遠距離馬車で移動すること12日ほど経ったのである。
後、6日で王都である。
馬車に乗っている間、やったことといえば、景色を眺めたり、世間話に興じたり、魔力循環訓練をする以外することがなかったのだ。魔道具開発は、馬車の振動が激しくてまったくできず、俺は馬車の振動を抑える魔道具でも開発しようかと決意し、宿場町で空間振動制御的な魔道具を開発した。最もすぐに出来るはずもなく、今のところ開発中であった。
「・・・・・ん?」
「キャ」
「ハクカ」
急に暗雲が鳴り響き、辺りに雷が降り注ぎ、とてつもない魔力の持ち主が急接近するのに俺はいぶかしんだ。
それに連動するように馬車の速度が上がり、突然の速度上昇にハクカが転げ落ちそうになっていたので慌ててハクカを抱きしめる。
ミュウやイザベルやリッドも持ち前の運動神経で何とか耐えていた。
「ありがとう、ルーク」
「後ろよ」
イザベルの声で、後ろを振り向くと
「あれは・・・」
「りゅ・・・りゅう・・・だよね」
「ああ・・・アンデット・・・・」
その直後、骨竜はドス黒い毒霧のようなブレスを馬車群を標的に吐き始めた。
「危ねえ!」
俺はすぐに『魔法障壁』を発動させる。
キーン
「・・・ん?」
俺の張った『魔法障壁』ともうひとつ別の『魔法障壁』が同時展開していた。
『魔法障壁』同士が干渉しており、このままだとまずいと判断した俺は、アティ先生の授業を思い出した。
『魔法障壁同士が干渉した場合は、すぐに魔法障壁の展開をやめるか・・・展開した方の魔法障壁と同調して魔法障壁を展開してください』
とっさの魔法障壁なので強度は弱いそうなので、それではあの骨竜のブレスを防ぐことは出来ないと考えた俺は同調する事を選んだ。同調した魔法障壁の防御力は、単純に1+1ではなく(1+1)×2である。
「・・・ん」
少しだけ変な感覚に襲われるが、我慢することにした。
馬車群を覆う『同調魔法障壁』は、骨竜のブレスを
ズドーン
周囲が揺れ動き、『同調魔法障壁』に当たったブレスは、
キーン、キーン
と完全に防いでいた。
数分かもしれないが、あるいは数秒かもしれないが俺ともう一人は、『同調魔法障壁』を展開し続けながら、ブレスを防いだ。
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