ケイの転生小説 - ボクは異世界で 8
 パーティを組むのは、簡単だった。
 お互いが手を合わせ、そう念じるだけで、互いの右手の小指に赤い輪が生まれた。
 赤い輪は指輪のようであったが、実体がなく、手で触れることができなかった。

「……赤い指輪だ」

 ともあれ、ぼくには仲間ができた。
 これはおおきな一歩だ。

 カラスが偵察して、オークを見つけてくる。
 オークたちは、どうやら山の上手から下りてくるようだ。
 遊歩道をくぐり、さらに山を下っているうち、道に突きあたり、左右に分かれる。
 東にいけば高等部校舎に、西にいけば中等部校舎に行きつくわけだ。

「山の上に、なにがあるんだ?」

 そんな疑問がわくものの、いまはオークの群れに突っ込む気などない。
 現在の総MPは、120である。

「サモン・パペット・ゴーレム」

 ぼくの前に、身長百五十センチくらいの木製の人形が出現する。
 ピノキオ、と名付けたくなるような、粗い木彫りの人形だ。鼻は低いけれど。
 人形は、右手に棍棒を握り、左手で木製の丸い盾を構えていた。

 木製の人形が、ぼくに対してぺこんと頭を下げた。

「かっ、かわいいっ」

 ハクカが目を輝かせていた。
 パペット・ゴーレムを、おおよそ30体ほど呼び出し付与魔法をかける。
 
 5体ずつ道路の南側の森におびき寄せる。
 戦闘の音が聞こえないくらい奥までおびき寄せたあと、パペット・ゴーレムで殺す。

 オークが剣をがむしゃらに振り、突進してくる。
 パペット・ゴーレムは、マイティ・アームで増幅された四肢にちからを込めて、木の盾でオークの剣を防ぐ。
 そこで、1体のパペット・ゴーレムが棍棒で、オークの足をひどく傷つけた。
 オークは転倒し、悲鳴をあげる。
 パペット・ゴーレムはそこに、ためらいなく棍棒を振り下ろす。
 オークは、悲鳴をあげる。
 転がるように逃げるオークを、パペット・ゴーレム3体は容赦なく追いかける。
 フィジカル・アップのおかげで、パペット・ゴーレムの足はオークより速い。
 たちまち、追いつく。
 気合と共に、さらなる突きを入れる。オークが絶叫する。

 戦闘時間は、2分と少しだろうか。
 最後はパペット・ゴーレムに喉を突かれたオークが、淡く光って姿を消す。
 ぼくたちは、正面から戦って、オークに勝利したのだ。

「倒せた?」

「ああ。ぼくたちが戦えることはわかった。今後の方針を決めよう」

 そういってぼくは、ハクカと目を合わせる。