「ただいま、バンス」
「母さん、占い師のフリをして、道行く若者たちにいい加減なアドバイスをするのをやめてくれよ!」
「なにを言うか。私は、悩める若人に道を示しておるだけじゃ。なんも悪いことはしておらん。それに、あんなアドバイス。占いなどできいなくても言えるではないか」
「占い師の格好して言うのをやめてくれって言っているんだ! 父さんが亡くなって暇だからって……」
「どうせ来週には西部に引っ越しなのだから、これで引退にするわ」
「本当だからな! 引っ越し先でもやるなよ?」
「はいはい」
まったく、うちのお袋は……。
子供の頃、占い師になりたかったからと言って、街中で若者に無料で占うと声をかけ、適当な予言をしてしまうんだから。
……まさか、うちの母さんの占いを信じた人はいないよな?
うん、一人もいないことにしよう。
次