「そういえば、リッドは?」
「陣借り者の面接」
面接とはいえ、陣借り者などは強くなければ使い道がない。
リッドと手合わせをして、残り2人の指揮官と普通に面接を行う。
ちなみに、その2人の指揮官とはローランさんが助っ人を頼んだ二人のお兄さんであった。
「とにかく寄せ集めだから、ある程度の指揮官は必要だよね」
というわけで、王都の警備隊で10名の兵士を指揮しているオットーさんとカールさんであった。
休職の問題も、今回の出兵にはエドガー軍務卿が絡んでいるので文句など出るわけがない。
直属の上司にお伺いを立てたら『頑張って来い』と言われ、20名ほどの貴族家出身の兵士たちを付けられたそうだ。
彼らもオットーさんやカールさんと一緒に陣借り者の面接の手伝いをしている。
「幸いにして、予算はルークからたっぷり出ている。期限までには、形にはなるかな」
「ルークは、いくら預けたんです?」
「白金貨百枚」
「かなりのお金ですよね?」
「大金ではあるけどね。1ヶ月の戦闘前提の軍事行動で1000名ほど動かせるかな」
「1000名は多いですよね」
「まあ・・・そうだね」
ファブレ準男爵家諸侯軍は、後方支援者も入れて300名以内に収める予定になっている。
諸侯軍と呼ばれてはいるけど、実質はファブレ準男爵家軍という器に、陣借り者たちと他家が助っ人を送っているだけなのだから当然ね。
あまりに人数が多いと『新興の準男爵風情が……』と騒ぐ貴族が出てくるし、集めた諸侯軍を統率できなければ、これも貴族としての資質を問われてしまう。
だいたい、ルークから預けられた予算が多すぎるのよ。
「ちゃんと帳簿は付けているし、余ったら返せばいいよ。それに、陣借り者たちも安心して魔物を狩れるというものさ」
ちゃんと活躍すれば褒賞をケチらない、素晴らしい貴族様だというアピールにもなるからだ。
今回は魔物の討伐なので、褒賞は倒した魔物の数に比例する契約になっている。
ないとは思うけど、沢山倒しすぎて褒賞が不足する事態はないという安心感にも繋がるわけね。
「準男爵で、300名は多いですね」
普通の法衣準男爵だと30名の諸侯軍編成でアップアップなのが現実だ。
陣借り者を含めてこの数字なので、人を雇うととにかく金がかかることがよくわかる。
領地持ちだと領内の男手を動員可能なので、同じ爵位でももう一つ桁が上がるそうだけど。
ただ、いくら動員可能とはいえ、働き手として税を納める領民を徴用しすぎた結果、戦争後に借金だらけになる貴族も昔は多かったみたい。
領内の田畑に手をかけられない分収穫が落ち、戦死、戦傷で人手も減るので当然ではあったのだけど。
「このくらいの数にしないと参加できない人が多すぎて不満が出るんだ」
「まさに、寄り合い所帯……」
「諸派閥混成部隊だね。よく言ってだけど」
ローランさんの認識は、的を得ているとしか言いようがなかった。
一族枠で、兄三人とその知己や部下たち。
ルークの寄親を狙っているルックナー財務卿やモンジェラ子爵様。
エドガー軍務卿ですら、ルークの兄二人の休職を認めて助っ人まで送っているのだ。
「みんな、竜殺しの英雄と縁を繋ぎたいわけだね」
陣借り者たちも、活躍して仕官狙いまではいかなくても、動員された諸侯軍なので目立つという利点がある。
そこで得た感状は、国が認めた戦争なので他の貴族が出す感状よりも効果があると思っているのであろう。
この人数まで絞るのに、本当に手間がかかっているのよ。
「面倒な話ですね」
「ルークが一番そう思っていると思うよ。さて、人員は揃ったから役割分担を決める会議に、必要な食料などの物資も購入しておかないと。アルテリオさんに連絡を取るかな」
実務は、ローランさんが上手く回してくれるみたい。
できることは手伝うけど、今の私たちは十二歳の子供でしかない。
それでも、名目上はルークの4人しかいない正式な家臣である。
「必要な時に、偉そうに指定された場所に立っていてね。言い方が悪いけど」
予想はしていたけど、お飾りということなのね。
いきなり実務をすべて振られても困るから、文句はないのだけど。
「それとハクカとミュウには別に仕事があってね」
「仕事ですか?」
