ケイの転生小説 - それは77
 およそ半日でブランタークさんが戻ってきた。

「警備員たちが来るまで、ここにいろだと」

「今すぐに準備も厳しいからな」

 何しろ万を超えるゴーレムの運び出しなどあるからな。
 俺たちは、警備員たちが来るまで調査を開始していた。

「ねえ・・・できそう?」

 魔導飛行船を調査しているとミュウから声がかかった。

「仕組みは、大体分かったから、後は実際に作ってみないとわからないな。本でも見れば、多少は分かるかもしれない」

 棚にある本の一部を手に取った。

「ん・・・これはゴーレムの・・・それにこれは・・・・鉱山か・・・・東か・・・使えないな」

「・・・何の話?」

「ああ・・・・とある鉱山の話だな。これを解放しても俺たちにうまみがないんだよな」

 警備員たちが来たのは、それから3日後であった。
 俺たちは入れ替わるように王都に帰還し、冒険者ギルドに向かい、王宮に参内するように言われた。
 一旦屋敷に戻り、身支度を整えてから、王宮に向かった。



「と言うわけで、エリーゼはお茶を淹れるのも上手だし、夕飯の味噌煮込みも美味しかったです。朝食も手際良く準備してくれて」

「さすがは、我が姪なのである。安心して、バウマイスター男爵の嫁になれるというもの」

「まあ、その前に死に掛けたんですけどね」

「それは……」

 真っ先に出迎えたアームストロング導師と話をしながら謁見の間へと向かう。
 途中の話とは言っても既に報告は行っているらしく、アームストロング導師からは、特に地下遺跡や戦闘自体に関する質問は無いようだ。

「まあ、その話はこの辺で」

「うむ……」

 王宮内では他人が密かに耳を立てている事が多く、そうやって集められた噂はそれぞれの主人の耳に入る事が多い。
 なので、あまりお喋りなのも考え物であったからだ。
 勿論、その主人とは貴族の事であった。
 そしてその貴族の中には、今回の件で俺たちと王国側が揉める事を喜んだり、それを何かに利用しようと考える輩も確実に存在する。

「(某会計監査長ですか?)」

「(やっぱり、知っておったか……)」

「(本当に貴族ってのはどうしようもないのが居ますよね?)」

「(辛辣であるな。貴族が全員、そこまで酷くないと思いたいのである)ところで、それは……」

 ヴェルが持っているのは、『アーカート神聖帝国の文化と歴史』という本だ。
 隣国アーカート神聖帝国に関する資料は、意外と少ない。
 貿易と人の交流が王都とその周辺に限定されているのと一応は仮想敵国なので向こうも簡単には教えないからだ。
 平時でも互いにスパイなどは入れているはずだが、苦労して手に入れた情報を両国政府が簡単に世間に公表するとも思えなかった。
 特に地方では。
 俺が居た南部ではたまに輸入品を見るくらいで、最近まで俺も良く知らなかったのだが、この本によるとそう政治体制に違いは無いようだ。

 次の皇帝を議会の投票で決めるので、少し民主主義寄りにも見えるが、議員の大半は貴族と皇族で、候補者も皇族と選帝侯なので平民に出る幕などなく、実質はあまり変わらなかった。

「北なので、冬に少し寒いくらいですかね? 旅行とか行けたら良いのに」

「いや、外国人は皇都周辺からは出られないゆえに……」

 アームストロング導師は、なぜか汗を流しながらヴェルからの問いに答えていた。

「へえ、良く知っていますね」

「十年ほど前に親善団の一員として行った事があるのである」

 停戦から二百年以上。
 両国は五年に一度、交互に親善団の派遣を行い。
 国王や皇帝が代替わりした時にも外交団などを派遣するそうだ。
 というか、さすがはアームストロング導師。
 何気に、そんな大切な親善団の一員に選ばれていたりしていた。

