ケイの転生小説 - ボクは異世界で 28
 もとの場所に戻ってすぐ、離れていたミアが駆け寄ってきた。

「よいしょ」

 ぼくはミアを肩車する。
 ミアはぼくの肩を足場にして、樹の幹をよじのぼる。
 運動の苦手そうなミアだが、フィジカル・アップのおかげか、軽快な木登りだった。

 ミアは太く丈夫そうな枝に手をかけたところで立ち止まる。
 真下のぼくを振りかえる。

「ブルマのおしりより、スカートから覗くパンツの方がよかった?」

「・・・あのね。登ってくれ」

 僕は、ミアの問いに赤面しながら答える。

「カズさん、お待たせしました」

「とうちゃーく!」

 アリスとたまきが、それぞれ狼とソルジャーを連れて和弘のもとに駆け寄ってくる。作戦通りともいえる、何せ和弘はあるものを入手しようとしていたからだ。
 よし、これで準備は整ったな。
 ミアが丈夫そうな枝の上に立ち上がり、オークの群れを見下ろす。

「どのあたりに、かける?」

「真ん中あたりがいい」

「ん。アース・ピット。おまけにもひとつ、アースピット」

 ミアの穴掘り魔法によって、オーク集団の中心付近の地面が、立て続けに陥没する。
 オークたちは、慌てて左右の森に入る。

「ミア、少し待て」

 僕は、ミアが登った木の枝までいき、ミアに触れる。

「スマート・オペレイション」

 付与魔法ランク2のスマート・オペレイションである。
 効果は、魔法の攻撃力をあげる。

「ミア」

「ん、ランペイジ・プラント」

 ここで、ミアの地魔法ランク3、ランペイジ・プラントが炸裂する。
 オークの周囲の樹木が広範囲に渡り暴れ出した。

 樹の枝が鋭い刃物のように尖り、オークの顔を、腹をえぐる。
 青い血しぶきが派手に飛ぶ。
 舞い散る落ち葉が、手裏剣のようにオークの身体を切り裂く。

「もういっちょ、ランペイジ・プラント」

 反対側の森のなかでも、オークの悲鳴があがった。

 ランペイジ・プラントは、木々を凶暴な肉食獣のように暴れさせ、周囲すべてに無差別攻撃を放つ魔法だ。
 密生した木々のある場所でしか効果を発揮しない、という限定条件を持つかわり、こういった森のなかでは無類の威力を発揮する。
 ただし、効果範囲が広いことは別の問題も引き起こす。

 仲間まで攻撃されてしまうのだ。
 ゲームと違って、フレンドリィ・ファイアはごく普通に起こりうる。
 だから、アリスやたまきがこちら側まできたときにしか使えないのである。

 しかもこの魔法、取りこぼしが発生してしまう。
 木々による攻撃をくぐり抜けた血まみれのオークが、左右あわせて三体、飛び出してきた。
 凶暴に怒り狂い、指示を出すぼくを頭と見定めて、襲いかかってくるが……。

「アリス、たまき!」

 和弘の護衛にまわっていたふたりが動いた。
 槍による鋭い刺突と大斧の一撃が、素早く二体のオークの命を狩り取る。
 だが残った一体がなおもぼくに迫り……。
 近くの木陰から投擲された槍によって、心臓を串刺しにされ、息絶えた。

「レベルアップ、しちゃったわ」

 志木さんが森から出てくる。

「アキくんが狙われていたから、念のため、ね」

「ありがとう」

 レベルアップのメッセージが頭のなかで鳴り響く。



 白い部屋にて。
 ハクカにも状況を説明する。

「・・・レベル上がったのかな」

「ある程度、上がったみたいだけどね」

「そうなんだ。勝てるといいよね」

「場合によっては、僕が足止めをしている間にアリスとタマキがエリート・オークを倒せれば問題ないかな」

「じゃあ、ミアちゃんにかかっているね」

「ん」

 僕は、ノートPCを見ながら少し驚いた。

「ん、意外と削れた?」

「すごいね」

「ああ」

 大幅にレベルアップしていたのであった。
 ちなみにスマート・オペレイションで底上げされた魔法の威力とミアのランペイジ・プラントがうまい具合に機能したからである。

「ミア・・・風魔法をランク2にあげてほしい」

「ん」

 僕は、付与魔法のランクをあげた。
 ハクカは治療魔法のランクをあげた。
 ミアは、風魔法のランクをあげて、エンターを押した。



アキ:レベル13 剣術4/付与魔法3→4/召喚魔法5/肉体4/運動4 スキルポイント7→3
ハクカ:レベル13 治療魔法5→6 スキルポイント11→5
ミア:レベル11 地魔法4/風魔法1→4  スキルポイント11→2