森で一晩を明かし、早朝に僕たちはベヒモスの眠る土地へと向かう。
あと一時間もしない距離にベヒモスがいるそうだ。
出発直前に知らされた偵察からの情報によると、相も変わらず岩盤に囲まれたまま眠りこけているらしい。
北の森に足を踏み入れたようで、周辺の木が立派に成長した大木ばかりになっている。
「久しぶりの北の森だぜ」
「ああ、そうだな」
少し前に来たばかりだというのに、以前よりも森に命の気配を感じられる。誰も余計な手出しをしなければ、この森は自然あふれる豊かな森になるのだろうな。
のんびり森林浴でもしたいが、そんな場合じゃない。今はベヒモスに集中しなければ。
かなり、ベヒモスに近づいてきたようで、雑用担当の部隊はここで待機となるようだ。
何だろう、いやな予感がする。
「くれぐれも体に気を付けてくださいね。紅さん」
「桜が待っていてくれるから、皆頑張れるんだよ」
「うん、美味しいご飯つくって待って――」
「逃げろおおおおおおっ! ベヒモスが向かってくるぞっ!」
桜の言葉をかき消したのは、叫びながら懸命に逃げてくるオーガの偵察兵とその背後から地響きを上げて迫る巨大な怪獣――ベヒモスだった。
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