様々な小説の2次小説とオリジナル小説

 500メートルの距離をわずか25秒ほどの時間で疾走した俺たちは、現場の様子を確認していた。
 そこには俺の予想どおり、予備校の生徒二人が狼に囲まれていたというわけだ。
 一人は槍を持ち、もう一人は、両手に装着した手甲から見て魔闘流のようだ。
 魔闘流とは読んで字の如く、魔力を用いて闘う格闘術である。
 なので当然、ある程度魔力がないと使えない。
 凄腕と称されるには、最低でも初級と中級の間くらいの魔力は必要であった。
 ただ、流派を掲げている家の人間に必ず魔力持ちが生まれる保障もないので、そういう家の人間は技の型や修練方法を伝えるのが目的というのが、世間の常識になっている。

 極めれば、常人並の魔力量でもかなり強くなれるので、習う人は多かった。
 大半の人は、ただ武芸を習っただけという結果に終わってしまうそうだけど、魔力が中級以下で、しかも覚えられた魔法が少なかったり、覚えられた魔法の種類が微妙な人向けというのが世間からの認識であった。
 しかしながら、修行によって魔力の消費効率が上がると少ない魔力で長時間超人のように戦えるので、実は冒険者として歴史に名を残す人が多い流派でもあった。

「なあ、あの二人に見覚えないか?」

「ある」

 それもそうであろう。
 狼の群れに囲まれた二人は、予備校で同じ特待生クラスにいる同級生であったからだ。
 槍を振るっている方は俺たちと同い年で、燃えるような赤い髪を腰まで伸ばし、それを後ろで無造作に纏めている。
 モデルのような体型で、猫のようなイメージを受ける美少女、イーナ・ズザネ・ヒレンブラント。
 彼女の実家は、地元ブライヒブルクで兵士たちに槍術を教える道場を経営していと自己紹介で聞いた。
 名は貴族らしいが、実は彼女の実家は正式には貴族ではない。
 ブライヒブルクの領主ブライヒレーダー辺境伯家から、兵士たちに槍術を教える師範に代々任命されている家臣であった。
 正式な貴族とは、王国から任命された者とその家族だけが当てはまる。
 なので、ブライヒレーダー辺境伯とその家族は貴族だし、うちの実家のような零細騎士でも一応は貴族だ。
 大貴族ともなれば大身の陪臣や親族がいて、その実入りはうちよりも圧倒的に多かったりするのだ。
 それに陪臣でも家を継げない子供たちの悲喜劇は共通だ。
 確か、このイーナ・ズザネ・ヒレンブラントも三女だと自己紹介をしていたはずだ。
 どこかに嫁ぐか、とはいえ陪臣の三女などはまず同じ陪臣の家にも嫁げないのが普通で、ならば己で身を立てるのだと冒険者を目指しているらしい。

 実は、こういう事情で冒険者になる女性はかなり多かった。
 腕っ節があっても軍は女性への門戸がないので、自然と冒険者を目指すようになるのだ。

 もう一人も俺達と同じ十二歳なのに、小さくて下手をすると十歳くらいにしか見えない。
 それでも、魔闘流で特待生になっているので、かなりの腕前ではあるはずの少女。
 水色の髪のショートカットが特徴で少しタヌキ顔ではあったが、とても可愛らしく見えるルイーゼ・ヨランデ・アウレリア・オーフェルヴェークという名前であったはずだ。
 彼女も実家がブライヒブルクで兵士たちに魔闘流を教えていて、ブライヒレーダー辺境伯の家臣だと聞いている。
 イーナと同じく三女で、己の身を立てるために冒険者を目指しているのだと自己紹介をしていたのを思い出した。
 ぶっちゃけ、予備校の特待生クラスにはそういう人間がかなりの割合で混じっているのだけど、当然、普通のクラスにも多数存在する。
 言うほど貴族も楽な商売ではなく、この世もなかなかに世知辛い証拠であった。
 いくら貴族の子供でも、全員を貴族にしていたら、いくら王国の予算や領地があっても足りない。
 なので、枠を外れた子孫は平民へと落ちていく。
 最近では王族でもそういうケースが増えていて、王家に生まれても決して安泰とは言えないのが常識になりつつあった。
 と説明なんてしている暇があるのかと言えば、実はあった。
 リッドが弓を連射し、2頭の狼の頭に突き刺さってその命を奪っており、反対方向からも弓矢が放たれ2頭の狼の頭に突き刺さっていた。残りの8頭は

 まずは、『土壁』で女性二人を狼から隔離したら、無属性の魔力の矢が反対方向から飛んできて一気に狼たちを殺してしまったからだ。

「俺の活躍が意味がねぇ! というか、ヴェル! その魔法があれば、弓矢とかいらねえじゃないか!」

「必要さ。弓矢を使った方が魔力の節約になる」

 二人の女性を囲んでいた土の壁を取り払うと、そこには驚きの表情を崩さない二人の姿があった。

「えーーーと、大丈夫かな?」

「大丈夫だけど……。あなたは確か、同じクラスのヴェンデリンよね? お隣のバウマイスター騎士爵家の八男の」

「お隣……というほど近くはないかな?」

「噂には聞いているけど……」



 主人公一行紹介 ヴェンデリン一行紹介

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