ケイの転生小説 - 八男って2
「・・・また男の子か・・・これで10人目だぞ」

「あなた、こんなにも元気な男の子なんですよ。それに相応しい名前をつけてくださいな」

「そうだなぁ・・・ルークとするか。その子が、ファブレの家名を継げる可能性はほぼゼロだがな」

 突然の眠気で再び夢の世界へと落ちた僕は、その夢の中で不思議な光景を目の当たりにしていた。



 どうやら僕は、このファブレという家の10番目の男の子として生まれたらしい。
 それと夢で話が進むにつれて、ファブレ家が192人の村を2つだけ治めている辺境の下級貴族であることが分かった。
 他にも現当主であるトール・フォン・ストラトス・ファブレは、よくも悪くも平凡な50男であり、同じ下級貴族出身の妻と地元名主の娘を妾にしている。

 その二人の妻との間に男の子が10人、女の子が3人いることなどがその名前と共に判明していく。

 正妻の子供
 長男 トビアス  30歳
 次男 カール   28歳
 三男 エリオ   26歳
 四男 アポロ   20歳
 五男 ローラン  18歳
 長女 クリス   16歳
 八男 ルーク   6歳

 妾の子供
 長男 マリオ   20歳
 次男 ディアッカ 18歳
 長女 ハンナ   16歳
 次女 ユリ    14歳
 六男 ニコル   12歳
 七男 オットー  10歳

 随分と子沢山であるが、子供が生まれても、必ず全員が無事に成人するということもないようだ。
 現に21人産まれた子供のうち、8人の子供は、成人前に神の御許に旅立ったのだ。
 まさかこのような世界で一人っ子というわけにはいかないだろうし、正妻が必ず子供を生める保証もないので、妾がいるのも納得はいく。

「あなた、ルークには剣や魔法の才能があるかもしれません」

「もしそうならば、兵士ではなく冒険者あるいはお抱え魔法使いとして独り立ちも可能であろうか」

 僕は子供の記憶を整理しつつ、現在自分の置かれた状況をまとめていく。

 まず僕が、貧乏貴族の八男ルーク満五歳、数えで六歳くらいに転生したのである。
 貴族の家に生まれたが、長男じゃないので領地などは当然継げずにいる。

 下手をすると、というか間違いなく貴族としてすら生きていけない可能性が高いのだ。

 このような世界なので、普通に考えれば長男が家を継ぐし、次男は予備と考えて、三男以降は己で生きる道を模索しないといけないはずだ。

 広大な領地を持つ大貴族家や中央で代々要職に就いている世襲法衣貴族家ならともかく下級貴族に、三男以降の身の振り方を考える甲斐性など期待しない方が懸命であろう。

 となるとだ。

 平成日本の自室で寝ているはずの自分はどうなったとか、先程聞こえた『魔法』というキーワードに浮かれたりとかしている余裕などない。

 この世界の成人が何歳かは知らないが、それまでに自分一人で生きていく術を得なければいけないからだ。

「(慌てるのもよくないが、子供だからって遊んでばかりいると人生詰むな……)」

 それからも僕は、ルークのこれまでの人生を思い出し、目が醒めてから新しい家族に不信の目で見られないよう、懸命に情報を集めるのであった。