爆風が収まったあと岸辺の桟橋は綺麗に消えていた。
やっぱり、あれはモンスターが化けていたものであったようだ。
岸には、青い宝石が六個、転がっていた。
「青い宝石一個でレベル5分くらいと考えると、だいたい三十レベル前後のモンスターだったのかな」
「手ごたえとしては、そんな感じでござろう」
ハクカがアリスを治療している間に、ぼくたちはそんな会話をして、陸に立つ。
さてと霧の向こうの陸地を仰ぐ。
そこには、鬱蒼とした緑の葉の森が広がっていた。
森を割るように石が敷き詰められた幅五メートルほどの道が延びている。
ずっと放置されていたにもかかわらず、その周辺には草木がまばらだ。
これは……ちょっと不自然、かなあ。
「みてみてー。ここに、文字みたいなもの描かれてるわー」
森のなかの一本道を偵察に出た啓子さんの声に、皆がそちらへ赴く。
道を形成する石のうち端っこの方の何個かになにか紋様のようなものが描かれていた。
いや、それはたしかに文字なのだろう。
重要なのは、ぼくたちがその文字らしきものを見たことがあったということだ。
それはすなわち……。
「これ……石柱にあった文字だよね」
たまきがいう。
アリスとミアがうなずき、志木さんは懐から写真を取り出して、目の前の紋様と見比べる。
「リード・ランゲージ」
ぼくは文字を読む魔法を使う。
目の前の紋様の意味を掴もうとしたのだが……。
「うーん、よくわからないな」
今回は、読めなかった。
どういうことだろう。
「おそらく、これが魔法の術式だからでしょう」
ルシアがいった。
「この紋様は文字でありながら、同時に魔法の術式でもあるのだと考えます。古代、そういった術式が存在したと聞いたことがあります。それは新しい神々から授かった、特別な文字であると」
「新しい神々……たしか、この大陸をつくった神さまのことだよね」
「はい。われわれ広い意味での人類をつくった古き神々が去ったのち、この世界に降臨した方々です」
そのあたりの伝承がどこまで正しいかはともかく、そういた魔法文字があって、これがそうだと……。
納得できるような、できないような。
まあ、いちいち考えていても仕方がないか。
「マナヴィジョン」
和弘はマナを見る魔法を行使する。
「ああ、うん。この石でできた道の左右から、道全体を覆う結界のようなものが発生しているみたいだ」
「だから長年にわたって放置されていても草木の浸食を受けていないのかしらね」
「わからないけど……そういう可能性もあるかな」
ちなみに、道じたいが罠である可能性も考え、ウルフを召喚して歩かせてみた。
特に異変は起こらない。
うーん、この調子なら、奥までいってもだいじょうぶかなあ。
「いや、やはり正直に道を通るのは危険でござろう」
結城先輩がいった。
「皆で道の脇、森の上空を飛ぶのがよいのではないでござろうか」
「あー、なんかゲームの裏技っぽくていいですね、それ」
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