ケイの転生小説 - 八男って12
 美味しい昼食を食べ、気力を回復させた僕は、弓術訓練を行なった。
 休憩をしたら、文字の読み書きや計算である。

「技能というのは、20時間で覚えることが出来ます。一流の技術が身につくまでの練習時間は大よそ1万時間になります」

「すごい時間かかりますね」

「そうですね。ただ、20時間の方は短縮しづらいですが、1万時間の方は、本人の才能や学習の質などで短縮できます。私の場合は、魔道具を用いて学習能力を向上してもらい時間を短縮する方法をとります」

「魔道具でですか?」

「はい」

 先生が複数の魔道具をだしてきた。
 1つ目は、僕の身長を超えるほどの大きな木の杖
 2つ目は、中に液体が入っているビンのようだ。
 3つ目は、何かのお守りである。
 4つ目は、月の形をしたペンダントである。

「これは?」

「先ほどいっていた魔道具とルークの魔力量を上昇させる魔道具です。まずは、ルークの魔力量を上昇させましょう。4つ目のペンダントを身に着けてください」

「・・・先生・・・どうやって身に付けたらいいんですか」

 ペンダントなんてつけたことがないのだ。

「・・・そうですね」

 先生にペンダントをつけてもらった。

「これでルークの魔力量は、4.8倍に上昇します」

「4.8倍ですか」

「これによって中級魔法が17回ほど使えます。ただし、上級魔法はまだ魔力不足で使えません。魔力が不足するとどうなるかは分かりますよね」

「気絶します」

「はい、魔法を発動せずに数時間ほど気絶します。次にこの杖を装備します」

 先生から渡された杖を身に付けた。

「その杖に魔力を通します」

 言われたとおりに杖に魔力を通す。

「これでルークの身に付けている魔道具は、変化しましたよ」

「変わりましたか?」

「ええ・・・今のルークだと分からないでしょう・・・ともかくペンダントと杖の『鑑定』をしてもらいます。まずは、『鑑定』という名前の魔法を覚えてもらいます。やり方は・・・」

 先生の指示に従い、『鑑定』の魔法を覚えた。

 名前 月のペンダント
 品質 最上級
 効果 装備したものの魔力量を上昇させる。

 指示に従い杖の鑑定をした。

 名前 ミーミルの杖
 品質 最上級
 効果 身に付けた装備の効力を上昇させる。

「効力ですか?」

「効力というのは、道具の威力だと思っていただければいいです。『ミーミルの杖』を使うと道具の威力が24倍ほど上昇します」

「24倍ですか!」

「今のルークであれば、上級魔法が5回ほど発動できます」

「なるほど・・・だから発動できたんですね」
 
「3つ目の液体ですが『頭の良くなる薬』』といいます。この液体は、学習能力を上昇させます」

 先生からビンを手渡された。

「4つ目が『鍛錬のお守り』です。こちらも学習能力を上昇させます」

 先生にお守りもを手渡された。

「今、渡した物を装備したり、飲んでみてください」

 先生の指示に従い、『鍛錬のお守り』を身に付け、『ミーミルの杖』を手に持ち、魔力を流しながら『頭の良くなる薬』を飲んだ。微妙な味である。

「やっぱり微妙ですか」

 先生から魔法技術の一つでもある『魔法同時行使』を教えてもらった。

「今日の授業はここまです」

「はい、ありがとうございました」

 先生からの教えが終わり、先生の案内で家に案内してもらった。

「ここですか?」

 見た限り、1階建ての平屋であるが相当広い。

「はい」

「では、お風呂まで案内しますね」

 お風呂まで案内してもらい、並々とお湯が入っていた。

「では、お風呂に入りましょう」

 洋服を脱いで、身体を洗いお風呂に入った。
 一息つくと先生が入ってきた。

「・・・え」

 驚愕したが、先生も身体を洗い、お風呂に入ってきた。

「せっかくですので、魔法でお湯を作る方法を教えますね」

 先生が嬉しそうにしながら魔法でお湯を作る方法を教えてくれた。
 『魔力圧縮』と火と風と水の同時行使によるお湯作りである。
 お風呂から上がると光魔法の練習や文字等の復習をしたのだ。
 そんな授業を現実世界基準で1ヶ月間ほど続けていた。

「最後に特殊な系統魔法である『聖』を教えようと思います」

『聖』の魔法は、性質的には水に近いものだと本には書かれていた。
 水の系統にも治癒魔法は存在する。
 聖職者がアンデッド系の魔物を退治する時に必ず使うのだが、厳しい修行を経た聖職者は、魔法使いの才能がなくても聖魔法を発動することができる。
 そういうごく少数の特別な神官や最初から聖魔法の才能がある者たちが神に祈りを捧げながら、アンデッド系の魔物には硫酸のような効果を示す聖水を作ったり、胸元の十字架に祈りを捧げてその動きを止めたりできるというわけだ。
 もっとも本当に真面目に厳しい修行をしていないと効き目がないそうで、そこまでの厳しい修行に耐える聖職者の存在自体が貴重であった。

 地球でも、お坊さんが悟りを開くのは命がけらしいから、教会で出世競争にばかり感けている枢機卿がろくに聖水すら作れないケースが大半で、これは世間では公然の秘密になっていた。

 あとは、数は少ないが最初から魔法が使える聖職者の存在であろうか。
 聖の属性を持つ光線のような魔法を放って呪われた人を治療し、回復魔法で怪我の治療を行い、教会に所属する騎士の武器に聖の属性を一時的に付与してアンデッドを倒したり、ゾンビの集団を滅ぼす広範囲に作用する『聖光』と呼ばれる魔法を使ったりと前世でプレイしたことがある、某RPGで見たような魔法が存在しているわけだ。

「ルーク。あなたなら必ず習得できます。そして修行の卒業試験として私を成仏させてほしい」

 珍しく先生は、真剣な表情で僕にお願いをするのであった。