ケイの転生小説 - 八男って
 いつものように、朝六時に目覚まし時計のベルの音で目覚め、急ぎ通学の準備をしてから、朝食を食べたら学校へと向かう。
 学校に行くまで徒歩50分ほどの場所にある家で家族6人暮らしの僕は、食事は夕食以外はほぼ自炊であった。同年代の友達が近所にいなかったので休みの日に外に出歩いて山遊びや川遊びを1人ですることが多かったが、まあこれも人並みと言えばそれまでだ。
 僕みたいな人間なんて、この日本中を探せば数えきれないくらい存在するであろう。
 などと考えていたのだが……。



 いつものように夢の内容すら記憶にないまま目を醒ましたものの、そういえば、いつもはうるさいくらいに鳴る目覚まし時計のベルの音が聞こえない。

「あれ?・・・まだ夜中」

 今が何時なのかは知らなかったが、まだ外は暗いらしく、部屋の中も真っ暗なままであった。
 徐々に暗闇に目が慣れてきたので上体を起こし、周囲の様子を探ることにした。
 すると色々と不自然なことに気が付いてしまう。
 ここは僕の寝室のはずなのに、見慣れた内装や家具などが一切見当たらなかった。
 その代わりに隣には、毛布でできた膨らみが1つ見える。

 いつの間に、僕の部屋に居候ができたのであろうか?

 突然の周囲の変化で混乱する頭を振り払うようにして、自分の状態も確認することにした。
 するとやはり、色々と就寝前とは状態が違っているようだ。
 まず、僕のベッドが木製でしっかりした物だったはずだが、どこか古臭かった。
 掛けていた毛布も、イズミで新品を買ったばかりなのに新しいはずなのに、ぼろかった。
 今度は、自分の身体を確認することにした。

「(あれ? 体が小さくなっていない?)」

 決して高身長というわけではなかったが、一応日本人の平均身長くらいはあったはずの僕の体が、どう見ても子供並くらいにまで縮んでいたからだ。

「(えっ? これって?)」

 最近よくネット小説などで見る、異世界への転生という考えがすぐに浮かぶ時点で僕も業が深い。
 まだ暗いし、お姉さまがすぐ隣で寝ているのに下手に騒ぐと起こしてしまう。
 明るくなるまで下手に動き回らない方が安全であろう。

 ・・・・ん?

 お姉さま?

 どうして・・・そう思ったんだろう。
 そこまで考えたところで急に抗えないほどの眠気が襲い、僕はそのまま再び眠りについてしまうのであった。