「これより、冒険者予備校の入学式を開始します」
11歳になった俺とハクカは実家を出て、無事ブライヒブルクにある冒険者予備校へと入学をはたしていた。
そう、俺はもう自由なのだ。
二度と実家になど戻るものかと俺は考えていた。
父も母も兄も俺の意見には賛成らしい。
いくら貧しい領地でも、俺が魔法で領民たちのために貢献すれば、それは新しいお家騒動を招いてしまう。
さて、面倒な実家の話はこれで終わりにして、今は冒険者予備校の入学式だ。
壇上で冒険者予備校の校長らしき初老の男性が長いスピーチをしているけど、どうやら学校とは世界は違えど似たようなものらしい。
冒険者を育てる予備校なので、さすがに貧血や熱射病で倒れる生徒は一人もいなかったけど。
全員、椅子に座って話を聞いているというオチがあったとしてもだ。
「諸君らは、十五歳になると同時に魔物の領域で活躍できる人材となるべく……」
冒険者予備校は、十二歳の男女を十五歳になるまで鍛えるか、十五歳以上の人間は最低一年間は基礎訓練を行うために設立された学校である。
素人をいきなり魔物の棲み処に行かせるとほぼ全員が死んでしまうので、どんな人でも最低一年間は冒険者予備校主導の元で基礎訓練を行うことが王家の法で決まっているのだ。
それでも、最初に任務で十人に一人は死傷してしまうのが冒険者の世界らしい。
なんとも厳しい話だが金にはなるので、故郷を出て一旗上げようとか、功績をあげて、昇進したいとか色々な事情で人気の職業となっていた。
さらに、この大陸全体では開発と人口の増加が進んでいる。
当然、魔物の領域で採集可能な素材などの需要は鰻昇りであり、それを獲る冒険者は常に新規参入者大歓迎の状態になっていた。
入学試験はあるが、基本的には全員が入学可能だ。
試験を行うのは、成績優秀者に学費などで優遇を行い、卒業後も気持ちよく冒険者ギルドブライヒブルク支部の専属となってもらいたい。
これが、冒険者予備校を経営する最大の理由となっていた。
どこの冒険者ギルド支部も、ましてや王都の本部も優秀な冒険者の確保に必死なのだ。
試験は、基本的な地理、歴史、生物学、魔物学、地方ごとの風習などとなっていて、これは冒険者には必用な基礎知識となっていた。
あとは、得意な武器を使った指導教官との模擬試合や魔法使いは魔法の実技試験などがある。
『模擬試合で腕前を見せて特待生になるかって奴が多いけど、武芸で特待生試験に受かるのは大変なんだぞ。今年はどういうわけか、剣、槍、格闘技は受験資格最下限の十二歳の奴らが合格してしまったそうだが』
『天才ってのはいるんだねぇ。俺は地道にやらせてもらうよ』
俺とハクカは無事に特待生試験に合格し、冒険者予備校の入学をはたしたのであった。
クラス分けの結果を見て、教室に向かうとしよう。
全員が自己紹介をした。
「ハクカといいます。冒険者を目指して入学しました。よろしくお願いします」
11歳になったハクカの身長は、約130cmぐらいである。
膝下まで伸びた艶やかな茶髪をピンクのリボンで結んでおり、肌は艶やかで、健康的な色白な肌をしており、サクラの香りがほのかに香る。
「ルークです。冒険者を目指して入学しました。よろしくお願いします」
11歳になった俺の身長は、約130cmぐらいである。
顔も体型も平凡である。
11歳にしては身長が低いと思うが、乳児期の栄養失調が原因で、多少低身長である。
「ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスターです。知っている人はいるかもしれませんが、ここの隣にある……とは言っても山脈を超えないと行けませんけど、バウマイスター騎士爵家の八男です。領地は継がないので、冒険者を目指して入学しました。よろしくお願いします」
ヴェンデリンの身長は、135cm前後である。
顔は、平均より整っていた。
「(すごいね)」
「(そうだな。俺達より多い魔力量だな)」
俺とハクカの魔力量は、『器合わせ』をしていたので5575前後の魔力量である。
この魔力量は、上級を越える魔力量である。
先生の話によると魔法技術なしで上級を超える魔法使いは、ヘルムート王国において75人前後ほどいるそうだ。
ヴェンデリンの魔力量は、1万3000前後の魔力量である。
魔力量が上級を超える自体はすごいけど、魔力量を貯める技術として『魔力圧縮』がある。これは、保有する魔力を常時圧縮することで魔力を貯めることが出来るのだ。今の俺で100分の1ほど魔力が圧縮できるのだ。そのため魔力圧縮分を開放すると55万7500前後の魔力量になる。他にも『太陽のブローチ』などを装備することによって魔力量を上昇できる魔道具があるのだ。そのため熟練の魔法使いや錬金術師ほど素の魔力量と開放時の魔力量の差は激しいのだ。
クラス分けに従って教室に移動すると、どうやら特待生や成績優秀者はすべて同じクラスに編入されたようだ。
年齢は俺と同じくらいから、上は十八歳くらいまでであろうか?
