様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「すげぇ! まさに絶景だな!」

「さすがは、運賃が金板1枚だけはある。食事はいいものが出るし、マテ茶も茶葉の質が高いもの」

「デザートも美味しいよね」

 俺、ハクカ、リッド、ミュウ、イザベルとリア一行は、王国の計らいにより魔導飛行船の中にいた。

 到着早々。
 古代竜浄化の宴会を魔導飛行船で行い、飲み食いや音楽が流れたりと楽しんだ。

 翌日。
 魔導飛行船の中を探索するために出歩いたり、外の景色を眺めたりしたのだ。
 魔導飛行船の案内をリアがしてくれたおかげで迷わずにすんだ。
 ラウンジに行くと

「どうかしたのか?」

 ルイーゼが紙を前に暗い空気になっていたので、聞いてみた。

「実は・・・」

 イーナが、いいずらそうにしながらも答えてくれた。
 腕相撲で、ヴェルの借金を返そうと企画し、9回連続優勝したところで、魔力持ちの冒険者によって敗退し、借金を背負ってしまったそうだ。本来ならすぐに支払わなければならないお金だが、手持ちのお金がなかったのだ。
 ルイーゼがピンチのところに魔導飛行船が速度を上げ、事情を聞くと古代竜が襲撃。あたりは騒然となり自分に構う暇もないだろうと思い有耶無耶のままに終わらせたと思ったところを魔力持ちの冒険者に捕まり、ラウンジに連行されたのだ。

 そこで魔力もちの冒険者から金貨1枚支払うように訴えられたのだ。

『お金ない』

 この一言で、ルイーゼに勝負を挑んだ面々が激怒したのだ。
 そこで貴族がとりなしを行い

『証文での支払いでいいのでは』

 貴族の提案にルイーゼ以外がほぼ賛成し、証文を取らされたのだ。

『金貨60000枚』

 ルイーゼが当然、抗議をしたのだが、お金なし、途中で逃げ出し、貴族に手間をかけさせた分といわれ、反論できなかったのだ。

「それで・・・」

「ヴェルが様子を見に来て助けようとしたのよ」

「ヴェルにそんな大金あるのか?」

「ええ・・・・アルフレッド様の遺産らしいのよ」

「確かにあってもおかしくはないか。ただ、ヴェルがルイーゼの肩代わりする理由がないよな?」

「・・・・・・」

「ヴェルが最悪、返さなくてもいいといっていたら・・・貴族が借金を0にする代わりに・・・婚約者の受け入れで手を打ちましょうといってきたのよね」

「・・・なるほどな」

「そこでブランターク様が登場して、ブライヒレーダー辺境伯家がルイーゼの肩代わりを申し込んできたのよ」

「貴族たちも受け入れたわけよ」

「とするとあの紙は」

「証文よ」

「・・・王国政府が発行した正式な証文なのよね」



 それから半日後。
 無事に航路を元に戻した魔導飛行船は、ほぼ予定通りに王都へと到着する。
 骨竜のせいで遅れはあったが、そのくらいなら魔導飛行船ではよくあるそうだ。

「いやあ、俺たちまで殿様待遇だったな」

「ブランタークさん、あんなに高い酒を全部飲んでしまって大丈夫なんですか?」

「大丈夫さ。坊主たちは、あのまま古代竜のブレスに焼き落とされるはずだったこの船を救ったんだからな。俺も船の防衛に貢献したしな」

 確かにブランタークさんは、船上で強固な『魔法障壁』を展開して、古代竜のブレスからこの船を守っている。
 なのでこの一日半、俺とハクカ達とヴェルパーティとブランタークさんとリア一行は王国の計らいで、この船の一番豪華な部屋に案内されていたのだ。

 運賃は、通常金板一枚。
 まず政商クラスの大商人か大物貴族しか利用できない超VIPクラス専用の部屋であった。
 室内には豪華な装飾や家具などが配置され、テーブルの上には高価なフルーツなどが籠に盛られている。
 専属のメイドがいて、自由に高級なマテ茶やお菓子などを頼めるし、専用のワインセラーなどがあって自由に酒を飲むことができた。
 俺たちはまだ未成年なので、高価なお菓子や料理メインのノンアルコール状態ですごしていたが、ブランタークさんは箍が外れたように高価なお酒をガブ飲みしていたのだ。

 よく急性アルコール中毒にならないなと俺は思ってしまったのだが、彼はかなり酒に強いようだ。
 二日酔いの兆候すら見せず、朝食を美味しそうにお替りまでして食べていた。

