敵のアーチャーは残り十一体。
いまのぼくたちなら、なんてことのない相手だ。
だが問題は、左奥のグロブスターである。
ずっと不気味に脈動するだけだが、はたして最後まで、手を出してこないのか。
ぼくは、そちらを神経質に警戒していた。
「ミア、ハクカ、アキ、少し前進するぞ」
「ん、おけ」
「ああ」
「うん」
落とし穴を迂回し、ぼくたちは広間の中央へ、小走りに駆ける。
そうこうするうち、アリスが右手の敵との距離を詰める。
アーチャーたちは後退しながらアリスに矢を射かける。
と左手のウィンド・エレメンタル3体と戦っていたアーチャー五体が、次第に奥へ移動し始めていることに気づく。
グロブスターと合流するつもりなのか?
「ミア、左手にライトニング集中」
「ん。奥にいかせない?」
よくわかっていらっしゃる。
ミアが、左手のアーチャーを牽制するように何本かライトニングを放つ。
広間の中央まで移動したおかげで、効果的に左手の動きを邪魔できていた。
だがどうやら、それは敵にとって、決断を促すことになったようである。
左手のアーチャー五体すべてが、突然、一気に奥へと走り出す。
前方でたまきが相手にしていた四体も同時にグロブスターのもとへ。
「あ、こら、ちょっと、逃げるなーっ」
たまきが慌てて追いかける。
アーチャーの背中からダガーで切りつけ、一体を屠る。
仕方がないとはいえ、普段の武器ではないから、いささかリーチが足りないようだ。
アーチャーが弓を捨てている以上、戦力的には圧倒的に格下のはずなのに、いささか手間取っている。
アーチャーの一体が、たまきの行く手を邪魔するように立ちふさがる。
「ええいっ、邪魔」
たまきはダガーを一閃。
アーチャーの首を一息で両断する。
その青い返り血を浴びる前に、相手の身体をポールに見立てて半回転、残る二体をさらに追う。
だがこの一瞬で、残り二体とは、かなりの距離を引き離されてしまった。
左手のアーチャーも、一体はミアのライトニングで潰し、もう一体をウィンド・エレメンタルが倒してみせる。
それでも、残りがグロブスターのもとへ駆け寄る。
左手から二体、たまきから逃げるのが二体。
そのときだった。
グロブスターの全身が、ぶるりとおおきく震える。
直後、青白く輝きはじめる。
その肉塊を中心として、鍾乳洞の地面、半径十メートルほどに白い輪のようなものが浮かびあがる。
「やば。カズっち、あれ魔法陣っぽい!」
ミアが慌てる。
「ああ、わかってる! たまき!」
和弘は、たまきのもとへ駆け出していた。
走りながら、叫ぶ。
「たまき、追撃は中止だ!」
「え、なに、ああもう、このおっ」
たまきは和弘の命令を聞いていなかった。
夢中になってアーチャーに肉薄し、さらに一体を撃破する。
だがそこで、たまきの身体も白い輪のなかに入ってしまう。
「待て」
ミアが走り出したのでとめるために声をかけたがとまらなかった。
「ダメだ!」
「へ?」
たまきが、足もとに視線を移す。
そのときになって、ようやく彼女は、なにかおかしなことが起きていると気づいたようだった。
だがそれだけである。
和弘は、彼女のもとに駆け寄り、その手を握る。
「たまき!」
「え、カズさん?」
和弘はたまきの身体をぐいと引っ張った。
「わっ、わあっ」
たまきがバランスを崩し、白い輪の外に投げ出された。
かわりに和弘が、反動で輪の中に飛びこむかたちになる。
輪のなかの白光が、いっそう強く輝き始める。
「二時間後!」
白い輝きに包まれ、地面に倒れ込みながら、和弘は叫ぶ。
「二時間後だ!」
志木さんは、最初、驚いた様子で和弘の方を見て……。
それからすぐ、はっ、とする。
ちから強く、うなずいた。
直後。
ひときわ強くなった輝きによって、視界が白に染まる。
次
いまのぼくたちなら、なんてことのない相手だ。
だが問題は、左奥のグロブスターである。
ずっと不気味に脈動するだけだが、はたして最後まで、手を出してこないのか。
ぼくは、そちらを神経質に警戒していた。
「ミア、ハクカ、アキ、少し前進するぞ」
「ん、おけ」
「ああ」
「うん」
落とし穴を迂回し、ぼくたちは広間の中央へ、小走りに駆ける。
そうこうするうち、アリスが右手の敵との距離を詰める。
アーチャーたちは後退しながらアリスに矢を射かける。
と左手のウィンド・エレメンタル3体と戦っていたアーチャー五体が、次第に奥へ移動し始めていることに気づく。
グロブスターと合流するつもりなのか?