「ちなみに亡命者とかはいるのですか?」

「居ない事も無いのである……」

「へえ、どんな理由で亡命したんでしょうかね?」

「……」

 とっくに謁見の間に到着し、あとは陛下の登場を待つばかりであったが、その間アームストロング導師は額から流れる汗をハンカチで拭い続けるのであった。    

「ご苦労であったの。聞けば、色々と大変であったとか?」

「はい、死ぬかと思いました」

「そうか……」

 ここで、嘘をついても仕方が無い。

 俺は謁見の間に姿を見せた陛下に地下遺跡における死闘のあらましを説明していた。
 今回の呼び出しは、発見された物が物なので王国側が必要と判断したからである。
 地下遺跡で生きていた魔道具工房や魔導飛行船専用の建造・修理ドッグなどは、間違いなく王国が買い取るはずだ。

 魔導飛行船は、これは王国政府以外の所有が禁じられている。
 正確には、ある一定の大きさ以上の魔導飛行船の所有の禁止なのだ。
 小型船でも動かせる魔晶石の確保が難しいので、所有している貴族や商人は極少数に留まっていた。
 そして小型船では、精々有効移動距離は三百キロ程度。
 大物貴族が近隣への人や物の移動などに使ったり、近隣の貴族同士が数家共同で運用するケースも存在するそうだ。
 長距離の輸送には向かないので、河川の無い内陸部を除くと海を走る船の方が良いという結論に至ってしまう。
 実際、ブライヒレーダー辺境伯なども普通の大型船の方を数多く所有していた。

「先に向かった冒険者達は、一人も生還できなかったと聞いておるが」

「はい」

 先に探索に向かった先輩冒険者達は、全員がドラゴンゴーレムのブレスで焼き尽くされていた。
 遺体は骨まで焼き尽くされ、地面に落ちていた残骸からは、彼らの身分を証明するような物は一切発見されず。
 その現場で俺達が発見したのは、一部装備品などの焼け残った金属片のみであったのだ。
 デビュー戦から死体を直視しないで良かったのかもしれないが、俺達だって失敗すればああなってしまうのだ。
 そう考えると非常に考えさせられるデビュー戦とも言えた。

「そうか、犠牲者の冥福を祈るとしよう。それと戦力の算定を誤ってそなたらを危険に曝してしまったの。余からは、済まぬとしか言えぬ」

「陛下!」

 控えている一部貴族達から驚きの声があがるが、確かに一国の王が臣下に謝るのは珍しい。

「良い。誤りを認めずに謝罪もせぬのであれば、王などただ傲慢な独裁者でしかないからの」

 とはいえ、陛下の謝罪は規定路線であったらしい。
 驚いたのは一部のみで、ルックナー財務卿などは涼しい顔で何かの書類を確認していたようだ。

「しかし、初陣でいきなり大成果じゃの」

「これも悪運の賜物かと」

「確かに悪運よの。他の普通の冒険者なら、何も得られずに死んでしまうからの」

 冒険者ギルド内でも、有名な一流冒険者達が揃って生還できなかったのだ。

 これを悪運と呼ばずに何と呼べば良いのであろうか?

「指南役とパーティーメンバーが優れてもいましたし」

「そういえば、エリーゼ以外は初対面じゃの」 

 当然、パーティーメンバー全員も俺たちの後ろで控えているのだが、みんな一言も言葉を発しない。
 皆、一国の王と面会する機会などないので、先ほどから緊張した面持ちを崩さないままなのだ。

 10人の中で一番図太いと言われているルイーゼですらそうなのだから、それだけ王様とは雲の上の人という事だ。
 エリーゼも過去に数回会った事があるそうだが、普段よりも表情が硬いように俺は思っていた。

「三年ぶりくらいかの? エリーゼよ」

「はい、お久しぶりにございます」

「美しくなったの。未来の夫君、バウマイスター男爵はどうかの?」

「はい、とても優しいお方です」

「そうか、それは良かった」

 陛下がエリーゼに声をかけるが、さすがはホーエンハイム枢機卿の孫娘。
 無難に受け答えをしているようだ。

「あとは、リッド、ユメイ・ストロング、ミュウ、エルヴィン、キャロル、ミスミ、イーナ・ズザネ・ヒレンブラントか。ワーレン達が将来が楽しみだと褒めておったの」

「ワーレン様にはお世話になっています」

「光栄です」

「光栄にございます」

「光栄です」

「光栄です」

「光栄にございます」

「光栄です」

 陛下は、近衛騎士団に7人が出入りして訓練している事を知っているばかりか、むしろ黙認している節があった。

「ハクカであったな。そなたの聖魔法の腕前はエリーゼから聞いておる」

「光栄です」

「そなたは、ルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェークであったか。アームストロングに目を付けられるとは、大したものじゃ」

