『第6感』に任せて、目指すと高身長で筋肉質の目つきの悪い角がある鬼が北西の森で発見した。
「大丈夫かしら」
「さあ?」
その鬼たちの服装は簡素な革製のズボンと七分袖の上着である。
彼らの前に出ることにした。
「初めまして」
オーガの進路方向に現れ、挨拶をした。
オーガたちは手にした両刃の剣を構え、その場から動くことなく僕たちを睨む。
「キサマラ、ニンゲンカ」
たどたどしい話し方だが、共通語が使えるようだ。
「ああ。仲間を迎えに行く途中なんだ、あなたたちと戦う気はないよ」
その姿を見て、オーガたちが肩を寄せ、話し合いを始めた。
「ワカッタ。タタカワナイ」
「オマエタチ、テンイシャ、カ?」
「うん」
「ナラ、ムラニクルガイイ。カンゲイスルゾ」
目つきの悪いオーガはそこで、ニコッと口の両端を吊り上げ笑って見せた。
「へ? え、何で」
思わず、そんな言葉が口から漏れた。
そして僕たちはオーガに促されるままに、その後ろをついていく。
「何で僕たちと戦わないんだ」
「ムカシ、ムラ。テンイシャニ、タスケテモラッタ」
村、助けてもらった……か。
あれから幾つもの質問をしたのだが、オーガは少々聞き取りにくい共通語ながらも、質問には誠実に答えてくれた。
今から数十年前にも転移者がこの島にやってきたらしく、その時、他の転移者の集団に襲われオーガたちは壊滅状態に陥ったそうだ。
そんな彼らを救ったのも転移者だった。逃げ出したオーガの子供と意思の疎通ができた転移者の一人が、オーガたちを襲っていた転移者を倒し、不思議な袋からどんな傷をも治す液体を取り出し、多くのけが人を救ってくれた。
それからオーガたちは転移者に感謝するようになり、もし、同じような境遇の者がいれば手厚くもてなすことを村の掟としたそうだ。
「アレガ、ムラダ」
先頭に立つオーガが指差す方向には、巨大な壁が見えた。
それも、僕たちの拠点やゴブリンの集落のような丸太を並べただけの壁ではなく、石造りの立派な外壁が視界に広がっている。
「コノカベ。テンイシャ、テツダッタ」
誇らしげにオーガが胸を張っている。
「・・・あれ?」
「あ」
後ろからオーガを引き連れた権蔵たちを見つけた。
壁沿いに進んでいたオーガたちの進路方向に大きな門が見える。
門扉は両開きで鉄製のようだ。その前に革製の鎧を着こんだ見張りらしきオーガが二体並んで立っていた。
片方はこの三体のオーガと同じような見た目だが、もう一人はどうやら女性のオーガらしい。
長く白い髪と胸部の隠しきれない大きな膨らみが何よりの証拠だろう。
胸元が少し開いているので谷間がばっちりと見えた。
「――――っ!」
見張りの一人が、僕たちの姿を見て、驚き何かを叫んでいるが、オーガの言葉なのだろう、全く理解できない。
女の見張りの方も同じく驚いた様子なのだが、何処か少し嬉しそうな表情にも見える。
それに、この女オーガ。何というか、人間により近い。
身長は軽く180を超えているが、目つきも少し吊り上がり気味程度で、頭の角も少し髪からはみ出しているぐらいの大きさだ。
たぶん、帽子を被れば人間と見分けがつかないだろう。
「おお、久しぶりの人間じゃないか。オーガの村へようこそ、転移者の方!」
はっきりと聞き取れるその声は共通語ではなく――日本語だった。
次