赤い舌がちろりと舐める。肌は絹のように滑らかで、控えめだった乳房はたわわに実って女のちょっとした動きで震えていた。
腹のラインは白くくびれて淫靡で、むっちりとした太ももに隠された女陰が、むせかえるような甘い芳香を放っている。
「あ、あがっ、で、でるっ!!」
ただ女と視線が合っただけで、男は射精していた。
「で、でるっ!また、ひっ、でる!」
女が一歩一歩近づいてくる。大きな乳房がぷるると揺れる。それだけで男は何度も射精した。
「雄太・・・。愛しい人。どうしたの?どうしてそんなに怯えてるの?」
「あ、あぁ、有香、君は・・・うわっ」
女が男に近づき顔を覗き込んだだけで、男はまた射精していた。女は笑いながら、男の分厚い鎧をびりびりと紙のように破いて捨てていく。
「ねぇ、しようよ、雄太。いつもみたいに激しくしよ?ね?」
「ああ、あぁ・・・」
全裸に向かれた男のペニスが、ぎちぎちに膨張して天を向いていた。精液にまみれててらてらと光りながら、なおもびゅくびゅくと射精を続けている。
女はその肉棒を握り、己の女陰にあてがった。
「さぁ、いれるね?」
「うわ、ま、まって、あ、あ、あ、はいってしまう、はいっちゃう、うわ、ふぅわ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
ねっとりと絡み付いてくる女の秘肉。亀頭を包み込みながらやさしくもみしだき、竿を飲み込みながら扱きたてる。
人ならぬ極上の膣肉に、男はびくんびくんと腰を突き上げることしか出来ない。
「ほらぁ、もっといっぱい突いて?いっぱいだして?魂がでちゃうくらい気持ちよくなってよぉ」
「あ、あがっ、ふぐわぁ、うわぁっ」
ぬちょぬちょと音を立てながら女が艶かしく腰を前後に動かす。あまりに大量の精液が出るものだから女の腹がまるで妊婦のようにぷっくりと膨らんだ。
「あはっ、いいよ。もっと出して?ね?」
「うが、うわぁっぁぁぁぁぁぁぁぁ」
やがて男に変化が起きた。その裸体の全身に黒い体毛が生え出したのである。
「うぅ、う、ぐぁぁぁぁぁぁ、あうおおおおおおおおおん!!!!」
「いいわ、さぁ、ついてっ!」
やがて男は起き上がり、女を押し倒して腰をぶつけ始めた。びくんと痙攣したかと思うと男の身体が倍ほどに膨らみ、もういちど痙攣するとさらに倍に膨らんだ。
男の男根も当然にして膨張しており、ついには女の頭ほどの亀頭が、その女陰を行き来していた。
「そう!いいわ!もっとついて!つきなさい!魂を、かきかえてあげる」
『わおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!!』
すでに完全に男は戌神と化していた。
戌神(太母)の「スキル:繁殖」であった。屈服した人間を材料に眷属を増やす。神と呼ばれる敵性生物の母たる個体にだけ許されたスキルであった。
「うふふ」
女が自分の膣内を懸命に蹂躙する男だった獣に頬をやさしく手で触れる。獣はうれしそうに女の手をぺろりと舐めた。
「このくらいで、んふ、いいわっ、最後に、んあ、いっぱい出しなさい?ね?」
『あおおおおおおおおおおおおん!!!!!!」
ぶびゅるるっるるうるるるるるるるるっるうる!!!!!!
