ケイの転生小説 - 八男って25
 ブライヒブルクを散策した数ヶ月。
 賑やかな通りを外れ、静かな路地裏の細い道を抜けた先にあった、ひっそりとした小さな店。
 店の看板や佇まい、店先に置かれているものから、そこが魔道具を取り扱う店である事が分かる。

“魔法使いの卵たち 歓迎します”

 とだけ書かれた張り紙からは、誰がどんな思いで書いたのかまではわからない。

 そっとドアの隙間から店の中を覗く。

 魔道書や杖、たくさんの引き出しに、キラキラしたものが入っている小瓶。
 箒や天秤、地球儀、羽ペン、目玉や尻尾のような標本や内に秘めた熱が脈動しているのか赤く明滅を繰り返す黒い石。
 どの品物も魔法に興味や憧れを持っている者にしてみたら、興味の沸く品だかりだ。

「おや、いらっしゃい」

 来客に気付いた店主のおじいさんがこちらを向く。

「ようこそ、“魔法使いの卵たち”。怖がらなくても大丈夫じゃ。少しばかり、わしに君たちの魔法を見せておくれ」

 こうして、優しげな店主のおじいさんに迎えられ、店を訪れた者たちは課題へ挑戦してみることになった。



 店内の奥へと続く通路の先にはちょっとした教室並みの広さの部屋があった。
 膝下まである小麦色の金髪をポニーテールにしている薄紫色の瞳の良家のお嬢様風の服装の少女が水魔法を発動させて魔導人形を攻撃したり、膝下まである茶髪を白いヘアーバンドで止めた少女が大剣に魔力を流して、魔導人形に攻撃したり、膝下まである緑の髪を赤いリボンでポニーテールにした道着を着た少女が拳に魔力を流し、魔導人形を攻撃していた。

「ここで魔法を使うの?」

「そうじゃ」

 目の前に用意された魔道人形を見据える俺。
 俺は目を閉じると指先に魔力を集めた。
 魔力が十分に集まったタイミングで俺は目を開け、【フリーズアロー】を飛ばし、命中させる。

「見事じゃ。無駄のない魔法じゃのぅ」

 俺の魔法を見たおじいさんは、うんうん、と頷く。

「次は、私かな」

 ハクカは一歩前へ出る。
 そのまま、俺の魔法によって倒れた魔道人形の元へ駆け寄る。
 ハクカは魔道人形に触れ

「かの者に癒しの光を……」

 と短い言葉でイメージを作り、祈りを捧げるように自身の中の魔力に願い、力を借りる発動方法だ。
 そのハクカの願いに答えるように魔道人形に触れた手が温かくなり、【ヒーリング】が発動する。
 ぼろぼろだった魔道人形がみるみる元通りになっていく。

「ほほう。治癒の力じゃな。温かい魔法じゃ」

 おじいさんはハクカへ温かい眼差しを向けた。
 静かな路地裏の不思議なお店。
 課題に挑戦した全員が、無事に魔法発動をおじいさんに見せ終わった。

「みんな、どうもありがとう。素晴らしい魔法ばかりじゃった」

 おじいさんはそう子供達に礼を言う。

「きみたちがこれから先、どんな形であろうと魔法を正しく使ってくれる。わしはそう信じておる」

 優しい瞳でおじいさんが一人一人の顔をじっくりと見つめる。

「これはわしからのご褒美じゃ」

 おじいさんがそう言うと課題をクリアした全員のそれぞれの手の中にご褒美が現れた。

「これから魔法をよく勉強するために役立てておくれ」

 おじいさんはそう言うと、皆の帰路を見送ったのだった。
 貰ったご褒美は、魔力量が増加する器具であった。