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「ファブレ準男爵家諸侯軍ですか?」

「僕も急すぎる話だと思ったし、正直なところ大丈夫かなって思ったんだけど、これを編成しないと色々と面倒なことになるんだ」

 ルークが王国からの命令により、王都郊外の軍駐屯地へと連れ去られた翌日。
 朝食の席で、ローランさんが話を切り出してきた。
 その内容は、私たちを中心に諸侯軍を編成するというものであった。

「突然な話ですね」

「本当に急なんだけど、編成しないと収まりがつかなくてね」

 そう言いながらローランさんがリビングのカーテンを開けると私たちが居候をしているザフト騎士爵邸の外には多くの人たちが集まっていた。

「仕官希望者ですか?」

「いや、そちらはほとんどいない」

 ここ数日で、私たちの存在が広まったせいだとローランさんが説明してくれた。
 一部例外を除いて、押し掛け仕官行為や妾押し掛け行為は激減している。
 その代わりに今度は『陣借り』希望者が増えたそうだ。

「陣借りですか?」

 初めて聞く言葉なので、私は思わず首を傾げてしまう。

「まずは、ルークがどんな用件で王国政府に呼ばれたのかだけど……」

 これは、ローランさんの寄親であるモンジェラ子爵から連絡がきたそうだ。
 王国で一番偉い人が、王都に近い魔物の領域を開放すべく、そこを支配する老属性竜の退治をルークにも命じた。
 他のメンバーは、王国筆頭魔導師、ヴェル、ブランターク様のようだ。

「4人で属性竜を討ち。その後、王国軍と冒険者有志で統率がとれなくなった魔物を殲滅していく作戦のようだね」

 作戦に参加する主力は、王国軍王都駐留軍から選ばれた精鋭だとローランさんが教えてくれた。
 残りは冒険者ギルドに募集を出し、自信のある冒険者たちのみが参加することになったそうだ。

「なにかが足りないと思わないかい?」

「そういえば……」

 ここ二百年以上も戦争はなかったけど、王国が戦争をする際には、王国軍の他に指名された貴族が諸侯軍を編成して参加するのが普通だった。

「そう。王都周辺にも所領を持つ貴族たちはいるのに、なぜか彼らには動員命令がこなかった。理由はわかるかな?」

「ええと……。戦功を挙げた際に渡す褒賞のせいですか?」

「正解だよ」

 王国が広大な穀倉地帯を直轄地として得るために、今回の作戦は決行される。
 もしその作戦に多くの貴族たちが参戦して、それぞれに戦功を挙げてしまったら、褒美として領地を与えることも考慮しなければならないというわけだ。

「王国軍にも貴族たちはいるけど、当主以外か、当主でも法衣貴族ばかりだしね」

 法衣貴族なら、戦功に対する褒美は勲章と昇進と金銭で済ますことが可能だからである。
 元々貴族としてよりも王国軍人として出陣する名目の方が高いから、それで問題はないみたい。
 もし貴族でない人が大きな功績を挙げたら、一代限りの階位(11位〜13位)を与えるか、法衣貴族への襲爵と金銭で済ませられるからだ。
 冒険者に至っては、最初から倒した分だけの出来高払いなのでそういう問題はないようね。

「でも、本来の所領から離れた飛び地なんて欲しいのかね?」

「次男や弟や他の一族に相続させてしまえばいいからね。領地の分割なら、王国政府はその貴族が損をすると考えるから反対はしないのさ」

 なるほど。
 継承争いの緩和と一族の発展という点から考えても、悪くない考え方ではあるわけね。

「あれ? ルークは貴族枠での参加だよね?」

 ハクカが疑問を口にした。
 王国の法で、未成年者が魔物の領域に入ることは禁止とされている。
 今回、未成年者であるルークが動員されたのは、貴族が戦争で借り出される際に当主が何歳でも問題はないという法の穴を突かれたからだ。