女がくいっと腰を上げると、獣は一声上げて女の奥深くまで肉棒を突っ込み、盛大に射精する。
「んんっ、ああぁ、いいっ!ザーメン、さいっこう!!!!」
女もまた嬌声を上げながら揺れる乳房を自らもみしだく。
「はぁん!!!!」
びくっと痙攣して、尚、妖艶に笑う女。獣は女からペニスを抜き出すと、低く伏せて女に頭をたれた。女の女陰から、どろりと大量の精液があふれ出す。
「久しぶりの人間の身体もいいわね」
『母よ。これからどうする?』
「ん?そうね」
獣から母と呼ばれた女は、くすりと笑って獣の背に飛び乗った。
「久しぶりにいっぱい繁殖したいわ。雄太、楽しいと思わない?あなたの弟がいっぱい増えるの。きっと素敵だわ」
『御心のままに』
全裸の女が獣の背で笑う。魅力的な乳房がぷるると震える。
女と獣は、更なる犠牲者を求めて迷宮を進む。
松涛迷宮は、誕生以来もっとも危険な迷宮に変貌しようとしていた。
誰もいない洞穴内で、床に落ちた端末が、弱弱しい人工音声を奏でていた。
『学徒番号:85-3-6672
固体名:楠 有香
レベル:五
種族:人類
職級:巫女姫
筋力:28,011(ただし狡猾スキルにより1130に偽装)
敏捷性:30,800ただし狡猾スキルにより892に偽装)
知力:19,600ただし狡猾スキルにより1003に偽装)
魔力:9,600ただし狡猾スキルにより1265に偽装)
魅力:31,605(ただし狡猾スキルにより1490に偽装)
保有スキル: 巫女姫の祝福(使用不可) 魔術lv.2 姫舞 結界lv.4 特異固体 魔力無哮 狡猾 繁殖 寄生 千年を生きし魔獣 解析不能 解析不能 解析不能 解析不能
!狡猾スキルによりステータスを偽装しています。
!何らかのスキルによって、いくつかのスキルの解析がジャミングされました
!戌神の寄生を受けています
学徒番号:85-1-2223
固体名:等々力 雄太
レベル:五
種族:神獣(堕)
職級:速剣士
筋力:2020
敏捷性:2200
知力:810
魔力:1089
魅力:2009
保有スキル:剣術lv.5(使用不可)加速lv.2 切れ味倍化 魔力無哮
!戌神に転生しました』
黒い獣は美しい少女を負って迷宮を登る。学閻に誰の予想も超えた災厄をもたらさんと。静謐な迷宮の闇は、無言のまま獣の太母を見送った。
次
「すごい。すごく気持ちいいよ、有香」
暗い迷宮の中、若い男女の嬌声が響く。敷物の上に裸身を寝かせた女の上に、下半身だけ鎧を脱いだ男がまたがっていた。
ちゅくちゅくと音を立てながら、男の一物がすっかり濡れそぼって湯気すら立てそうな女陰を抽送する。
「あふぅんっ」
女は悦楽の混じった声で一声鳴くと、びくびくと小ぶりな乳房を震わせて痙攣した。
「うわっ、締まるっ」
女の絶頂した膣肉が男を締め上げ、やがて男も女の胎の内に若い欲望を吐き出した。
「あぁ、いい。雄太の、出てるぅ」
女は恍惚しながら、男の逞しい腹筋を指でなぞる。男もまたむき出しになった女の乳房に指を這わせる。
「これ、病み付きになっちゃうね」
「ま、な」
男はそう言って苦笑した。渋谷特区松涛迷宮一階層。初心者向けと称されるこの迷宮にもぐる学徒たるこの恋人達は、いずれも伍レベルを数える強者である。 毎月単純なステータスによって発表される学閻ランキングでは惜しくも100位圏外ではあるが、1万数千人の学徒達の中では、有数の存在と言って差し支えない。
そんな二人がわざわざ松涛迷宮にまで脚を運んだのは、若い恋人である二人が迷宮内でのセックスに夢中になっているからだった。
本来命を懸けて挑む迷宮。富の象徴。そしてなにより死の象徴。ただの屋外行為とは一線を画すこの第一級のスパイスに、二人はつい最近はまりだしていた。
