ケイの転生小説 - 八男って68
 王城での謁見を終えた俺は、すぐにザフト騎士爵家に戻り、そこで遅めの昼食を食べていた。
 屋敷のメイドたちが作ったシチューやパスタやサラダなどを俺は食べていく。

「郊外の駐屯地で1週間、軍の進発に3日間。グレードグランドが鎮座するパルケニア草原の中心地まで、他の魔物に見付からないように行くのに三日間。最後に、残った魔物の中で強そうなのを間引くのに一週間。帰還に報告や挨拶があったので4日間……せっかくの夏休みが……」

 王都に到着してからの俺は、ほとんど自分の意思で動けていなかった。
 せっかく王都観光を楽しもうと思ったのに、王都での印象の大半は、堅苦しい王城での謁見、郊外の男臭い汗と埃塗れの駐屯地、そこで出される量だけはある不味い飯。

 続けて、特撮物の怪獣のような竜との死闘。
 挙句にその戦いでは、某有名漫画も真っ青な、とても魔法使いとは思えない白熱バトルを筋肉のおっさんが展開した。
 まさか鎧越しとはいえ、竜を素手で殴り付けたり、蹴りを入れたり、尻尾を掴んでぶん投げる魔法使いがいるとは思わなんだ。
 グレードグランドが倒れたあとは、本当ならば成人後にしか行えない魔物討伐に、俺たちは貴族だから問題なしという理由で参加する羽目になってしまう。

 竜に比べればこれらの魔物たちは弱かったが、とにかく数が多くて疲れた。
 さらになるべく掃討戦に出ている王国軍や冒険者たちに犠牲が出ないようにとアームストロング導師の命令で強い魔物を探して間引き続けていたからだ。

 掃討戦が行われた一週間。

 遊撃部隊扱いの俺たちムサい男三人組は多くの魔物を狩り、睡眠も交代で行っていた。
 冒険者になった時のことを考慮するといい経験になったと思う。

「汗と土煙と血に塗れた夏休みか……」

「リッド、それを言わなよ」

 実際そのとおりなので、余計に腹が立つ。
 しかも、俺たちが王都にいられる時間は今日を含めてもあと7日間しかなかった。
 夏休みはまだあるのだが、帰りの時刻を含めたら、限界である。



「お久しぶりです。ファブレ男爵」

「ああ」

 前回、俺とハクカに褒美について説明をしにきた内務卿の人間が来た。

「褒美に関してですが、パルケニア草原の役人の推薦枠が10%ほどあります」

「使い道があまりないな」

「推薦された人間は、10%ほど紹介料として給料を20年間ほど納める決まりになっております」

「今の所推薦したい人間がいないな」

「2つ目が褒美を選んでいただきたい」

 何も思い浮かばなかった。
 何しろ貴族に必要なものは、すでに頼んだばかりである。

「そうですね・・・8月までに決めていただきたい」

「分かりました」