様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「おっ、もう戻って来たのか」

「貴族に叙任されたって本当?」

「緊張のあまり、陛下の前で失敗しなかった?」

 ザフト家の面々と話をしていると屋敷の奥からリッドたちが姿を見せる。
 どうやら彼らも俺が王城で爵位を受けた事実を知っていたようであった。

「双竜勲章と第9位準男爵だってさ」

「マジか・・・将来は、安泰だな」

「ああ・・・そうだな」

「将来は安泰かもしれませんがルーク殿、ご友人の方々を雇われた方がよろしいかと」

「どうしてですか?」

「ルーク殿は、無役ながらも準男爵になりました」

 その年金は、年に金板3枚。
 しかも、今の俺は王都に屋敷すら維持していないし、当然人など誰も雇っていない。 

「ルーク度が二百年ぶりに双竜勲章を受けたのと準男爵に叙された件は、もう王都中に広まっていますので……」

 当然、現在絶賛無職・ニート中の貴族の子弟たちが家臣にしてほしいと売り込みを開始するだろうし、平民の子弟なども護衛や召使いなどで雇ってほしいと押しかける未来が容易に想像できるわけだ。

「王国も簡単に貴族家は増やせませんし」

 王都にいる法衣貴族家の半数が、ただ年金を貰うニートというのが現実なのだ。
 年金の額は知れているとはいえ、それでも誰も表立っては口にしないが、ただの無駄飯喰らいであると納税者である平民たちからは思われている。

 なので、そう簡単に貴族は増えない。
 逆に減るケースとしては、いよいよもって養子の当てすらなく断絶してしまう場合。
 ただこれは、滅多にないらしい。
 どこかに爵位を継承可能な遠い親戚がいるケースが大半で、むしろ候補者たちが醜く争うケースの方が圧倒的に多いそうだ。

「それで刃傷沙汰になって、継承の話が消えるケースもありましたねぇ……人間の欲とは怖いものです」

「……」

 次に、爵位を取り上げられるほどの犯罪を犯したケース。
 ただこの件も大物貴族は収賄などがあっても誤魔化してしまうケースが大半で、収賄なので罰金込みの弁済で済ませてしまうケースも多い。

 たまに貴族のドラ息子が平民を殺してしまうケースがあるのだが、これも示談という形で遺族に大金を積んで終わりという解決方法が多いそうだ。

「たまに運悪く派閥間抗争の槍玉に挙げられて厳罰に処される間の悪い貴族もいますけどね」

 ただこれも、滅多にないらしい。
 あまりやりすぎると自分にブーメランとなって跳ね返るかもしれないからだ。

「貴族家が増える理由も同様です。まずは、ルーク殿のように比類ない功績を挙げた場合」

 ただこれも、今は戦争がなくなっているのでほぼ絶望視されている。
 たまに発生する領地境での争いで無双をしても、それで王国から賞賛されるわけでもない。
 マイナスをゼロにしても評価が上がるわけもないからだ。

「その兵士なり家臣を雇っている貴族自身が、普通に褒賞を出せば済む話ですので」

 あとは、自分で未開地を開拓してそこの領有権を王国に認めてもらうことであろうか。
 俺の実家であるファブレ騎士爵家がこれに当たる。

「ある意味前向きな方法ですが、これもなかなかに大変ですからね」

 人を集めてなにもない土地を切り開き、そこで税収をあげられるようにする。
 言うは易しだが、行うは難しだ。
 それにもし成功しても近場のどこの大物貴族の寄子になるしかないとか隣接してしまった領主と利権などで争いになったりと未開地の開発に成功しても、そのあともかなり苦労するというわけだ。

「王国は便宜上騎士爵を与えますけど、村一つで人口百名以下なんて話も珍しくないですね」

 そう簡単に内政王になって、領地が急速に発展なんていう美味しい話はないようだ。

「そんなわけで、ルーク殿の元には明日から人が殺到する可能性があります」

 仕官希望の貴族の子弟、雇って欲しい平民の子弟。
 そして、娘や妹を嫁にしてほしいと頼み込む貴族や妾にして欲しいと頼み込む商人や平民など、俺は、それを考えるだけで頭が痛くなってきた。

「そこで、ご友人方を形式だけでも家臣にしてしまうのです」

 同じ冒険者志望であるし、パーティメンバーなので、現在新ファブレ準男爵家の仕事などないので、報酬を払う必要もないからだ。

「ハクカ、リッド、ミュウ、イザベルの4人はいいのか?今のところ、頼む仕事はないけどな」

「うん」

「いいぜ」

「第二の人生に備えての保険になるわよね」

「いいよ」

 もうすでに家臣は確保していると知れれば、無理な仕官をお願いをしてくる人たちは減るはずだ。

「次はパーティについてですな」

「パーティですか?」

「ええ・・・古代竜浄化と準男爵叙勲のパーティを開く必要性がございます」

「・・・面倒だな」

「招待する貴族家は、血縁者と知り合いの貴族ですな」

「知り合いの貴族ですか・・・ファブレ騎士家は、距離とかの関係で無理。マイル騎士家ならクリス姉さんかな。後は、ブライヒレーダー辺境伯とリアかな」

「ブライヒレーダー辺境伯と御知り合いで」

「ええ・・・園遊会でお会いしました」

「なるほど」

「・・・後は、誰だろう」

「ファブレ騎士爵家の寄親のブロワ辺境伯と貴族じゃないけど、知り合いだとオットー兄さんとカール兄さんがいるよ」

「・・・そういえば」

 普通に忘れていた。
 ローラン兄さんが、仕方ないという顔もしていた。
 手紙すらも出さない兄たちやまったくあったこともないブロワ辺境伯のことは俺の記憶だと地平線の彼方に消えていたのだ。

「叙勲したばかりの貴族家ですので、いい方ですな」

 その後は、ローラン兄さんやザフト家の人々と共に夕食を囲み、他にも色々な話をして夜をすごした。
 話の半分ほどが、今日突然貴族家の当主にされてしまった俺に、老練で経験豊富なトガーさんからのアドバイスになってしまって申し訳なかったが、さすがは王都で長年役職に就いていた貴族。



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