それでも最前線の迷宮で行うには危険が高すぎる行為だ。だからわざわざ二人なら間違っても命を落とすことのない松涛迷宮まで出向いているというわけである。
「静香が待ってるから、そろそろ帰ろうか」
「あん、待って。もうちょっとだけぇ・・・」
男が女陰から肉棒を引き抜こうとすると女が男の腰にしなやかな脚を絡ませる。
「おいおい」
「いいでしょ?もういっか―――」
甘ったるい声で女が行為を催促しようとした時、二人はその気配を感じて表情を変えた。
「もう!いいとこだったのに」
女は男のペニスを引き抜くと、すぐさま傍らに散らかされていた軽鎧を身に着けた。男も下半身の鎧を着込み、男の身長ほどもある巨大な剣を背に負った。
「馬鹿にデカイ気配だな?」
「松涛迷宮だよ。大したことないよ」
誰もが若かりし頃、一度ならず経験する全能感と慢心。学閻3年生の二人がその甘美な人生の罠の中にあったことを、誰も責められはしない。
ただ増上慢の報いを、本人等が受けるだけだ。
『嗚呼、恨めしい。恨めしや・・・』
怨嗟の声と共に迷宮の奥から現れた固体に、二人はその目を僅かに見開く。
「戌神?」
女がその敵性生物の姿を見てつぶやく。確かにそれは体長5mほどの巨大な獣の姿をした戌神と呼ばれる敵性生物だった。ただし、その体毛は常なる固体の黒と違って純白だった。
白い戌神。
呪いを吐くこの固体に、女の端末が反応してそのステータスを表示する。
『固体名:戌神(太母)
レベル:捌
種族:神獣(艶)
筋力:28,011
敏捷性:30,800
知力:19,600
魔力:9,600
魅力:31,605(ただし狡猾スキルにより230)
保有スキル:特異固体 魔力無哮 狡猾 繁殖 寄生 千年を生きし魔獣 解析不能 解析不能 解析不能 解析不能
!狡猾スキルにより魅力値を抑えています。
!何らかのスキルによって、いくつかのスキルの解析がジャミングされました
!警告 適正レベルではありません。討伐不可能生物です。速やかに撤退してください』
「レベル・・・は、捌?」
「ば、ばかなっ」
男が何度も端末を見直すが表示の内容が変わることはない。戌神が松涛迷宮にいるだけでおかしいのに、この冗談の様な固体は何だと言うのだ。じっとりと嫌な汗が背中を伝うのを男は感じる。
『うぬらがそうかえ?愛しい我が子を殺したのかえ?匂いがせぬなぁ。うぬらではないなぁ。あの子の断末魔の匂いがせぬなぁ』
「有香」
戌神と対峙しながら男が女を呼ぶ。蒼白な顔でガチガチと歯を鳴らす女に、男は優しく微笑んでみせた。
「有香。逃げるんだ。ここは僕が時間を稼ぐ」
「でもっ」
「静香を頼む。頼めるのは君しかいない。頼んだぞっ」
「雄太!!」
男が大剣を抜き放ち、戌神に向かって走り出した。俊敏と言っていい風のような速度。しかし戌神は意にも介さず、ただ悠然と歩くのみ。
『戌神(太母)がステータスを開放しました』
「!?んぐ・・・」
「くはぁっ・・・」
『逃がさぬよ。うぬらには我の役に立ってもらう』
ただ魅力値が開放されただけ。それだけで、二人は動けなくなってしまう。自慰を始めたり気絶したりと言う無様を晒さないのは流石だが、3万を超える魅力値に腰が砕け、立ち上がることも出来ない。
ただの人間であれば、目にしただけで発狂して絶頂に達しながら脳が破裂する。3万とはそれだけの魅力値だった。
「うっく・・・。有香・・・」
戌神が女に向かってひたひたと歩く。その場に突っ伏した女の顔を獣の舌がベロリと舐めた。
「あふぅんっ」
獣の一舐めで、女はびくりと震えて痙攣する。口はだらしなく半開きに開かれ、舌を出したまま目を見開いている。
