ケイの転生小説 - ボクは異世界で 42
 ぼくたちのフォーメーションは、長月さんを先頭とし、少し後ろにぼくとアカネとミアがいる。
 さらに長月さんの周囲を2体のファイア・エレメンタルと6体のソルジャーが囲む。
 僕たちの護衛に、2体のファイア・エレメンタルと4体のソルジャーが周囲を囲んでいる。

 斬り込み役の長月さんが、オークの群れに突撃する。

 ファイア・エレメンタルたちは、手にした曲刀を振るってオークたちを倒し、地道に道を切り開く。
 ファイア・エレメンタルに近寄るオークたちは、全身を包む炎によって焼かれ、悲鳴をあげる。

 この炎、ぼくたちにとっては、まったく熱くない。
 これはレジスト・エレメンツ:火をかける前からだ。

 どういう仕組みになっているのか気になるところだが……。
 ファイア・エレメンタルの炎は、仲間に影響を及ぼさないようなのだ。
 MMORPGのフレンドリィ・ファイア設定のようなものかもしれない。

 いまのところ自分たちにとって一方的に有利なのだから、まあどうでもいいか。
 炎のむさ苦しい男たちに囲まれ、ぼくは前進する。

 そして、レベルアップ。
 白い部屋へ。




 白い部屋では、ぼくとミアと長月さんとアカネがいた。

「アリスのところまで、200mって所か?」

「そうですね」

「しかし、進んでいるような進んでいないようなわからない状況だな」

「オークがたくさんいますから」

 倒した端からオークのお替りが来るので、せいぜい10mぐらいしか進めていないのだ。
 僕たちでこれなら和弘たちも似たような状況かもしれない。
 今回は、全員がレベルアップしたようだ。
 奇襲だったから簡単に倒せたけど、奇襲じゃなかったらもっと手間取りそうだ。
 僕は、付与魔法のランクを上げた。
 ミアは、風魔法のランクをあげた。
 サクラとアカネは、槍術を伸ばして、エリート・オークに対抗するようだ。

「一旦、全員集合」

「どうしてですか?」

「ヘルハウンド対策を施そうと思って」

「確かに必要ですね」

 エンターを押した。



アキ:レベル17 剣術4/付与魔法4→5/召喚魔法6/肉体4/運動4 スキルポイント5→0
ミア:レベル15 地魔法5/風魔法4→5  スキルポイント5→0
アカネ:レベル9 槍術4→5/付与魔法2  スキルポイント5→0
サクラ:レベル7 槍術1→4/運動1 スキルポイント12→3



 白い部屋から戻ると長月さんが戻ってきていた。

「ディフレクション・スペル」

 を自分自身にかける。付与魔法ランク5である。効果は、近くのパーティ・メンバーひとりにかける。対象が次に使う魔法の効果範囲を拡大し、それがパーティ単体を対象にする魔法であれば、パーティ全体を対象とするようになる。

「レジスト・エレメンツ:火」

 付与魔法ランク4である。指定した属性に対して耐性を得ることができる。

「ディフレクション・スペル、ナイトサイト」

 ナイトサイトは、付与魔法ランク5である。効果は、暗視効果を得ることができる。
 再度、おなじみの付与魔法をかける。

「マイティ・アーム、フィジカル・アップ、クリア・マインド」

 を全員にかけなおす。
 長月さん、アカネ、ソルジャーに

「キーン・ウェポン、ブラッド・アトラクション」

 をかける。
 キーン・ウェポンは、付与魔法ランク1である。効果は、先端を硬くする。
 ブラッド・アトラクションは、付与魔法ランク2である。効果は、武器で敵を傷つけると敵の傷に応じて使い手の怪我が消えていく。加えて、与えるダメージそのものも底上げされる。

「スマート・オペレイション」

 をミアとファイア・エレメンタルにかける。
 再び、進軍が開始された。
 背の高いファイア・エレメンタルに、アリスの方角をそのつど教えてもらう。
 ついでに、時々飛びあがってもらい、周囲の状況を確認させる。

 和弘たちの位置は、僕の左後方にいるらしい。
 アリスの位置は右手前方であるという。
 そして、まずいことに右手前方からアリスの方角へ、黒い巨大な犬が迫っているという。
 ヘルハウンドだ。

「状況が変わった。アリスの元に急ぐ」

「はい」「わかりました」

 ぼくたちは、一丸となってオークの海を漕ぎ進む。

 長月さんが突進し、できた穴をファイア・エレメンタルが押し広げる。
 さしものオークたちも、あまりの損害の多さに足並みを崩す。

 ぼくたちが側面から突入したのも効果的だった。
 敵軍は期せずして3方向から挟まれる形となったからだ。
 そして、待ちかねたものが来る。

 第一男子寮の屋上から、派手に花火があがったのだ。
 コンビニで買えるロケット花火だった。
 だがそれは、異世界の双月の空を裂き、派手な爆発と共にカラフルな火花を散らした。

 花火の真下に、ひとりの男がいた。
 忍者装束に身を包んだ男が、妙なポーズをつけている。
 棒きれのような、バトンのようなものを高々と振り上げている。

 きっと、ミアの腕だ。

 よし、ありがとう、結城先輩!

 花火を新手の魔法とでも思ったか、いっそう慌てるオークたち。
 異形のモンスターが逃げまどう。

「アリス!」

 和弘の声が響き渡る。
 直後、紅蓮の炎がアリス付近で発生した。

 紅蓮の炎が終わると、オークの群れから飛び出したたまきが、宙を高く舞う。
 空中で、ヘルハウンドと交錯する。
 銀の剣が、ヘルハウンドの胴を薙ぎ払う。

「アリスを、カズさんを、傷つけるなっ」

 全長三メートルもの巨体を誇るヘルハウンドが、たまきの一撃で吹き飛ばされ、地面を転がる。
 そうとうな深手を負ったのか、よろめきながら立ち上がろうとするが……。

 たまきが着地と同時に追撃する。
 立ち上がろうとするヘルハウンドの首めがけて、剣を一閃。
 銀の軌跡が魔犬の首を刎ねる。

 そして……。
 レベルアップの音がぼくの耳もとで響き渡る。