俺達が10歳になったある日。
ブライヒブルクを一緒に散策していると街の中心を離れ、ブライヒブルクを囲む防壁近くで少女が一人で蹲って泣いているのを見付けた。
「どうしよう、どうしよう……。これじゃあお家にも帰れないわ……!」
少女と目が合った俺達は、彼女から事情を聞くことにした。
「どうかしたの?」
ハクカが泣いている少女に声をかけた。
少女がポツリポツリと事情を説明してくれた。
どうやらブライヒブルクに行商に訪れていた地方の武器職人の娘のようだが、売上金を無くしてしまい家にも帰れずに困っていたようだ。
「・・・狩猟かな」
「ルーク、いいの」
「放ってはおけないからな」
「・・・ありがとう」
俺とハクカと少女は、一緒に近くの森に行った。
少女が、任せるばかりだと嫌だというからである。
俺は
『探知』
「まほうつかい?」
「うん・・・そうだよ」
「こっちだな」
俺の探知魔法は、術者を中心に円形状に広がり、地中や空などにいる生命体を探知する仕組みとなっている。探知距離は、40mほどである。野生動物を探知するとなると最低でも半径10kmほど探知できないと役立たずである。
そこで、地面についている足跡からどこにいるのか把握するのである。
俺が先導しながら、
『報告』
という魔法を使う。
『報告』とは、使用者になにかを報告する魔法だ。
視界に入った数箇所にぼんやりと薄い光が光るのだ。
それは木の根元から地面に伸びている自然薯の蔓だったり、自生しているトリカブトだったりする。
ハクカや少女に採取できるものは、採取するように頼みながら俺も採取をしていく。
ハクカのほうは、慣れなのか問題なく魔道具の素材などを採取しており、少女の方を見ると山葡萄などの食料品、武器などに使う染色品を採取していた。
採取しながら進んだ先には、イノシシが複数現れた。
イノシシ達の前に立ち土を足に絡みつかせた。
『ウィンドカッター』で猪をまとめて仕留めた。
その光景を少女がポカーンとしてみていた。
猪をまとめて魔法の袋で収納した。
「すごい」
「だよね」
商業ギルドに行き
「48000セントになります。税金が2割ですので、9600セントほど納めてください」
銀貨96枚ほど納めた。
残金は、銀貨384枚である。
銀貨384枚を少女に手渡した。
「ほ、本当にいいの?ありがとう……!ルーク、ハクカ!」
少女は、手を握ってお礼をしていく。
「このお礼は必ずするわ。きっと、役に立つものを送るから!」
少女は大きく手を振って、笑顔でブライヒブルクを後にしたのだった。
後日、少女の父親の武器職人がお礼として俺に鋼の長剣、ハクカには鋼製の包丁を手渡してきた。
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