「導師からは、良き指導をいただきました」

 ルイーゼの魔力を使った格闘能力は、それを教えていたアームストロング導師も認めているほどであった。
 せっかく魔力が高いのにあまり魔法が使えなかったが、その分竜でも殴り殺せそうな力を得たのだから。
 あと、緊張はしていても陛下への無難な対応を見るとルイーゼは10人の中で、一番その手の部分で卒が無いようにも見える。
 外見は、どう見ても十二歳くらいにしか見えなかったのだが。

「なかなかに粒揃いのメンバーであるな。期待しておるぞ」

 陛下も忙しい身なので、長い時間は取れないらしい。
 謁見は軽い挨拶程度で終わり、次は本題の地下遺跡の扱いについてであった。
 結局、地下遺跡で死に掛けた件では、あまり文句も言えなかった。
 陛下が、すぐに謝ってしまったからだ。
 それと今日の謁見であったが、なぜかブランタークさんは体調不良だとかで欠席している。
 何でも、指南役はギルドから最低限の報酬を貰うので、今回の報酬分割には参加できないらしい。
 確かにそれならば、わざわざ緊張しながら陛下に会う必要は無いのかもしれない。
 思うになかなかに不憫な人であった。

「あの、魔導飛行船用の造船・整備ドッグだがの……」

 その後の調査で、あの造船施設の天井部分が開く事が確認されたそうだ。
 それと魔晶石以外の部分を効率良く建造できる既存の施設よりも遙かに優れたドッグだ。
 修理や整備も楽にこなせる素晴らしい設備なのだそうだ。

「現在、かのドッグに空軍の拠点を移す計画があっての」

 王都からも近く現在のドッグ兼魔導飛行船の発着場からドッグの本拠機能を移す計画があるそうだ。

「現在の施設は発着場をメインにサブのドッグにしてかの地のドッグを参考に改装工事を行おうかと思う」

 普段の空軍は、魔導飛行船の修理・整備と旅客・輸送業務がメインになっている。
 そこで、俺達が最初に降り立った港の離発着機能を強化しつつ、既存の隣接するドッグを発見されたドッグを元に改修。
 サブのドッグとして、空軍の戦力と拠点を強化するのだそうだ。

「まだそなた達の物なのだが、魔導飛行船関連では王国に優先権がある。許せよ」

「はい、それは」

 俺たちが七隻の魔導飛行船と大型ドッグを王都近くに私有して独自に運用を開始する。
 間違いなく『バウマイスター男爵とファブレ男爵は危険です』と陛下に囁く貴族が増えるはずだ。
 多分、とっとと売り払った方が安全なはずだ。 

「魔導道飛行船の新規建造に関しては、魔晶石の製造技術の関係でまだ研究課題ではあるが、造船所にあった七隻の魔導飛行船は、機関部に付いていた魔晶石が無事での。魔力さえ注げば、少しの整備ですぐにでも使用可能だそうだ」

 巨大な魔晶石の製造についても一緒に見付かったイシュルバーク伯爵の工房や書斎の本などから研究が進む可能性があったので、現在急ピッチで調査と解析が進んでいるらしい。

「あの二体のドラゴンゴーレムも危険なので分解して解析中だ」

 材料にふんだんにミスリルとオリハルコンが使われていて、中身の機構にも今までに見付かっていない仕組みが使われているそうだ。
 あと、使われている魔晶石もかなりの大きさらしい。
 そういえば、二体目のドラゴンゴーレムには、外部から魔力を補給するためのケーブルまで付いていた。
 ゴーレム専用の無人修理工房などもあり、それらを動かすためにメインとサブで超大型の魔晶石がバッテリー代わりに設置されていたりと。

