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「坊主、お館様からの手紙だぞ」

「手紙ですか? なんだろう?」

 ハクカとのデートを終えてザフト邸に戻るとブランタークさんが俺に一通の手紙を渡した。
 手紙の差出人は、俺の寄親となったブライヒレーダー辺境伯からであった。

「なになに……。ブランタークさん、これは本当なんですか?」

 なんと手紙には、『冒険者予備校の卒業認定は出すから、このまま王都に留まって冒険者修行を続けるように』と書かれていたのだ。

「本当に決まっている。第一その手紙は、お館様の直筆じゃないか」

「そうなんですか」

 俺はブライヒレーダー辺境伯の筆跡なんてよく知らなかった。
 しかし、納得のいかない点はある。
 ようやく入学した冒険者予備校に戻らず、このまま王都で冒険者修行に励めと言われてしまったのだ。

「ブランタークさん。これはどういうことなんですか?」

 リッドは、俺よりも早くブランタークさんに質問をしていた。
 なぜならこれは俺だけの問題ではなく、手紙の続きには、リッドたちも俺につき合うようにと書かれていたからだ。

「大人の事情ってやつだな」

 ブランタークさんが、ブライヒレーダー辺境伯がこの手紙を送って来た意図を説明した。
 まずは、俺が竜を二匹も倒してしまったせいで、これ以上ブライヒブルクの冒険者予備校にいてもなんら意味がなくなってしまったからだ。

 講師たちからすれば、竜を退治した俺になにを教えるんだって話になるからだ。
 俺としては、魔法以外にも冒険者として必要なスキルはいくらでもあるので、指導は続行してほしいのが本音であった。

「今さら坊主が、あの冒険者予備校で魔法の講師からなにを学ぶんだ? って話さ」

「いや、ほら。もっと他に冒険者として必要な知識とか、魔法以外の技術とかもあるじゃないですか」

「そういう知識なら、王都でも学べるからな。ここには、冒険者専用の専門学校のみならず、様々な学校があって、自分の好きに学べるんだからよ」

 元々、予備校にいる魔法使いはそれほど優秀ではなかった。
 冒険者稼業などとっくに引退した160歳すぎのお爺さんなんだが、よく講義中に居眠りしているしな。
 よくよく考えてみたら、優秀な魔法使いなら、収入は安定するが安月給の講師業よりも冒険者稼業に精を出すことが多いし、どこかの貴族家や商家で高待遇を受けることもできる。

 なので必然と引退した老人か、収入よりも安全を取った冒険者しか講師になってくれなかった。
 うちは、まだ魔法の講師がいるだけマシだと言われるほど、実はどこの冒険者予備校でも、魔法使い不足は深刻であったのだから。

「リッドの坊主も、ハクカとミュウとイザベルとラトの嬢ちゃんもな。うちの冒険者予備校で燻るのは無駄だろうから、王都で一流の達人にでも習えということなのさ」
「リッドの坊主も、ハクカとミュウとイザベルの嬢ちゃんもな。うちの冒険者予備校で燻るのは無駄だろうから、王都で一流の達人にでも習えということなのさ」

 元々リッドたちも同年代の生徒たちを圧倒する力量の持ち主だ。
 同じく武芸の講師にもそこまでの達人がいないので、彼らは自分とそう強さが変わらないリッドたちを持て余しているのが現状であった。

 魔法使いでなくても、優れた冒険者は冒険者稼業で稼ぐ方を優先する。
 なので、臨時講師以外で予備校の専任講師になる人はかなり少なかった。
 怪我の後遺症で引退したとか、自分の実力の限界を感じて安定した第二の人生を考えたか。
 いい先生は多いんだけど。
 おかげで王都出発前のリッドたちは、普段の座学の講義は普通に受けていたけど、実技は、ヴェルたちパーティと模擬戦をする羽目になっていたからな。

「リッドの坊主とミュウとラトの嬢ちゃんは、空いている時間にワーレンが教えてくれるそうだ」
「リッドの坊主とミュウの嬢ちゃんは、空いている時間にワーレンが教えてくれるそうだ」

 ワーレンさんは、師匠から魔力の扱い方の基本を習っていた練達の魔法剣の使い手である。
 しかもその腕前で、近衛騎士隊の中隊長にまでなっているので、リッドとミュウとラトの剣の師匠としては適任であろう。
 しかもその腕前で、近衛騎士隊の中隊長にまでなっているので、リッドとミュウの剣の師匠としては適任であろう。

「イザベルの嬢ちゃんにも近衛騎士団に槍術の達人がいるから紹介してくれるそうだ」

「私は?」

「ハクカの嬢ちゃんにも、いい師匠が付く予定だ」

 中核都市とはいえ南部の辺境にある予備校よりも、王都の方がなにを習うにしても有利なのは確かである。
 だが、わざわざ俺たちにそこまで恩を売るために、ブライヒレーダー辺境伯様から王都留学の許可を得た人物には、いったいなんの得があるのであろうか?

 思わず、考え込んでしまう。

「今回の件は、陛下が絡んでいるのさ。だから、お館様としては許可をするしかない」

 ブランタークさんの説明によると将来有望そうな俺たちに今の内に恩を売って唾を付けておこうということらしい。
 貧乏騎士爵家の末っ子だったので王宮ではまったくのノーマークであった俺たちが、竜を二匹も倒して男爵になってしまった。
 当然、どの貴族も己の派閥に取り込もうと考えるが、ブライヒレーダー辺境伯家の縄張りであったせいで横槍を入れるわけにはいかなかった。
 当然、どの貴族も己の派閥に取り込もうと考えるが、寄親になる権利には、実家がブライヒレーダー辺境伯家の寄子であったせいで横槍を入れるわけにはいかなかった。
 次に、不慣れな王都に滞在するのでそこで手を貸せばという思惑も、元々俺がザフト騎士爵家に婿入りするローラン兄さんの結婚式に出席するために来ていたせいで駄目になっていた。
 下級ながらも代々財務系の役人であったザフト騎士爵家は、財務卿であるルックナー侯爵や同じく財務閥のモンジェラ子爵の寄子であったので、彼らの指示を受けて俺たちの世話をしていたようだ。
 ローラン兄さんからは、王都滞在中は宿泊先や食事は面倒を見ると言われていたのだが、これ幸いにとザフト騎士爵家に金を出して援助をしていたらしい。

「竜が倒せる魔法使いは貴重だからな。みんな、縁を結びたいわけだな。とにかく、十五歳になるまでお前たちは王都で勉学と鍛錬に励めや」

 これは、決定事項であるようだ。
 いくら多少人より魔法が得意でも個人が国や権力に逆らうのは難しい。
 別に理不尽な扱いというわけでもないし、今は成人して正式に冒険者デビューをするまで陛下の好意に甘えることにしよう。
 俺は、そのように考えていた。

「新婚のザフト家に長々と滞在するのもまずいからな。適当に家は準備しておく」



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