「そう、ルークは貴族の枠で参加しているのさ」

 貴族が動員されるわけだから、当然その貴族が兵を率いても構わないわけね。

「相手が属性竜だから、当然諸侯軍は別行動だろうけどね」

「せっかく兵を集めても竜のブレスで消し炭にされたら意味ないよね」

 当主は最前線で属性竜と戦い、諸侯軍は後方で魔物と戦う。
 そういう役割分担になるそうだ。

「王宮筆頭魔導師様は男爵だけど、彼は陛下の個人的な親友で一番信用されている家臣だそうだ。当然、陛下の意図は読むはず」

 空気を読まないで、男爵でもある彼が堂々と諸侯軍を編成して繰り出してくるという可能性はないらしい。
 少なくともローランさんの寄親であるルックナー財務卿は、彼が軍勢を集めている事実を確認をしていないそうだ。

「王宮筆頭魔導師様は法衣貴族だからね。そう簡単に軍を編成可能な兵士たちなんて揃えられないさ」

 これは、ブランターク様の派遣要請に答えたブライヒレーダー辺境伯様も同様であった。
 王都に屋敷は維持しているのだけど、人員は数名の常駐家臣と警護の兵士に、そして屋敷を維持する使用人のみ。
 これでは、諸侯軍など編成できるわけないわ。
 王国側としても、ブライヒレーダー辺境伯様に諸侯軍など出されても困るだけだろうし、だからブランターク様だけを借りたみたい。

「ブライヒレーダー辺境伯様の諸侯軍に参加を認めると他の辺境伯たちがうるさいいからね」

『うちも!』となるのは、当然の結末とも言えた。

「それで、最後に残ったのがルークとヴェルなのね」

 陛下は、ルークとヴェルに単身で来いとは一言も言わなかったそうだ。
 となると、ルークとヴェルだけは軍勢を率いてもいいという解釈も可能とも言える。

 準男爵になったばかりでの突然の出陣命令で、まだ家の体裁など整えてはいないと高を括ったのか?

 それとも、わざとなのかしら?

 そこで最初の陣借りに戻るのだけど、貴族の子弟や浪人たちなどが一時的にファブレ準男爵家軍に籍を置き、そこで活躍をして経歴に箔を付けるか感状を書いてもらう。

 これが、陣借りと呼ばれる制度であった。
 制度というのは、相応しくないかもしれないわね。
 王国側とて、動員された貴族たちの諸侯軍が少ないと戦力にならないので、半ば黙認されているというのが正しい解釈みたい。

「陣を借りる側は、員数合わせに協力する見返りに戦功と名誉と褒賞をいただくってわけだ」

 今回のケースでは、陣を借りた者たちが魔物を狩って、どの程度の戦功(討伐数)を立てたのかを、感状にして出してもらう。
 大活躍をすれば、他家に仕官する際に紹介状と共に感状は有効な採用ポイントとなる。

 逆にファブレ準男爵家側のメリットは、少なくとも軍勢の数で恥をかかないで済むという点だ。
 動員中の食住の面倒はファブレ準男爵家持ちだけど、武具などは陣借りする側が自前で準備するのが決まりで、戦死、戦傷した際も一度の見舞い金で済む。

 安めに軍勢の数を揃えるという点において、これほど便利な制度はないってことね。

「ですが、諸侯軍を編成するって言われても……」

 冒険者としての将来を期待されているとはいえ、十二歳の少年少女4人に、ベテランも多い陣借り希望者をメインにした軍の編成と運営などまず不可能ね。

 困っているとローランさんが助け舟を出してくれたというわけ。

「そこで僕の出番らしいね。寄親たちに言われたさ」

 竜殺しの英雄にして、準男爵家を立ち上げて初の動員。

 ここでルークに恥をかかせるのは、同じ王国貴族としてどうなのか?