「いいか、坊主たち。王国は、船を救った俺達に心から感謝して部屋を変えてくれたんだ。遠慮なんてしたら、かえって失礼に当たるじゃないか」

「さすがに、あのワインセラーの酒を全部飲んでしまったのは……」

「いやあ、高価な酒を堪能したな。一年分くらいは飲み溜めしたな」

 ブランタークさんの本当なのか嘘なのかわからない見解を軽く聞き流す俺たちであったが、確かに船に乗っている間は船長たちは俺たちを下に置かない丁寧な対応をしてくれたし、今もこうして船を下りる俺たちに対し、わざわざ見送りまでしてくれていた。

「古代竜を討った英雄殿だからな。多少の飲み食いくらいでは、船長は腹を立てないさ」

 なぜか俺たちと行動を共にしているアルテリオさんであったが、彼は王都に本部を置く大規模な商会の当主らしい。
 王宮にも出入り出来るとかで、世間では政商扱いされている人物であった。
 しかも彼は、昔はかなり高名な冒険者で、そのメンバーにはブランタークさんもいたそうなのだ。

「ちなみに、話に出た老火竜を討伐したのは俺たちなんだよ」

「私は、その賞金の分け前で商会を設立したわけだ」

 老火竜の討伐には成功したが、アルテリオさんは冒険者としては致命的で治療不可能な傷を負い、それならばと商人として第二の人生をスタートさせていた。

 ちゃんと成功しているので、今となっては負傷もいい思い出なのだと言っている。

「じゃあ、ブランタークさんはこれが二匹目の竜退治ですか」

「はあ? なにを言っているんだ?」

「ブランタークさんが船を『魔法障壁』で守り、俺たちがその間に聖魔法で成仏させたわけですから、これは共同作業でしょう?」

 ブランタークさんが船を守ってくれなければ、古代竜による毒々しい色のブレスによって魔導飛行船は沈んでいたであろう。
 なので俺は、ブランタークさんにも古代竜の骨と魔石の売却代金を貰う権利があると主張する。

「今回のケースの場合、坊主たちの聖魔法がなければ退治なんて不可能だったじゃないか。俺は自分の身を守ったにすぎない。まあ、エルの坊主たちも船にいたからな。守り賃として、売却益の十分の一だけ寄越せや」

「ですが……」

「と言うかよ。俺は坊主が思っている以上に資産家だし、この年でもう大金なんていらねえんだよ」

 若い頃は超一流の冒険者として荒稼ぎをし、引退後はブライヒレーダー辺境伯家に重臣扱いで迎え入れられたブランタークさんは、その辺の貴族など相手にもならないほどの資産を持っているらしい。

 そのため、今回の褒賞の分け前はいらないと俺たちに伝えていた。

「それにな。俺はお館様から仰せつかった仕事で忙しい身だ。その分坊主たちに負担がくるから、まあ迷惑料だと思え」

「迷惑料ですか?」

「魔導飛行船での厚遇のことから考えると王国で偉い人の対面だろう」

「ルークの坊主は、そこまで分かっているわけか。で、その先がわからないか?」

「さっぱりです」

「・・・アルテリオ、少し面倒を見てやってくれないか?」

「報酬は?」

 そこで報酬というところが、さすがは商人というところであろうか。

「そういえば、お前は商人だったな。俺やアルよりも才能がある魔法使いと知己になれたと思って喜べや」

「まあ、ここで恩を売っておくのも悪くないか」

 アルテリオさんは、納得したように一人頷いていた。

「なあ、あの二人はなにを言いたいんだ?」

「ヴェルとルークが、とてつもない大金を得られるかもしれない。それと関連しているんだろうが……」

「ねえ、ヴェル。王都でケーキでも驕ってよ」

「もう少しすればわかるよ。じゃあ俺はこれで。野暮用があってな」

 ブランタークさんは用事があると言って先に船着場から出て行ってしまった。

「それでどうするの?」

「ここにいても面倒だからローラン兄さんの所の向かうとするか」

 そこに煌びやかな鎧姿の騎士が従者たちと共に現れる。
 鎧の豪華さから見て、その騎士は相当高い地位にある人物だと考えられた。

「陛下よりの言付けにございます。『今回の古代竜退治の儀、ご苦労であった』と。ついては、今より王城にて謁見を行うと」

「(謁見・・・・マジかよ。国が出るのは予想できたがなぜ陛下と謁見・・・・俺に礼儀なんてわからないんだが)」

「……(これが、ブランタークさんの避けた面倒……)光栄の極みにございます。すぐにお伺いいたします」

「ご案内いたします」



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