「あ・・・あが・・・ふわぁ・・・」
「有香・・・」
男は無念で歯を食いしばった。立ち上がることもできない彼では、到底女を救うことなど出来そうになかった。
『外に出るには衣がいる。女、うぬの身体をもらうえ』
獣はそう宣言すると、長い舌を開かれたままの女の口に差し入れた。
「あ、あひ、んんぐ、んんぐぅ・・・」
「有香!!!!」
すると恐るべきことが起きた。巨大な戌の体躯が舌先からどんどんと女の口の中に吸い込まれていったのだ。
「あ、あひ、ひぎ、ひぐぅ、ぎぃ、ひがっ」
女の身体がめきめきと膨らんだり縮んだりを繰り返す。伸縮性のある袋の中に、容量以上の荷物を詰め込んでいくようなそんな感じの膨らみ方だった。
蛇が巨大な獲物を顎関節をはずして丸呑みするのに近かったかもしれない。軽鎧は内側から圧迫されて弾けとび、ごきごき、めきめきと音を立てながら、女の裸体が戌神を飲み込んでいく。
「うあわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
その光景は地獄よりも尚凄惨なものだった。男は恋人が、生きながら身体を作りかえられ、別の生き物にのっとられていく様を見せ付けられているのだ。
「ひゅー、はひゅー・・・」
最早意味のない風音だけを立てる女の口に、戌神の尾までがしゅるりと飲み込まれた。それでも尚しばらくはごきごきと女の身体が変形を繰り返し、10分程後、元の美しい姿のまま、女が立ち上がった。
「ん、んん・・・。久しぶりだけど、こんなものかしらね」
「有香・・・?」
いや、元のまま、ではない。
さっきまでとは数段美しく変貌した女がそこにいた。瞳は妖艶に輝き、ぷっくりとした唇を赤い舌がちろりと舐める。肌は絹のように滑らかで、控えめだった乳房はたわわに実って女のちょっとした動きで震えていた。
腹のラインは白くくびれて淫靡で、むっちりとした太ももに隠された女陰が、むせかえるような甘い芳香を放っている。
「あ、あがっ、で、でるっ!!」
ただ女と視線が合っただけで、男は射精していた。
「で、でるっ!また、ひっ、でる!」
女が一歩一歩近づいてくる。大きな乳房がぷるると揺れる。それだけで男は何度も射精した。
「雄太・・・。愛しい人。どうしたの?どうしてそんなに怯えてるの?」
「あ、あぁ、有香、君は・・・うわっ」
女が男に近づき顔を覗き込んだだけで、男はまた射精していた。女は笑いながら、男の分厚い鎧をびりびりと紙のように破いて捨てていく。
「ねぇ、しようよ、雄太。いつもみたいに激しくしよ?ね?」
「ああ、あぁ・・・」
全裸に向かれた男のペニスが、ぎちぎちに膨張して天を向いていた。精液にまみれててらてらと光りながら、なおもびゅくびゅくと射精を続けている。
女はその肉棒を握り、己の女陰にあてがった。
「さぁ、いれるね?」
「うわ、ま、まって、あ、あ、あ、はいってしまう、はいっちゃう、うわ、ふぅわ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
ねっとりと絡み付いてくる女の秘肉。亀頭を包み込みながらやさしくもみしだき、竿を飲み込みながら扱きたてる。
人ならぬ極上の膣肉に、男はびくんびくんと腰を突き上げることしか出来ない。
「ほらぁ、もっといっぱい突いて?いっぱいだして?魂がでちゃうくらい気持ちよくなってよぉ」
「あ、あがっ、ふぐわぁ、うわぁっ」
ぬちょぬちょと音を立てながら女が艶かしく腰を前後に動かす。あまりに大量の精液が出るものだから女の腹がまるで妊婦のようにぷっくりと膨らんだ。
「あはっ、いいよ。もっと出して?ね?」