「その魔晶石は、他の魔導飛行船の再稼動に使えるので助かっておるよ」

 続いては、あの大量の活動を停止させたゴーレム集団であった。
 損傷が激しい物から、ただ動きを止めている物まで。
 合計で一万体以上も存在し、現在兵士達がひいこら言いながら空いている地下遺跡のエリアに並べて数を数えているそうだ。

「一体一体に人工人格の結晶クリスタルと長時間稼動可能なように魔晶石まで付いておっての」

 それは、俺達も確認していた。
 人工人格の結晶クリスタルに関しては、これから要研究なのであろう。
 魔晶石は、今、普通に取り外せば使えてしまう。
 さすがに大型の魔導飛行船には使えなかったが、魔道具の材料や王国でもインフラ系の魔道具に付けるのでいくらでも欲しいのだそうだ。

「早速、魔道具ギルドか嗅ぎ付けての。売ってくれと五月蝿いのだ」

 汎用魔道具で一番面倒な部類に入るのが、電池部分に当たる魔晶石の製造である。
 現物が既に一万個以上もあるのなら、一つでも多く手に入れて納期を短縮したいのだそうだ。

「地味に、あの魔力回収パネルも素晴らしい成果だそうだ」

 最後に、あの空気中の魔力を回収するパネルであったが、単純な構造をしていたので、現在試作と使い道の研究が始まっているとの話であった。

「魔導街灯程度の魔力消費量なら、街灯の上にパネルを設置すれば経費削減になるからの」

 王都や主要都市で普及している魔導街灯は、定期的に魔法使いが魔力を使用されている魔晶石に補充する必要がある。
 その手間が省けるのであれば、相当な経費削減になるはずだ。
 それに、どうせ街灯に魔力を補充する魔法使いの仕事は減らない。
 他に魔力を補充しなければいけないインフラ系の魔道具は大量にあるし、魔法使い不足で補充間隔が長くて稼動していない期間があったり、必要なのに設置できていない物も大量にあったからだ。

 あと、もう一つ買い取ってくれる物があるそうだ。
 あの俺達を不幸の『逆さ縛り殺し』へと誘ってくれた魔力吸収型の強制移転魔方陣。
 あれの研究が進むと、もしかすると数名くらいなら自由に魔法陣間を移動可能になるかもしれない。
 魔導キルドが独占するために高額で買い取ってくれるそうだ。

「余の不手際で大変な目に遭わせてしまったが、冒険者デビューとしては最良の結果であるか。ファブレ男爵とバウマイスター男爵達が見付けた成果については、王国が全て買い取る事としよう。すまぬが、それしか出来ぬ」

「恐れながら陛下にお願いがございます」

 俺の発言に他の貴族達がざわめく。

「よい、申してみよ」

「では、1つは10キロメートルシホウの土地を購入したいのでご許可をお願いします」

「10キロメートルシホウか・・・1つの街レベルの土地か。よかろう、パルケニア草原を好きに使うがよい」

「よろしいのですか?」

「かまわぬよ。そなた達が解放した土地だ」

「ありがとうございます」

「2つ目は、こちらが指定した職人の斡旋をお願いしたいです」

 魔導飛行船製造のノウハウを持っているのは王家なのだ。
 次点で大型船の製造のノウハウを持っている各辺境伯である。

「よかろう・・・ブライヒレーダー辺境伯だけでは大変であろう。空軍には話しを通しておこう」

「・・・ありがとうございます」

 俺は、陛下の発言に少し驚いた。

「(ブランターク殿がファブレ男爵が何を調査したのか話しておられたである)」

 導師がネタバレをしてきた。
 陛下は理解しているか。

「(製造に使えるのですか?)」

「(整備であれば可能である)」

「3つ目がこちらの指定した派閥の王国軍を警備役に雇いたいのですが」

「よかろう。10キロメートルシホウの土地であれば要らぬはらを勘ぐるであろうからの」

「ありがとうございます」

 こうして、俺と陛下との三度目の謁見は終了したのだが、そろそろ普通の冒険者生活に戻りたいと思うのは贅沢なのであろうか?

