ケイの転生小説 - ボクは異世界で 41
 そして、ぼくたちが第一男子寮に近づくと、行く手から戦いの音が聞こえてきたのである。

 ぼくたちは顔を見合わせる。

「どうしたものか」

「助けに行きましょう」

「待った。高等部にはミアの腕を奪った変態がいる。そいつからミアの腕を取り返すのが先だろう」

「その役目、拙者に任せるでござる」

 突如、森から声が聞こえた。
 僕たちは、その声に警戒する。

「ん、兄」

 ミアのつぶやきで、臨戦態勢を解除する僕たち。

「おお、ミアでござるか。おぬしの事は和弘殿からきいたでござる」

 森の中から全身真っ黒の男が姿を現した。
 一言で言うなら

「・・・NINNZYA?」

「正解でござる」

 ミアが兄の元に向かい、右手で殴っていた。

「おい」

「拙者の業界ではご褒美でござる」

 僕たちは、ミアの兄の言葉でひいていた。

「変態か」

「おそらく」

 一通り、ミアと兄が話したので、本題に入ることにした。

「ミアの腕は拙者に任せるでござる。成功したら、狼煙がわりに花火を打ち上げるでござるから、期待するでござる」

 ぼくたちはうなずきあい、行動を開始する。
 それとミアのお兄さんの名前は田上宮 結城という名前らしい。
 結城先輩はぼくたちと別れ、第一男子寮の裏から侵入するらしい。

 ぼくたちは、オークたちの側面にある丘に登る。
 小高い丘から第一男子寮前の広場を見下ろす。
 広場を埋め尽くすように、オークたちが詰めかけている。

 男子寮付近に机や椅子でバリケードができている。
 バリケードの上に、煌々と蛍光照明がついていた。
 発電機をまわして、ライトアップしているのだ。

 バリケードの裏から、生徒たちがものを投擲したり、隙間から槍でオークを突いたりしている。
 そんななか。

 ひとりの小柄な女子が、槍を手に、バリケードの外で大暴れしている。
 アリスだった。
 アリスはオークの群れを相手に孤軍奮闘していた。

 彼女が槍を振るうたび、数体のオークがなぎ倒される。
 槍を突くたび、一体のオークが絶命する。
 あまりの無双ぶりに、彼女の周囲だけ、真空地帯のようにオークの姿がない。

 それでも、アリスだってそうスタミナがあるわけじゃない。
 いつかちから尽きるだろう。
 そうなったら、もう、数のちからに抗うことはできない。

 いま前衛となっているオーク軍団の背後には、エリート・オークも複数いる。
 そして厄介なことに、黒い犬ことヘルハウンドの姿すらある。
 ジェネラル以外は総登場だ。

 敵は本腰。
 アリスがいなければ、第一男子寮はたちどころに陥落するだろう。
 いや、たとえアリスがいたとしても……。

「行くぞ」

 僕たちは行動を開始することにした。
 ぼくは使い魔を召還して、付与魔法をかけていく。
 ランク5の使い魔のファイア・エレメンタルを四体。
 炎に包まれた裸の男が出現する。

 頭と下半身は炎に包まれ、地面から少し浮いている。
 右手には曲刀を持っている。
 ちょっと中東っぽい雰囲気だ。

 MP消費が112である。

 ソルジャーを10体ほど召還し、付与魔法をかけた。
 
 総MP消費が302である。 
 これでぼくのMPは、残り148だ。

 僕たちに、クリア・マインド。

「目標は、アリスの奪還だ!」

 ぼくは、叫ぶ。
 ぼくたちは、一斉に丘を駆け降り、オークの群れの側面に突っ込んでいく。

 深夜の戦いが始まる。