様々な小説の2次小説とオリジナル小説

 入学式から数日後の午後。
 ようやく予備校にも慣れ始めたので、俺たちはアルバイトを始めることにした。

「俺の名前はルークだ。武器は剣と弓と魔法が使える」

「私の名前は、ハクカです。聖魔法が使えます」

「ミュウといいます。剣と聖魔法が使えます」

「リッドだ。武器は、剣と弓が使える」

 お互い自己紹介と使える武器を申告してから狩猟をすることにした。



「はあーーーっ、ようやく到着したな」  

「しょうがないさ。ブライヒブルク近場の狩り場は、他の人たちでいっぱいだからな」

 俺たちは、一時間ほどの距離を歩いて予備校の事務所で教えてもらった草原へと到着していた。
 ブライヒブルクは人口二十万人を誇る大都市であったが、その人口のせいで膨大な食料を必要としている。
 穀物や野菜は、近隣にある多くの農村からである。
 魚は、川魚がメインである。
 塩も少し高めであったが、大量に運び込まれるので他の内陸部の都市よりは安目なようだ。
 砂糖も産地を抱えていたので、これも少し安く手に入った。
 そして残る肉類であったが、これは周辺の農村で行われている牧畜だけでは到底量が足りなかった。
 そこで、重要になるのが冒険者の存在である。

 冒険者は、魔物領域に入って魔物を狩り、貴重な素材や肉などを得るのが主な仕事である。

 そのような事情があり、冒険者予備校の生徒たちのアルバイトとしても推奨されている。
 学費や生活費のためだけでなく、己の冒険者としての才能を計る大切なアルバイトというわけだ。
 ここでつまずくようだと魔物を相手にするのは厳しい。
 野生動物は魔物ほどは強くないが、それでもたまに熊や狼に襲われて死ぬ冒険者があとを絶たず、油断すれば危険なのには変わりがない。

 動物相手の狩りだからといって、油断していいはずはなかった。

「みんな、慌てて近場の狩り場に行ったな」

「遠い場所だと移動が面倒だし、危険があるからだろう」

 狼などの危険な動物は、このように人里離れた場所にいることが多い。
 それに一応は学生なので、明日の授業のことも考えるとアルバイト組の大半は街に近い狩場へと向かってしまうのだ。

「でもよ。競争率が高くなるじゃないか」

「実際、なにも狩れない人たちが沢山出るらしいな」

 街に近い狩場は、当然頻繁に獲物を狩られているので動物自体の数が少ない。
 このまま数日間続けても狩りの成果が出ない人たちは、諦めて店番や荷物運びなどのアルバイトにチェンジするわけだ。
 なら獲物が沢山いる遠くに向かえば……予備校の出席日数との兼ね合いもあるし、普通のアルバイトをしながら鍛錬するという選択肢を取る生徒もいるわけだ。

「このくらい離れていると他の冒険者はほとんどいないな。なあ、ルーク」

『探知』

 で周囲を探る。

「ルークは、何をしているんだ」

「『探知』の魔法だよ」

「便利なのを使えるんだな」

「半径1.2kmを探知できるかな。危険性は、これで分かるわけだ・・・いたぞ……」

 俺が反応のする方を指差し4人で足音を立てずに移動すると大きな猪が地中の木の根を掘っている場面に遭遇した。
 間違いなく、自然薯でも探しているのであろう。

「大物だな」

「ああ」

 これ以上騒いだり、ただ凝視しているだけ無駄なので、俺とリッドはすぐに準備していた弓に矢を番えてから狙いを定める。
 リッドは、剣技で予備校の特待生を勝ち取ったが、実は小さい頃から狩りをしているので弓の扱いにも長けていた。
 腕前は、俺よりも上手なはずだ。
 彼は、数年間懸命に狩りで得た獲物を売って、ブライヒブルクまでの旅費や滞在費などの一部を得ていたそうだから。

「矢に『ブースト』をかける」

「ああ」

 次の瞬間、俺とリッドは同時に矢を放つ。
 すると魔法を纏った二本の矢は、猪のお尻と背中に深く突き刺さった。

「『ブースト』って便利だな」

 風魔法である『ブースト』で強化した矢は、飛距離が伸び、貫通力が上がって獲物に深く突き刺さる。 
 上手く急所に刺されば、かなりの大物でも一撃で瀕死状態に持って行くことが可能であった。
 今回は、獲物が穴に頭を突っ込んでいたので大ダメージとはいかなかったようだが。

「驚いて逃げるか?」

「残念、もの凄く怒っている」

 俺は前世で狩りをしたことがないので実際に比べたわけではないが、この世界に生息する野生動物には、凶暴な個体が多いような気がする。

 矢を受けたので、ここは普通逃げるのが常識だと思うのだが、なぜか逆上して、自分に危害を加えた相手に復讐をはたそうとするのだ。
 大猪にダメージを与えたものの、逆襲の突進で大怪我をしたり、下手をすると死んでしまう冒険者は、年に数名は発生しているとの予備校の講師からの話であった。

「ルーク、突進してきたぜ」

「むしろ好都合だな」

 俺とリッドは、慌てずに次の矢を番えてからそれを放つ。
 またブーストで強化された矢は、二本ともこちらに突進して来る大猪の脳天に突き刺さる。
 大猪はもの凄い音を立てながらつんのめり、そのまま動くなくなってしまつた。

「死んだかな?」

 リッドは慎重に猪に近付き、すでにその猪が死んでいるのを剣で突いて確認した。

「幸先がいいな。ルークは弓も上手いじゃないか」

「練習の成果だ」

「ルークは、魔法が使えるからいいじゃないか」

「ハクカ」

「うん」

 ハクカは、すぐに絶命している大猪を魔法の袋に仕舞う。
 魔法の袋に仕舞えば時間が止まっている状態なので、大猪の血が固まったり肉質が劣化することがないからだ。
 獲物の処理はあとで纏めてやった方が効率いいので、今は袋に仕舞うだけにしていた。
 今獲物を仕舞った袋は、俺が新たに作ったものだ。
 この新しい袋は、魔法使いにしか使えない専用品となっている。
 俺達は、2時間ほど、狩猟と採取に励んでいた。
 狩猟できたのは、ウサギが19匹、猪が19匹、ホロホロ鳥が5匹である。

「けっこう取れたね」

「そうだな」

 俺達は、街まで戻ることにした。
 道中、探知や報告を使いながら、錬金術の素材を採取しながら移動したのである。
 後、数分で街まで戻れるところで探知の魔法にある反応が引っかかった。

「・・・ん」

「って、どうかしたのか?」

 いきなり立ち止まった俺にリッドが尋ねる。

「街寄りの東500メートル。人間の反応が二つに、狼らしき反応が十二か……」

「まずいよな?」

「ああ」

 状況的には、狩りに来ていた二人を狼の群れが包囲しているとしか思えなかったからだ。
 犬の仲間で群れを作る狼は、個体でも集団でも人間には脅威となる。
 実際、狼に襲われて毎年多くの一般人が命を落としているのだ。

「助けに行くか?」

「帰り道だから、死なれると寝覚めが悪いか……」

 同じ予備校生かもしれないからな。

「行くか?」

「うん」

「ああ」

「ハクカ」

「・・はい」

 俺は、素早く『身体機能強化』を唱えるとハクカをお姫様抱っこして全速力で現場へと向かうのであった。
 リッドとミュウも同じように魔力で身体強化をして俺についてきた。



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