ケイの転生小説 - 自分が異世界転移30
「・・・・もうこんなに日にちが経っているんだ」

「そうね」

 この島にたどり着いてから十日が過ぎた。
 木造式の住居を作成したのが昨日である。この五日は生活環境を整えたり、拠点を移動することだけで手一杯だった。
 あとは蓬莱さんたちの拠点の家も解体し、アイテムボックスに詰められるだけ押し込み、残りは大八車で運ぶという作業も二日前の夕方にやっと終わったところだ。
 雑草が生えた舗装されてない道を何度も往復すると、いつの間にか車輪の跡がつき後半はかなり搬送が楽になったのはありがたかった。

 そういえば、『消費軽減』のスキルを覚える為に権蔵君と桜さんの特訓を実行したようだが……人ってなかなか気絶をしないものなのだなと感心した。まあ、結果『消費軽減』を得ることは無理だった。

 そして今、転移者たちの墓穴を掘り遺体を埋めている。
 転移者たちの遺体は死後から一週間過ぎたというのに一切腐敗しておらず、傷がなければ今も眠っているかのように見える。

「不思議ですよね」

「綺麗なまんまだな……」

 刹那は椿さんを見つめぼそりと呟いた。

「サウワたちのような現地人も死んだら腐敗しないのだろうか」

『ええと……あ、動物たちと同じように死ねば腐り大地に還るそうです』

 魔物は死ねば光の粒子となり、跡形もなく消える。現地人や動物は地球と同じように腐敗する。僕たち転移者はいつまでも変わらぬ亡骸を晒し続ける。まるで、この異世界に来た異物をこの世界が、大地が、拒絶しているみたいだ。

「死体が腐敗しないとなると土屋殿が言っていた春矢のように奪取持ちには、ありがたい展開というわけか」

 転移者殺し推奨のシステム。最もこのシステムの恩恵に与っているのは、間違いなく『奪取』と『魂喰らい』スキルだ。
 転移者を殺して大量のスキルと経験値を得るだけではなく、その死体からスキルを奪うことができる。一挙両得か。
 この島で最強の能力を得る可能性が一番高いのは『奪取』と『魂喰らい』の所有者。うまく立ち回れば、最強の力を得ることができるだろう。

「まあ、考えてもわからないことは、考えるだけ無駄か。じゃあ、最後の仕上げしようか」

 墓穴に並べられた遺体の上に、周辺で摘んできた花を添えて土を被せていく。
 埋め終わると最後に蓬莱さんお手製の墓標を刺しておいた。
 最後に僕たちが手を合わせていると、現地人の子供たちも同じように手を合わせ拝んでいる。この世界でも同じような風習があるようだ。

「よっし、じゃあ昼ごはん食べて、これからの事を相談しよう」

 桜さんの通訳を聞き、ご飯という言葉に現地人たちが過剰なまでの反応をする。
 どうやら、蓬莱さんの作るご飯が珍しいようで、胃袋をがっちり掴んでいた。

「土屋さん。ニヤニヤしながらサウワちゃんの頭を撫でていると犯罪者っぽいですよ」

「そこは、せめて父親みたいとか言おうよ」

 半目で土屋さんを見て、わざとらしく怯えた振りをする桜さんに苦笑する。