「うが、うわぁっぁぁぁぁぁぁぁぁ」
やがて男に変化が起きた。その裸体の全身に黒い体毛が生え出したのである。
「うぅ、う、ぐぁぁぁぁぁぁ、あうおおおおおおおおおん!!!!」
「いいわ、さぁ、ついてっ!」
やがて男は起き上がり、女を押し倒して腰をぶつけ始めた。びくんと痙攣したかと思うと男の身体が倍ほどに膨らみ、もういちど痙攣するとさらに倍に膨らんだ。
男の男根も当然にして膨張しており、ついには女の頭ほどの亀頭が、その女陰を行き来していた。
「そう!いいわ!もっとついて!つきなさい!魂を、かきかえてあげる」
『わおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!!』
すでに完全に男は戌神と化していた。
戌神(太母)の「スキル:繁殖」であった。屈服した人間を材料に眷属を増やす。神と呼ばれる敵性生物の母たる個体にだけ許されたスキルであった。
「うふふ」
女が自分の膣内を懸命に蹂躙する男だった獣に頬をやさしく手で触れる。獣はうれしそうに女の手をぺろりと舐めた。
「このくらいで、んふ、いいわっ、最後に、んあ、いっぱい出しなさい?ね?」
『あおおおおおおおおおおおおん!!!!!!」
ぶびゅるるっるるうるるるるるるるるっるうる!!!!!!
女がくいっと腰を上げると、獣は一声上げて女の奥深くまで肉棒を突っ込み、盛大に射精する。
「んんっ、ああぁ、いいっ!ザーメン、さいっこう!!!!」
女もまた嬌声を上げながら揺れる乳房を自らもみしだく。
「はぁん!!!!」
びくっと痙攣して、尚、妖艶に笑う女。獣は女からペニスを抜き出すと、低く伏せて女に頭をたれた。女の女陰から、どろりと大量の精液があふれ出す。
「久しぶりの人間の身体もいいわね」
『母よ。これからどうする?』
「ん?そうね」
獣から母と呼ばれた女は、くすりと笑って獣の背に飛び乗った。
「久しぶりにいっぱい繁殖したいわ。雄太、楽しいと思わない?あなたの弟がいっぱい増えるの。きっと素敵だわ」
『御心のままに』
全裸の女が獣の背で笑う。魅力的な乳房がぷるると震える。
女と獣は、更なる犠牲者を求めて迷宮を進む。
松涛迷宮は、誕生以来もっとも危険な迷宮に変貌しようとしていた。
誰もいない洞穴内で、床に落ちた端末が、弱弱しい人工音声を奏でていた。
『学徒番号:85-3-6672
固体名:楠 有香
レベル:五
種族:人類
職級:巫女姫
筋力:28,011(ただし狡猾スキルにより1130に偽装)
敏捷性:30,800ただし狡猾スキルにより892に偽装)
知力:19,600ただし狡猾スキルにより1003に偽装)
魔力:9,600ただし狡猾スキルにより1265に偽装)
魅力:31,605(ただし狡猾スキルにより1490に偽装)
保有スキル: 巫女姫の祝福(使用不可) 魔術lv.2 姫舞 結界lv.4 特異固体 魔力無哮 狡猾 繁殖 寄生 千年を生きし魔獣 解析不能 解析不能 解析不能 解析不能
!狡猾スキルによりステータスを偽装しています。
!何らかのスキルによって、いくつかのスキルの解析がジャミングされました
!戌神の寄生を受けています
学徒番号:85-1-2223
固体名:等々力 雄太
レベル:五
種族:神獣(堕)
職級:速剣士
筋力:2020
敏捷性:2200
知力:810
魔力:1089
魅力:2009
保有スキル:剣術lv.5(使用不可)加速lv.2 切れ味倍化 魔力無哮
!戌神に転生しました』
黒い獣は美しい少女を負って迷宮を登る。学閻に誰の予想も超えた災厄をもたらさんと。静謐な迷宮の闇は、無言のまま獣の太母を見送った。
次
最新コメント