「2人には、けが人が出た際に治癒してもらうからね」
「はい」
「後は、ルークから、討伐した魔物の回収をハクカに任せるそうだ」
「はい」
「あと、もう一つ仕事があるんだ」
「もう一つって、なんですか?」
「怪我は治せるにしても、死なないでね。私と兄たち二人に、君たち4人は死ぬことが許されないから」
対魔物ではあるが、これは戦争なのだ。
当然、死者が出る可能性が高いわけだけど、ローランさんと二人のお兄さん、私たち4人は死ぬのは禁止らしい。
「可哀想だけど、死ぬのは陣借りしている人たちが先」
上が詰っているので、彼らは命をかけて戦って評価を得る必要がある。
その話をローランさんから聞いた時に、自分たちは相当に恵まれた環境にいるのだなと実感してしまう。
「今は、できることを精一杯にですか」
「そうだね。金勘定だけの僕が言うのもなんだけど……」
それから13日後。
大慌てで準備をファブレ準男爵家諸侯軍366名とバウマイスター準男爵家諸侯軍366名は、王国軍パルケニア草原方面派遣軍と合流して戦場へと赴くのであった。
「我が必殺の槍術大車輪!」
緑の髪の青年が槍を振り回し魔物を多数攻撃していた。
「魔物狩りてぇ!」
「そうよね」
「リッド君とイザベルちゃんは抑えてね」
私たちが動きたそうとしたらセイさんが諌めてくれた。
セイさんは、ミュウが心配だからファブレ諸侯軍に入ってくれた。
「けが人はこっちですよ・・・治癒」
ハクカが治癒すると重傷者が簡単に治っていく。
「ハクカの治癒能力は高いよね・・・治癒」
ミュウが軽傷者を数秒で治していく。
ミュウとハクカは、けが人の治療とルークから預かったポーション類を使ってけが人の治療と魔物たちの回収と大忙しのようだ。
セイさんは、ハクカとミュウに近づこうとしている魔物たちから順番に
「アクアパレット」
水の刃で倒していた。
この諸派閥混成軍こと、『各貴族の思惑一杯軍』は、なんとか無事に機能することができたのであった。
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「陣借り者の面接」
面接とはいえ、陣借り者などは強くなければ使い道がない。
リッドと手合わせをして、残り2人の指揮官と普通に面接を行う。
ちなみに、その2人の指揮官とはローランさんが助っ人を頼んだ二人のお兄さんであった。
「とにかく寄せ集めだから、ある程度の指揮官は必要だよね」
というわけで、王都の警備隊で10名の兵士を指揮しているオットーさんとカールさんであった。
休職の問題も、今回の出兵にはエドガー軍務卿が絡んでいるので文句など出るわけがない。
直属の上司にお伺いを立てたら『頑張って来い』と言われ、20名ほどの貴族家出身の兵士たちを付けられたそうだ。
彼らもオットーさんやカールさんと一緒に陣借り者の面接の手伝いをしている。
「幸いにして、予算はルークからたっぷり出ている。期限までには、形にはなるかな」
「ルークは、いくら預けたんです?」
「白金貨百枚」
「かなりのお金ですよね?」
「大金ではあるけどね。1ヶ月の戦闘前提の軍事行動で1000名ほど動かせるかな」
「1000名は多いですよね」
「まあ・・・そうだね」
ファブレ準男爵家諸侯軍は、後方支援者も入れて300名以内に収める予定になっている。
諸侯軍と呼ばれてはいるけど、実質はファブレ準男爵家軍という器に、陣借り者たちと他家が助っ人を送っているだけなのだから当然ね。
あまりに人数が多いと『新興の準男爵風情が……』と騒ぐ貴族が出てくるし、集めた諸侯軍を統率できなければ、これも貴族としての資質を問われてしまう。
だいたい、ルークから預けられた予算が多すぎるのよ。
「ちゃんと帳簿は付けているし、余ったら返せばいいよ。それに、陣借り者たちも安心して魔物を狩れるというものさ」
ちゃんと活躍すれば褒賞をケチらない、素晴らしい貴族様だというアピールにもなるからだ。
今回は魔物の討伐なので、褒賞は倒した魔物の数に比例する契約になっている。
ないとは思うけど、沢山倒しすぎて褒賞が不足する事態はないという安心感にも繋がるわけね。
「準男爵で、300名は多いですね」