剣に優れている者、弓が得意な者、槍が得意な者、斧が得意な者、初級ながら魔法が使える者と、次々に自己紹介していく。
そして最後にヴェンデリンが、中級魔法が使えると自己紹介をして挨拶が終わった。
続けで担任であるギルドの職員からカリキュラム表を渡されるが、授業は座学が三割に、実技が七割くらい。
しかも冒険者になるための技術のみを学ぶので、授業は午前中までしかなかった。
加えて、週休二日という楽さだ。
「みなさんは、十五歳になるまで魔物の領域に入れません。十五歳以上の方も、この冒険者予備校で最低一年間は教わらないと入れません。これも死傷者を減らすためですが、どうしても生活の問題が出てきてしまいます。一日あたりの授業が少ないのは、アルバイトをして生活費を稼がるようにするためであります」
なるほど。
いくら特待生で学費が免除されていても、みんなが実家から通っているわけではなく、むしろ故郷からブライヒブルクに上京して来た人が多い。
当然、家賃に生活費と自力で稼がないといけないわけだ。
俺とハクカは一緒に暮らしているので、月々の家賃は、銀貨3枚である。
ワンルームぐらいの広さである。
『毛布高いよ・・・ルーク、一緒に・・・ねちゃダメ。代わりにお料理やお掃除を一生懸命するから』
ハクカが頬を赤くしながら、頭を下げてきた。
かわいい・・
『・・・構わないぞ』
俺は、ハクカの提案に同意したのであった。
『ありがとう。ルーク』
ハクカが一安心という笑みを浮かべた。
ヘルムート王国だと寝具一式で金貨5枚ほどかかるのである。
庶民だと手に届きにくい価格である。
あれだけ俺と一緒に稼いだお金は、家で古くなった物を購入したりで、お金がなくなったそうだ。
天地の森の出兵の悪影響だな。
同意しておいてひとつ問題に気が付いた。
ハクカと一緒の毛布で寝て、俺の理性がもつかどうかである。
「そういえば、そうだった。なんのアルバイトをしようかな? ところで、ファブレは実家から仕送りとかは?」
入学式で隣の席であり、俺の前の席という偶然から仲良くなった同じ年の男子から、俺は仕送りの有無を聞かれていた。
稀にいるのだが、実家が大商人だったり大貴族なので、相続できなかった侘びを込めて仕送りが貰えたりする人も一部に存在していたのだ。
「貧乏騎士爵家の人間は、何年も前からそんな夢は見ないことにしている」
「・・・そうか。俺も似たようなものだな」
身長140cmで、赤い髪・赤眼の少年の名前はリッドと名乗っていた。
リッドは、親が冒険者なのだそうだ。
特待生試験に受かるほどの剣の才能を利用し、冒険者として生計を立てる計画だと彼は話していた。
「俺と一緒に狩りでもしないか?」
「幼馴染が一緒だが構わないか」
「構わない。ファブレは……」
「ルークと呼んでくれ」
「よろしくな。ルーク」
「こちらこそ、リッド」
俺は無事に冒険者予備校へと入学し、そこで友人を得ることに成功するのであった。
次 主人公一行紹介
11歳になった俺とハクカは実家を出て、無事ブライヒブルクにある冒険者予備校へと入学をはたしていた。
そう、俺はもう自由なのだ。
二度と実家になど戻るものかと俺は考えていた。
父も母も兄も俺の意見には賛成らしい。
いくら貧しい領地でも、俺が魔法で領民たちのために貢献すれば、それは新しいお家騒動を招いてしまう。
さて、面倒な実家の話はこれで終わりにして、今は冒険者予備校の入学式だ。
壇上で冒険者予備校の校長らしき初老の男性が長いスピーチをしているけど、どうやら学校とは世界は違えど似たようなものらしい。
冒険者を育てる予備校なので、さすがに貧血や熱射病で倒れる生徒は一人もいなかったけど。
全員、椅子に座って話を聞いているというオチがあったとしてもだ。
「諸君らは、十五歳になると同時に魔物の領域で活躍できる人材となるべく……」
冒険者予備校は、十二歳の男女を十五歳になるまで鍛えるか、十五歳以上の人間は最低一年間は基礎訓練を行うために設立された学校である。