 という建て前の元、ルックナー財務卿やモンジェラ子爵が、ブライヒレーダー辺境伯様を差し置いて恩を売るための策なのは、今さら言うまでもないわ。

「名目上の代将は、従士長であるリッド君に任せるとして」

 このファブレ準男爵家諸侯軍は、出征期間中は主将であるルークとは合流できないみたい。
 そこでリッドを代将として、私とミュウとハクカとラトも諸侯軍の幹部に名を連ねる。
 そこでリッドを代将として、私とミュウとハクカも諸侯軍の幹部に名を連ねる。
 ローランさんが、陣借り者たちとの契約交渉、必要な資金や物資の管理、王宮や役所などへ提出する必要な書類などの作成と数多ある事務的なお仕事を、すべてやってくれるみたい。

「僕の名目は、ファブレ準男爵家諸侯軍の参謀と副将扱いかな? 腕っ節はまるで駄目だから、後方支援専門ということでよろしくね」

 もうすでにルークの元を尋ねて必要な資金も貰っているそうだ。
 さすがはローランさん。

「ですがローランさんは、ザフト騎士爵家の当主では?」

 同じ貴族同士なので、一方の下に入ってしまうのは問題のような気がしたのだ。

「僕はまだ跡取りだから大丈夫。爵位はまだ義父が持っているから」

 それなら問題はないけど、多分このために結婚後に行われる予定であった爵位継承を遅らせたのであろう。
 主に、ルックナー財務卿からの要請だと思うけど、貴族の爵位継承は、現の当主が生きている間でも死後でもどちらでもいいみたい。
 ただ、中央の法衣貴族は生前継承が大半で、領地持ち貴族は死後継承が大半。
 なぜ違いがあるのかわからないけど、ただ昔からそうだからとしか言いようがなかった。
 法衣貴族は役職持ちが多いので、その役職を自分が老齢でこなせなくなる前に後継者に譲るという理由というか説が存在しているって聞いたくらい。

 なお、生前に後継者に当主の座を譲ったあとも、先代も隠居前の爵位と同じ扱いを受ける。
 年金が出ないけど、公の場での扱いが、たとえばトガー様だと騎士爵位持ちと同じ扱いになるわけね。
 一種の名誉爵位だと思うと、わかり易いのかもしれない。
 『引退したジジイをぞんざいに扱うな!』という、年寄りの本音も見え隠れもするけど。

「では、問題ないですね」 

「うん、結婚直後で物入りなのでありがたい」

 当然、ローランさん一人では回らない。
 そこで、ルックナー財務卿とモンジェラ子爵が出てくるわけだ。
 彼らが紹介する財務閥に所属する貴族の子弟。
 ローランさんの職場の後輩たちなども休職して後方支援で手助けをするみたいね。

「休職ですか? 大丈夫でしょうか?」

「全然問題ないから。むしろ戦功が付くからありがたがられる」

 休職の許可を出すのは、ルックナー財務卿なので文句など出るわけがない。
 休職の許可を出すのは、ルックナー財務卿とモンジェラ子爵なので文句など出るわけがない。
 休職中の給料は出ないけど、それはローランさんがルークから預かった予算で戦陣手当て込みで出す予定で収入は増える。
 職場の査定は、いくら財務系の役人でも貴族なので戦場経験があった方がいいに決まっているわ。
 長くても月単位でしかない休職など、出世の不利になるはずもなかった。

「希望者が多くてね。先輩を断るのは大変だったよ」

 自分が実質ナンバー2になる諸侯軍に、職場の先輩が部下で入るとやり難い。
 そんな理由で、ローランさんは助っ人をすべて後輩で固めたそうだ。
 その助っ人の中には、ラトの兄でもあるアランもいるそうだ。
 モンジェラ子爵が寄越す人材は、最初から言い含められているので問題はないみたい。

「お兄様がですか?」

「そう、ラト嬢がいることでアラン君はファブレ準男爵家の幹部に昇格しているし、後方支援の文官だとNO.2に位置するね。使える後輩で助かっているよ」

「お兄様を評価していただきありがとうございます」

 ラトが頭を下げてお礼を言った。

「次にラングレー公爵様だけど……」

 王都の屋敷から後方支援担当の11名の文官、屋敷の警備隊長と10名のベテラン警備兵を寄越すそうだ。
 その理由は、婚家でもあるルークの手助けをしたいからだそうだ。

「随分、健気な理由ですね?」

「本音のところは、ルークが簡単に婚約破棄できないように手を打ったと言うのが正しいかもしれないね」



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