「聞きましたか?」
「なにをです? デイジーさん」
「竜殺しの英雄の噂ですわ」
「王都で知らない人はいないと思いますけど……それがなにか?」
これだから、下級貴族の小娘は、竜を二匹も倒し、パルケニア草原解放の大功労者として男爵に序されたバウマイスター男爵様とファブレ男爵様。
言うまでもなく、誰が彼の正妻となるか、王都の貴族令嬢たちが色めき立っているところ。
ですが、その答えは言うまでもありません。
「バルトハウト伯爵家の令嬢である この私デイジーこそが、バウマイスター男爵様の妻に相応しいのです」
「あの……バルトハウト伯爵家って、農務閥だからバウマイスター男爵様とツテすらないのでは? エリーゼさんは治癒魔法使いとして従軍しましたから、戦場でお会いになっているかも」
「そのような縁がなくても、きっとバウマイスター男爵様は私を選ぶはずですわ」
「(……その自信の根拠はどこに?)」
「なにかおっしゃいましたか?」
「いえ。あっでも、バウマイスター男爵様は実家がブライヒレーダー辺境伯家の寄子ですから、そちらの線で奥様が決まるのではないですか。エリーゼさんなら、見初められる可能性も高いですけど……」
「エリーゼがバウマイスター男爵様に見染められて、私は駄目だとおっしゃるのですか?」
「そんなことはないんですけど……あっ!」
「どうかしましたか?」
「あそこ! 噂をすれば!」
まさか、噂のバウマイスター男爵様がここにいらっしゃるとは!
「ホーエンハイム枢機卿と一緒ですわね……」
「寄付にいらっしゃったのでは? バウマイスター男爵様はパルケニア草原にご参加なされたのですから、教会の治癒をバウマイスター男爵家がお受けになってもおかしくありませんし、そのお礼ではないでしょうか」
「なるほど」
なら、あのホーエンハイム枢機卿と一緒にいても仕方がないですわね。
まさか彼も寄付の席で自分の孫娘をバウマイスター男爵様に紹介しないでしょうから。
「となるとバウマイスター男爵様はこの教会で一番美しい私に釘付けになるはず。そして……」
私に魅かれたバウマイスター男爵様が、父に『娘さんを私にください!』と挨拶に……。
「(その自信の根拠はどこから……)」
「なにかおっしゃいましたか?」
「いいえ、そうなるといいですね」
寄付を終わって、バウマイスター男爵様が大聖堂から出て来たところで私が視界に入るようにし、さり気なくアピールすることにしましょう。
「ホーエンハイム枢機卿、バウマイスター男爵様をお茶にでも誘うようですね」
「無駄なあがきを」
なぜなら、本聖堂から出てきたバウマイスター男爵様は、この私を見てしまったから。
「きっと今頃、『あの美しく高貴な令嬢は誰か?』と、ホーエンハイム枢機卿に聞いているところですわ」
そして、私の正体を知ったバウマイスター男爵様は……。
「(もうなにがなんだか……。あっ、でも! お茶って! エリーゼさん!)」
「なにかおっしゃいましたか?」
「いいえ、確かにバウマイスター男爵様はデイジーさんを見ていましたからね」
「そうでしょうとも」
まさか、こんなにも早く私の旦那様が決まってしまうとは。
いつでもバウマイスター男爵様様に嫁げるよう、今から準備をしないといけませんわね。
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「なにをです? デイジーさん」
「竜殺しの英雄の噂ですわ」
「王都で知らない人はいないと思いますけど……それがなにか?」
これだから、下級貴族の小娘は、竜を二匹も倒し、パルケニア草原解放の大功労者として男爵に序されたバウマイスター男爵様とファブレ男爵様。
言うまでもなく、誰が彼の正妻となるか、王都の貴族令嬢たちが色めき立っているところ。
ですが、その答えは言うまでもありません。
「バルトハウト伯爵家の令嬢である この私デイジーこそが、バウマイスター男爵様の妻に相応しいのです」
「あの……バルトハウト伯爵家って、農務閥だからバウマイスター男爵様とツテすらないのでは? エリーゼさんは治癒魔法使いとして従軍しましたから、戦場でお会いになっているかも」
「そのような縁がなくても、きっとバウマイスター男爵様は私を選ぶはずですわ」
「(……その自信の根拠はどこに?)」
「なにかおっしゃいましたか?」
「いえ。あっでも、バウマイスター男爵様は実家がブライヒレーダー辺境伯家の寄子ですから、そちらの線で奥様が決まるのではないですか。エリーゼさんなら、見初められる可能性も高いですけど……」
「エリーゼがバウマイスター男爵様に見染められて、私は駄目だとおっしゃるのですか?」
「そんなことはないんですけど……あっ!」
「どうかしましたか?」
「あそこ! 噂をすれば!」
まさか、噂のバウマイスター男爵様がここにいらっしゃるとは!
「ホーエンハイム枢機卿と一緒ですわね……」
「寄付にいらっしゃったのでは? バウマイスター男爵様はパルケニア草原にご参加なされたのですから、教会の治癒をバウマイスター男爵家がお受けになってもおかしくありませんし、そのお礼ではないでしょうか」
「なるほど」
なら、あのホーエンハイム枢機卿と一緒にいても仕方がないですわね。
まさか彼も寄付の席で自分の孫娘をバウマイスター男爵様に紹介しないでしょうから。
「となるとバウマイスター男爵様はこの教会で一番美しい私に釘付けになるはず。そして……」
私に魅かれたバウマイスター男爵様が、父に『娘さんを私にください!』と挨拶に……。
「(その自信の根拠はどこから……)」
「なにかおっしゃいましたか?」
「いいえ、そうなるといいですね」
寄付を終わって、バウマイスター男爵様が大聖堂から出て来たところで私が視界に入るようにし、さり気なくアピールすることにしましょう。
「ホーエンハイム枢機卿、バウマイスター男爵様をお茶にでも誘うようですね」
「無駄なあがきを」
なぜなら、本聖堂から出てきたバウマイスター男爵様は、この私を見てしまったから。
「きっと今頃、『あの美しく高貴な令嬢は誰か?』と、ホーエンハイム枢機卿に聞いているところですわ」
そして、私の正体を知ったバウマイスター男爵様は……。
「(もうなにがなんだか……。あっ、でも! お茶って! エリーゼさん!)」
「なにかおっしゃいましたか?」
「いいえ、確かにバウマイスター男爵様はデイジーさんを見ていましたからね」
「そうでしょうとも」
まさか、こんなにも早く私の旦那様が決まってしまうとは。
いつでもバウマイスター男爵様様に嫁げるよう、今から準備をしないといけませんわね。
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