貴族に叙された翌日。
「・・・というわけです」
城から陛下の言伝を承った内務卿配下の中級官僚が来たのだ。
内容は、俺とハクカに渡す褒美である。
「欲しい物は、特にないんですけど」
「私も特にないよ」
「ですが、国としての面子がありますので何もないのも問題があります」
トガーさんが助言してくれた。
「つまり何かしら褒美の内容を言った方がいい」
「はい」
「「う〜ん」」
一応考えてはみたが、候補に上がったのは本や絵画、工芸品に家具。
どれも自分で買えるのだ。
「他の人はどういった褒美を望むのですか」
色とりどりの宝石。
次いで、人気仕立屋に作らせた特注のドレス。
大体そういったものが好まれるのだそうだ。
「いらないな」
「うん」
トガーさんと官僚が聞き取り調査を行ったのだ。
その結果。
今まで平民だった俺が持っていない、「貴族」として実用的なもの、必要なものを「支給」してもらうという話で、最終的に落ち着いた。
まずは、ファブレ準男爵家の紋章が刻印された判子である。
正式な手紙を出す時に、垂らした蝋に押し付け蝋封したり、書類の末尾にハンコ代わりとして使ったりするのだそうだ。
元々ファブレ準男爵家の判子と指輪は、国から支給されるのだ。余計な装飾品はいらないといったら使われる素材や品質を上げることで対処するそうだ。
次に馬車が一台。
馬車の両側面には、準男爵家の紋章が透かし彫りに象られている。
これは結構助かる。
ハクカの褒美として、人気仕立て屋のドレスや宝飾品だそうだ。
下手にお金を手渡すとハクカに対して余計なことを蠢動しかねない貴族や豪商がいるためだそうだ。
「ありがとうございます」
トガーさんの指導により招待状を書くことになった。
ラングレー公爵家、ブライヒレーダー辺境伯家、マイル騎士家、オットー、カール宛に招待状を書いていくのだ。
尚、バウマイスター騎士爵家を招待しないのは、向こうも俺と同じ状況なので招待するだけ無駄だからである。
「・・・ア〜・・・・疲れた」
俺は、5枚の招待状をかきおえたのであった。
「・・・招待状は、ザフト騎士家の者がお届けいたしますのでご安心をそれよりもルーク殿は、申し訳ありませんがハクカ嬢たちのドレスを購入していただきたいのです」
「私たちですか?」
「はい・・・おそらく結婚式用ぐらいしかないとおもいます」
「ないわね」
「私もないよ」
「ないね」
「結婚式が1件と古代竜&準男爵叙勲パーティの2つで間違いないですな」
「はい」
「慣習的に女性の方々が、同じドレスを使いまわすのは、よろしくありません。ですので、ルーク殿には、女性の方々のためにドレスを購入していただきたいのです」
「そういう事情なら分かりました」
「ルーク、後で返すね」
「俺が原因だからな。ハクカ達は気にしなくていい」
トガーさんの地図に従い、服飾工房に赴き、正装用のドレスを注文した。
「これなんていいんじゃないかしら」
「夏用だと涼しそうだよね」
「お目が高いですね」
服飾工房でドレスの注文をしたら、宝飾店でアクセサリー類を購入することにした。
ドレスとアクセサリー類の合計は銀貨240枚であった。
最後にトガーさんの助言に従いファブレ準男爵家が用意する結婚式用の祝儀をアルテリオさんの所で購入することになった。
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