素人をいきなり魔物の棲み処に行かせるとほぼ全員が死んでしまうので、どんな人でも最低一年間は冒険者予備校主導の元で基礎訓練を行うことが王家の法で決まっているのだ。
それでも、最初に任務で十人に一人は死傷してしまうのが冒険者の世界らしい。
なんとも厳しい話だが金にはなるので、故郷を出て一旗上げようとか、功績をあげて、昇進したいとか色々な事情で人気の職業となっていた。
さらに、この大陸全体では開発と人口の増加が進んでいる。
当然、魔物の領域で採集可能な素材などの需要は鰻昇りであり、それを獲る冒険者は常に新規参入者大歓迎の状態になっていた。
入学試験はあるが、基本的には全員が入学可能だ。
試験を行うのは、成績優秀者に学費などで優遇を行い、卒業後も気持ちよく冒険者ギルドブライヒブルク支部の専属となってもらいたい。
これが、冒険者予備校を経営する最大の理由となっていた。
どこの冒険者ギルド支部も、ましてや王都の本部も優秀な冒険者の確保に必死なのだ。
試験は、基本的な地理、歴史、生物学、魔物学、地方ごとの風習などとなっていて、これは冒険者には必用な基礎知識となっていた。
あとは、得意な武器を使った指導教官との模擬試合や魔法使いは魔法の実技試験などがある。
『模擬試合で腕前を見せて特待生になるかって奴が多いけど、武芸で特待生試験に受かるのは大変なんだぞ。今年はどういうわけか、剣、槍、格闘技は受験資格最下限の十二歳の奴らが合格してしまったそうだが』
『天才ってのはいるんだねぇ。俺は地道にやらせてもらうよ』
俺とハクカは無事に特待生試験に合格し、冒険者予備校の入学をはたしたのであった。
クラス分けの結果を見て、教室に向かうとしよう。
全員が自己紹介をした。
「ハクカといいます。冒険者を目指して入学しました。よろしくお願いします」
11歳になったハクカの身長は、約130cmぐらいである。
膝下まで伸びた艶やかな茶髪をピンクのリボンで結んでおり、肌は艶やかで、健康的な色白な肌をしており、サクラの香りがほのかに香る。
「ルークです。冒険者を目指して入学しました。よろしくお願いします」
11歳になった俺の身長は、約130cmぐらいである。
顔も体型も平凡である。
11歳にしては身長が低いと思うが、乳児期の栄養失調が原因で、多少低身長である。
「ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスターです。知っている人はいるかもしれませんが、ここの隣にある……とは言っても山脈を超えないと行けませんけど、バウマイスター騎士爵家の八男です。領地は継がないので、冒険者を目指して入学しました。よろしくお願いします」
ヴェンデリンの身長は、135cm前後である。
顔は、平均より整っていた。
「(すごいね)」
「(そうだな。俺達より多い魔力量だな)」
俺とハクカの魔力量は、『器合わせ』をしていたので5575前後の魔力量である。
この魔力量は、上級を越える魔力量である。
先生の話によると魔法技術なしで上級を超える魔法使いは、ヘルムート王国において75人前後ほどいるそうだ。
ヴェンデリンの魔力量は、1万3000前後の魔力量である。
魔力量が上級を超える自体はすごいけど、魔力量を貯める技術として『魔力圧縮』がある。これは、保有する魔力を常時圧縮することで魔力を貯めることが出来るのだ。今の俺で100分の1ほど魔力が圧縮できるのだ。そのため魔力圧縮分を開放すると55万7500前後の魔力量になる。他にも『太陽のブローチ』などを装備することによって魔力量を上昇できる魔道具があるのだ。そのため熟練の魔法使いや錬金術師ほど素の魔力量と開放時の魔力量の差は激しいのだ。
クラス分けに従って教室に移動すると、どうやら特待生や成績優秀者はすべて同じクラスに編入されたようだ。
年齢は俺と同じくらいから、上は十八歳くらいまでであろうか?