普通の法衣準男爵だと30名の諸侯軍編成でアップアップなのが現実だ。
陣借り者を含めてこの数字なので、人を雇うととにかく金がかかることがよくわかる。
領地持ちだと領内の男手を動員可能なので、同じ爵位でももう一つ桁が上がるそうだけど。
ただ、いくら動員可能とはいえ、働き手として税を納める領民を徴用しすぎた結果、戦争後に借金だらけになる貴族も昔は多かったみたい。
領内の田畑に手をかけられない分収穫が落ち、戦死、戦傷で人手も減るので当然ではあったのだけど。
「このくらいの数にしないと参加できない人が多すぎて不満が出るんだ」
「まさに、寄り合い所帯……」
「諸派閥混成部隊だね。よく言ってだけど」
ローランさんの認識は、的を得ているとしか言いようがなかった。
一族枠で、兄三人とその知己や部下たち。
ルークの寄親を狙っているルックナー財務卿やモンジェラ子爵様。
エドガー軍務卿ですら、ルークの兄二人の休職を認めて助っ人まで送っているのだ。
「みんな、竜殺しの英雄と縁を繋ぎたいわけだね」
陣借り者たちも、活躍して仕官狙いまではいかなくても、動員された諸侯軍なので目立つという利点がある。
そこで得た感状は、国が認めた戦争なので他の貴族が出す感状よりも効果があると思っているのであろう。
この人数まで絞るのに、本当に手間がかかっているのよ。
「面倒な話ですね」
「ルークが一番そう思っていると思うよ。さて、人員は揃ったから役割分担を決める会議に、必要な食料などの物資も購入しておかないと。アルテリオさんに連絡を取るかな」
実務は、ローランさんが上手く回してくれるみたい。
できることは手伝うけど、今の私たちは十二歳の子供でしかない。
それでも、名目上はルークの4人しかいない正式な家臣である。
「必要な時に、偉そうに指定された場所に立っていてね。言い方が悪いけど」
予想はしていたけど、お飾りということなのね。
いきなり実務をすべて振られても困るから、文句はないのだけど。
「それとハクカとミュウには別に仕事があってね」
「仕事ですか?」
「2人には、けが人が出た際に治癒してもらうからね」
「はい」
「後は、ルークから、討伐した魔物の回収をハクカに任せるそうだ」
「はい」
「あと、もう一つ仕事があるんだ」
「もう一つって、なんですか?」
「怪我は治せるにしても、死なないでね。私と兄たち二人に、君たち4人は死ぬことが許されないから」
対魔物ではあるが、これは戦争なのだ。
当然、死者が出る可能性が高いわけだけど、ローランさんと二人のお兄さん、私たち4人は死ぬのは禁止らしい。
「可哀想だけど、死ぬのは陣借りしている人たちが先」
上が詰っているので、彼らは命をかけて戦って評価を得る必要がある。
その話をローランさんから聞いた時に、自分たちは相当に恵まれた環境にいるのだなと実感してしまう。
「今は、できることを精一杯にですか」
「そうだね。金勘定だけの僕が言うのもなんだけど……」
それから13日後。
大慌てで準備をファブレ準男爵家諸侯軍366名とバウマイスター準男爵家諸侯軍366名は、王国軍パルケニア草原方面派遣軍と合流して戦場へと赴くのであった。
「我が必殺の槍術大車輪!」
緑の髪の青年が槍を振り回し魔物を多数攻撃していた。
「魔物狩りてぇ!」
「そうよね」
「リッド君とイザベルちゃんは抑えてね」
私たちが動きたそうとしたらセイさんが諌めてくれた。
セイさんは、ミュウが心配だからファブレ諸侯軍に入ってくれた。
「けが人はこっちですよ・・・治癒」
ハクカが治癒すると重傷者が簡単に治っていく。
「ハクカの治癒能力は高いよね・・・治癒」
ミュウが軽傷者を数秒で治していく。
ミュウとハクカは、けが人の治療とルークから預かったポーション類を使ってけが人の治療と魔物たちの回収と大忙しのようだ。
セイさんは、ハクカとミュウに近づこうとしている魔物たちから順番に
「アクアパレット」
水の刃で倒していた。
この諸派閥混成軍こと、『各貴族の思惑一杯軍』は、なんとか無事に機能することができたのであった。
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