「買い取り査定については、ルックナー財務卿に任せるとしよう」



「ええと……使える魔導飛行船が七隻で、一隻あたり白金貨1500枚で合計1万500枚。ドラゴンゴーレムが二体で、ミスリル・オリハルコン素材と魔力回収パネルの現物と合わせて白金貨八千枚。ゴーレムが、兵士型が一万二千五百体で、騎馬騎士型が八百五十体。これの査定については、損傷が酷く金属素材でしか使えない分もあり。ただ、新型の人工人格の現物多数に無人修理工房もあるので、合計で白金貨一万八千枚。合わせて見付かったイシュルバーク伯爵の工房や書斎にある膨大な研究資料。今後王国の魔導飛行船基地になる造船所。稼働用の超大型魔晶石が二つ。地下迷宮にある魔力吸収型の強制移転魔方陣の現物。これは、魔導ギルドが研究用に買い取るそうです。その他、王国強制依頼なので報酬の増額に。先に二つの探索隊が全滅しているので、ギルドからも報酬の増額がありまして……」
  
 陛下との謁見を終えてギルド本部へと向かうと、そこでは受付のお姉さんが半分顔を引き攣らせながら今回の報酬について説明をしていた。

 これだけ一度に沢山、良く舌を噛まないものだ。
 きっとこのお姉さんは、受付のプロなのであろう。

「つまり、どのくらいで?」

「ええとですね……。一人頭白金貨40億枚ですね」

「40億枚!」

 あまりの金額にリッド達が絶句していた。
 受付のお姉さんも心なしか顔が青いような気がする。

「ドラゴンバスターズと漆黒の翼のメンバー12人で頭割りですから。ですが、報酬は二十年の分割払いになります。分割払いなので、利息分が増額で、税金も引かれた分だと思ってください。あと、ギルド本部に納める上納金も王国負担となります」

 報酬は二十年の分割払いで、面倒な納税も既に支払い終えていて、冒険者ギルドに収める二割の上納金も、もう支払う必要は無いそうだというか何か怪しいような気もする。
 普通ここで大金を得ると、税金名目で、大量に差し引かれるのが、この世の常識だからだ。

「(妙に生暖かい優しさというか……)ところで、ブランタークさんの分は……。ああ、そうか!」

「ブランタークさんは、今回は指南役なので……」

 指南役は、普通は新人の付き添いなので報酬を頭割りしても金額が満足できない額になる事が多い。
 なので、ギルドが所定の報酬を出すのが普通らしい。

「ギルドの決まりのせいで、ブランタークさんは大金を逃したと」

「まあ、別にいらんがね」

 と、そこにブランタークさんが本人現れるが、特に多額の報酬に未練がないそうだ。
 その前に体調不良で今日の陛下との謁見に来なかったような気がするのだが、今の彼は誰が見ても健康体にしか見えなかった。

「そこは、察してくれよ。坊主」

 あんな重たい席、そもそもブランタークさんは正式なパーティーメンバーでもない。
 保護者代わりにアームストロング導師もいたので、自然と体調不良になったようだ。

「そんな大金、もうロートルの俺には使い切れないからな。それよりも、お前達は身を持ち崩すなよ」

 運良く大金を得てから、それで身を持ち崩す冒険者は多いらしい。
 なので、ブランタークさんはリッド達に注意をしているようだ。

「逆に、ここから破産とかする人って貴重ですよね?」

「ある意味、歴史に名を残すと思う」

 確かにエルの言う通りで、ある意味貴重なのかもしれなかった。 

 というか、どうやって使ったら良いのであろうか?

「しかし、本当に運が良いよな」

 新人なのに達成困難な強制依頼を受けさせられて運が悪いのかと思えば、思わぬお宝を見付けて大金を得てしまう。
 ブランタークさんに言わせると超一流の冒険者には実力の他に運の要素も必要らしい。
 確かに、それには納得してしまう部分があった。

「その点で言えば、もうお前らは超一流の冒険者だな。先に死んでしまった連中は、一流ではあったが超一流にはなれなかった。そういう事だ」

 ともかく、これで無事にデビュー戦も終了し、俺達は二年半ぶりに生活の拠点をブライヒブルクへと移す事になるのであった。