ケイの転生小説 - ボクは異世界で 78
 僕たちは、PCの画面に、釘付けであった。
 アキのステータスが表示されている。
 問題は、スキルの欄だった。
 召還魔法9となっている部分が赤い文字になり、そこをクリックすると……。

 派生スキルというサブウインドウが生まれた。
 ぼくは生唾を飲む。

「これが、ぼくたちの次の可能性……」

 派生スキル。
 PCのウィンドウ上に新たに生まれたそれを見て、ぼくたちはQ&Aで確認を行った。

 まず、派生スキルというサブウィンドウが生まれているのは、なにかのスキルをランク9にした者だけ。
 いまのところ、ぼくの召喚魔法と付与魔法と運動と肉体。それからハクカの治療魔法がランク9である。

 赤くなった召還魔法という文字の横に展開されているサブウィンドウには、単語がいくつかあったが、現状使えそうな、強化召喚。

 Q&Aしてみる。
 派生スキルとは、ランク9になったスキルをさらに強化する手段である。
 ふたつのスキルをランク9にしたうえで、派生スキルにスキルポイントを注ぐことで取得可能となる。

「上級スキルみたいなものか。実質的な、レベル10以上……」

 ぼくは理解する。
 レジェンド・アラクネのような神兵級モンスターのさらに先、ザガーラズィナーやさらにその上の魔王といった脅威に対抗する手段こそが、これなのだと。

 しかし、そうなると問題は、この強化召喚という派生スキルがどれだけのちからを持つのか。

「派生スキルを手に入れてみましょうよ」

「そうなるよな」

 僕は、強化召還のランクを得る事にした。

「これは派生スキルの最初のケースだから、皆で確かめてみよう」

 ぼくは自分のノートPCを皆に見せながら、解説する。
 ツリー状となったスキル欄の一番右側に表示された、強化召喚の文字。
 そこをクリックすると、「アビリティを選択してください」という文字が飛び出てくる。

 アビリティ。
 それが、派生スキルの特徴である。
 ただスキルのランクを上げるだけでなく、いくつかあるアビリティのなかからランクごとにふたつを選んで、己を強化していくのだ。

 強化召喚ランク1の場合、取得できるアビリティのうち有用そうなものをピックアップすると……。

・使い魔強化1
 名前の通り、使い魔が強くなる。
 おおよそランク0.5分の強化というから、たとえばパラディンが武器スキル7.5相当になるということだ。
 なおこのアビリティは、重ねて取得することで2、3とさらに強化されていく。
 一度のランクアップで連続して取得することも可能だが、最大値は現在のランクと同じところまで。
 つまり、いまはまだ使い魔強化1までしか取得できない。
 また、実質的に使い魔のランクが上昇するため、それに伴い維持MPも上昇する。

・使い魔維持魔力減少1
 こちらも、ほぼ名前の通り、使い魔を召喚し続ける場合必要な維持マナが減少する。
 最大でランク5までで、ランク1だと1割、ランク5で5割減少するようだ。
 そのほかの制限も使い魔強化と同じ。

・使い魔能力付与1
 ランク5まで存在するアビリティ。
 自分またはパーティメンバーのスキルを召喚時、使い魔に付与する。
 これに伴い、使い魔の維持にこのスキルのランク×二割増しのMPが必要となる。
 ランク1ならランク1までのスキルを付与、最大でランク5までのスキルを付与できる。
 たとえばこれをランク3まで上昇させれば、使い魔にハクカの持つ治療魔法ランク3を使わせることが可能になり、維持MPは六割増しとなる。

・使い魔同調1
 ランク3までしか存在しないアビリティ。
 ランクを上昇させることで、使い魔とぼくの意識を自在にシンクロさせることが可能となる。
 シンクロ時は、使い魔の維持に倍のMPが必要となる。
 ランク1では、五感を同調させることができるようになる。
 この段階では、リモート・ビューイングの強化版といった感じだ。
 ランク2で使い魔を通して会話したり、使い魔の身体を乗っ取って動かすことが可能となる。
 ランク3までくると、使い魔を通してぼくのスキルや魔法を使用することが可能になる。

・使い魔サイズ変更1
 ランク3までしか存在しないアビリティ。
 ランク1の段階では、維持MPを二割増しにすることで、召喚した使い魔のサイズをちいさくする。
 小型化に伴い、相応に弱くなるものの……ときには、それが役に立つこともあるだろう。

 まだいくつかあるんだけれど、いまのぼくが選ぶとしたらこのへんだろう。

「使い魔強化は鉄板で外せませんね」

「だろうなあ。単純に強い使い魔を呼び出せるわけだもんな」

「残る一ポイントは、使い魔維持魔力減少にガン振りしていくか、先に便利系アビリティを取りますか」

 うん、実質的にその二択だろう。

「使い魔強化で維持MPが上昇することを考慮するなら、使い魔維持魔力減少ガン振りが魅力的かな」

 というわけで、ぼくは新たなちからを得た。

「とるとしたら、付与魔法?」

「あの・・・意見いいでしょうか」

 アリハが、おずおずという。

「なに」

「音楽をとってみてはいかがでしょう」

「音楽を?」

「はい。音楽は原初の魔法ですから」

「そういえば、世界樹が謡っていましたね」

「そうだな」

「・・・うん、音楽をとるよ」

 ハクカが、音楽のスキルを習得した。
 アカネは、槍術のランクを上げるそうだ。
 アリハは、風魔法のランクを上げた。



アキ:レベル40 剣術9/槍術9/射撃4/治療魔法6/風魔法3(メニュー・タンズ)/地魔法3/付与魔法9/召喚魔法9(リード・ランゲージ)/肉体9/運動9/偵察3 スキルポイント96→91
         強化召喚0→1(使い魔強化0→1、使い魔維持魔力減少0→1)
ハクカ:レベル38 治療魔法9/音楽0→1 スキルポイント31→30
アカネ:レベル36 槍術7→9/付与魔法6 スキルポイント23→6
アリハ:レベル21 風魔法1→8 スキルポイント41→6