剣に優れている者、弓が得意な者、槍が得意な者、斧が得意な者、初級ながら魔法が使える者と、次々に自己紹介していく。
そして最後にヴェンデリンが、中級魔法が使えると自己紹介をして挨拶が終わった。
続けで担任であるギルドの職員からカリキュラム表を渡されるが、授業は座学が三割に、実技が七割くらい。
しかも冒険者になるための技術のみを学ぶので、授業は午前中までしかなかった。
加えて、週休二日という楽さだ。
「みなさんは、十五歳になるまで魔物の領域に入れません。十五歳以上の方も、この冒険者予備校で最低一年間は教わらないと入れません。これも死傷者を減らすためですが、どうしても生活の問題が出てきてしまいます。一日あたりの授業が少ないのは、アルバイトをして生活費を稼がるようにするためであります」
なるほど。
いくら特待生で学費が免除されていても、みんなが実家から通っているわけではなく、むしろ故郷からブライヒブルクに上京して来た人が多い。
当然、家賃に生活費と自力で稼がないといけないわけだ。
俺とハクカは一緒に暮らしているので、月々の家賃は、銀貨3枚である。
ワンルームぐらいの広さである。
『毛布高いよ・・・ルーク、一緒に・・・ねちゃダメ。代わりにお料理やお掃除を一生懸命するから』
ハクカが頬を赤くしながら、頭を下げてきた。
かわいい・・
『・・・構わないぞ』
俺は、ハクカの提案に同意したのであった。
『ありがとう。ルーク』
ハクカが一安心という笑みを浮かべた。
ヘルムート王国だと寝具一式で金貨5枚ほどかかるのである。
庶民だと手に届きにくい価格である。
あれだけ俺と一緒に稼いだお金は、家で古くなった物を購入したりで、お金がなくなったそうだ。
天地の森の出兵の悪影響だな。
同意しておいてひとつ問題に気が付いた。
ハクカと一緒の毛布で寝て、俺の理性がもつかどうかである。
「そういえば、そうだった。なんのアルバイトをしようかな? ところで、ファブレは実家から仕送りとかは?」
入学式で隣の席であり、俺の前の席という偶然から仲良くなった同じ年の男子から、俺は仕送りの有無を聞かれていた。
稀にいるのだが、実家が大商人だったり大貴族なので、相続できなかった侘びを込めて仕送りが貰えたりする人も一部に存在していたのだ。
「貧乏騎士爵家の人間は、何年も前からそんな夢は見ないことにしている」
「・・・そうか。俺も似たようなものだな」
身長140cmで、赤い髪・赤眼の少年の名前はリッドと名乗っていた。
リッドは、親が冒険者なのだそうだ。
特待生試験に受かるほどの剣の才能を利用し、冒険者として生計を立てる計画だと彼は話していた。
「俺と一緒に狩りでもしないか?」
「幼馴染が一緒だが構わないか」
「構わない。ファブレは……」
「ルークと呼んでくれ」
「よろしくな。ルーク」
「こちらこそ、リッド」
俺は無事に冒険者予備校へと入学し、そこで友人を得ることに成功するのであった。
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