様々な小説の2次小説とオリジナル小説

 鬼将ザガーラズィナー。
 初めて出たモンスターの固有名詞だ。
 というか固有名詞のあるモンスターってどういうことだ?

「魔王軍の幹部といわれる四体のモンスターがいます。魔王が専従契約で召喚したといわれる者たちです」

「神兵級なのか」

「神兵級よりさらに強いといわれております。もっとも、わが国との戦では、ザガーラズィナー本人の姿を確認できませんでしたので……」

「そりゃ、ま、一軍の将軍だもんな」

 将軍が前線に出てくるなんて、物語のなかだけだろう。
 いや、この世界の場合、個人の戦闘力が戦局をおおきく左右することもあるだろうから、一概にはいえないのか。

「あの浮遊要塞には、およそ二千体のオーガが配備されているといわれています。彼らは泥沼化した前線を一気に飛び越え、王都を襲撃しました。王都の民が浮遊要塞を見上げたその日に、わが国は滅んだのです」

 なるほど、機動力は最大の武器か。
 容易には手を出せない空を自由に動き、どこにでも現れる脅威。
 めちゃくちゃ厄介だ。

 二千体のモンスターと神兵級を超えるボス。
 そんなものが、この山にやってきた。

 中等部と高等部の生徒、全員が隠れていれば、やり過ごせるだろうか。
 少し考えて、無理だろうと首を振る。
 たとえ、彼らの目的がこの山ではなかったとしても……。

 コンクリートの校舎、激しい戦いの跡。
 ひどく怪しい。
 この世界の住人にとって、これほど奇妙な光景はないだろう。

 だいいち、いま広場に集まっている高等部のやつらが、おとなしくこちらのいうことを聞くとも思えない。
 敵は一国の王都を楽に滅ぼすほどの戦力をぶつけてきているってのに、こっちは仲間割れしてるのか。

「ルシア。転移の魔法は、まだリーンさんの鷹を起点に使えるんだよね」

「はい。この鷹を通じてリーンに頼めば、可能です」

 いつの間にか給水塔の上に停まっていた鷹が、ルシアの掲げた手の上に着地した。
 使い魔は、首を上下させてうなずく。

「jaljfalkjfaljfalkjfaljfa」

 和弘は鷹にメニー・タンズをかけた。
 もう一度、同じことをいう。
 志木さんは和弘と視線を交えた。

「避難するなら、この育芸館にいるひとたちだけになる」

 和弘はいった。

「もちろん、外にいるやつらは連れていかない」

 彼らが光の民と揉め事を起こさない未来が、想像できない。
 志木さんも異論はないだろう。

「和弘たちが、フライで高等部まで飛んでいくとして、どのくらい時間がかかる」

「五分はかからない……と思う。あと、グレーター・インヴィジビリティで透明になって飛べば、注意を惹かないですむかもしれない」

「志木さん」

 僕は、志木さんに確認をとった。

「ええ、それでいいわ」

 志木さんは近くの少女たちに指示を出し、育芸館組の少女たちを大至急、ホールに集めるよう告げる。
 そのあと、和弘たちに向き直る。

「転移門というのは、その鷹の使い魔がいれば、どこにでもひらけるのでしょう。あの空飛ぶ島が育芸館の真上まで来るまでには、もうしばらく時間がかかるわ。育芸館組は、さっさと転移門で脱出させる。あなたたちは、そのあと、鷹を連れて高等部まで飛んでいきなさい」

 それと、と補足する。

「いまメモを書くわ。カズくん、カラスを呼び出して、中等部本校舎の屋上まで飛ばしなさい。そこに高等部の中継スタッフが待機しているの。高等部組を一か所に集めてもらいましょう」

 志木さんはペンと手帳をとりだして、さっと手紙をしたためた。
 和弘が召還したカラスの脚に折りたたんだ紙を手早く結いつける。
 和弘の指示で、カラスが空に舞い上がる。

 僕たちは、階下に降りた。
 志木さんの指示でリュックサックを背負い、準備を整えた。



 五分ほどのち。
 一階の薄暗いエントランス・ルームに直径三メートルほどの青白い円盤状の光が現れる。
 転移門だ。

 外の高等部男子連中は、相変わらずやかましく騒いでいる様子であった。
 かといって、逃げるでもなく組織だって迎撃の用意を整えるでもない。
 完全に烏合の衆だ。

 光の上に乗った少女たちが、次々と消えていく。
 僕たちは、全員、重いリュックサックを背負っていた。

「いつ育芸館を放棄してもいいように、準備をしていたのよ」

 和弘は僕や志木さんほか数名にメニー・タンズをかけていた。
 僕たちは、青白い光に乗って消えた。



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