「ミア、左手にライトニング集中」
「ん。奥にいかせない?」
よくわかっていらっしゃる。
ミアが、左手のアーチャーを牽制するように何本かライトニングを放つ。
広間の中央まで移動したおかげで、効果的に左手の動きを邪魔できていた。
だがどうやら、それは敵にとって、決断を促すことになったようである。
左手のアーチャー五体すべてが、突然、一気に奥へと走り出す。
前方でたまきが相手にしていた四体も同時にグロブスターのもとへ。
「あ、こら、ちょっと、逃げるなーっ」
たまきが慌てて追いかける。
アーチャーの背中からダガーで切りつけ、一体を屠る。
仕方がないとはいえ、普段の武器ではないから、いささかリーチが足りないようだ。
アーチャーが弓を捨てている以上、戦力的には圧倒的に格下のはずなのに、いささか手間取っている。
アーチャーの一体が、たまきの行く手を邪魔するように立ちふさがる。
「ええいっ、邪魔」
たまきはダガーを一閃。
アーチャーの首を一息で両断する。
その青い返り血を浴びる前に、相手の身体をポールに見立てて半回転、残る二体をさらに追う。
だがこの一瞬で、残り二体とは、かなりの距離を引き離されてしまった。
左手のアーチャーも、一体はミアのライトニングで潰し、もう一体をウィンド・エレメンタルが倒してみせる。
それでも、残りがグロブスターのもとへ駆け寄る。
左手から二体、たまきから逃げるのが二体。
そのときだった。
グロブスターの全身が、ぶるりとおおきく震える。
直後、青白く輝きはじめる。
その肉塊を中心として、鍾乳洞の地面、半径十メートルほどに白い輪のようなものが浮かびあがる。
「やば。カズっち、あれ魔法陣っぽい!」
ミアが慌てる。
「ああ、わかってる! たまき!」
和弘は、たまきのもとへ駆け出していた。
走りながら、叫ぶ。
「たまき、追撃は中止だ!」
「え、なに、ああもう、このおっ」
たまきは和弘の命令を聞いていなかった。
夢中になってアーチャーに肉薄し、さらに一体を撃破する。
だがそこで、たまきの身体も白い輪のなかに入ってしまう。
「待て」
ミアが走り出したのでとめるために声をかけたがとまらなかった。
「ダメだ!」
「へ?」
たまきが、足もとに視線を移す。
そのときになって、ようやく彼女は、なにかおかしなことが起きていると気づいたようだった。
だがそれだけである。
和弘は、彼女のもとに駆け寄り、その手を握る。
「たまき!」
「え、カズさん?」
和弘はたまきの身体をぐいと引っ張った。
「わっ、わあっ」
たまきがバランスを崩し、白い輪の外に投げ出された。
かわりに和弘が、反動で輪の中に飛びこむかたちになる。
輪のなかの白光が、いっそう強く輝き始める。
「二時間後!」
白い輝きに包まれ、地面に倒れ込みながら、和弘は叫ぶ。
「二時間後だ!」
志木さんは、最初、驚いた様子で和弘の方を見て……。
それからすぐ、はっ、とする。
ちから強く、うなずいた。
直後。
ひときわ強くなった輝きによって、視界が白に染まる。
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