様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「よう、坊主、嬢ちゃんたちじゃねえか。今日も売りに来たのか?」

「「「はい」」」

「それはご苦労だな。気張って稼げよ」

 フィーネと出会って半年の月日が流れた。
 生活パターンは段々と固定されてきたという感じだ。
 家では魔法のせいで扱いが微妙な子供になっているので、朝食を終えると、ハクカを迎えに行くとすぐに森の奥に入ってから『瞬間移動』で出かける毎日だ。

 行き先は、南部の未開発地のどこかか、天地の森を越えた海岸地帯か、海を少し南に下った無人島にも足を踏み入れている。
 そこで魔法の特訓をしたり、狩猟や採集や釣りを行い、その成果で様々な食品や料理や魔道具を作ってみたりした。
 その結果、俺の魔法の袋の中には、食料や食品、素材、錬金に成功した品物などが仕舞われていた。

「・・・きれい」

「ああ」

 ハクカと手を繋ぐと『風の膜』で海の中に入ると数多くの魚が泳いでいたり、サンゴや海草、鯨がいたりと様々な海の景色を楽しんだりしていた。
 そんな感じで、週の多くを未開地ですごしてから、今度はブライヒブルクへと向かい、狩りで仕留めたウサギ、イタチ、穴熊、ミンク、ホロホロ鳥を売っていたのだ。売れた獲物で米や大豆や他の生活用品などを買う生活であった。

 特に米は、必須アイテムでもあった。

 元が日本人なので、あると知ればどうしても一日一食は食べたくなるからだ。
 この世界でも、米はかなりの種類が存在している。
 赤米・黒米などの、所謂古代米と呼ばれる品種に、前世では東南アジアで主流であった長粒種、半長粒種、中粒種。

 そして、日本で主流の短粒種。

 すべて古代魔法文明時代から、コツコツと品種改良が行われてきた成果なのだそうだ。
 その成果なのか1反当りで取れる穀物の量は、平成日本より多いのである。堆肥なしだと180kg、稲藁堆肥だと600kg、牛糞肥料だと720kgとなっていた。最も鳥獣・病気・害虫・天候といった要因により実際に取れる収穫量は、70%前後である。

 最近ではそう品種改良は進んでいない。
 さらに古代魔法文明時代には、効率良く品種改良を進めるために植物の『成長促進』という魔法が使える人たちがいたが、今はほとんどおらず、使える人でもその効果がものすごく落ちているらしい。

 『成長促進』に関しては俺は使えなかったが、ハクカが使えたので、試してもらったら効果は魔力が行き渡る範囲で、魔力を毎日放出して収穫までの時間が半減するレベルである。おかげで錬金術の成果の一つでもある『何かのタネ』から『ドンケルハイト』『世界樹』『蓮花』『サンゴ』などが育ったのだ。

 話を戻すが、米は短粒種をメインに購入している。
 あとは、たまに珍しいからと古代米を買ってみたり、チャーハンやピラフにするために長粒種も購入していた。
 それと、モチ米もあったのでこれも購入している。
 蒸して突けば、お餅が作れるからだ。
 味噌の材料として購入した大豆からきな粉も作れるし、小豆もあったので煮れば餡子も作れる。
 砂糖もあるので、ぜんざいを定期的に作っていたのだ。
 こうなると、前世で自炊をしていてよかったと思う。
 味噌に関しては、お祖母さんが教えてくれた。
 昔ながらの大豆と塩のみを使った味噌の製造で、土地によって味が変化する上に複雑な味になるのが特徴である。

 そういえば、お祖母さんは元気であろうか?

 ブライヒブルクでは、ハクカとフィーネと街中で遊んだり、デザートなどを買い食いしたりと十分に楽しんでいると思う。
 それと、この街には図書館があった。
 入館料である銅板一枚を払えば丸一日居てもよかったので、俺とハクカは時間の許す限り本を読み漁っていたのだ。
 我が家の書斎の本は読み尽くしていたし、ここにはもっと貴重でためになる本が沢山収蔵されている。
 魔法の修練、食を含む生活の向上努力。
 時間を潰す方法は十分にあったので、あまり不都合を感じていなかったという理由も大きかったのであろう。
 唯一ローラン兄さんとクリス姉さんからは数ヵ月に一度手紙が来るので、この返事は欠かさず書いている。
 あれからローラン兄さんは、王都で行われた下級官吏の試験に合格し上司の娘さんを紹介され、将来は結婚を視野につき合う予定らしい。

 なおその娘さんは、上司である下級法衣貴族の一人娘らしい。
 当然ながら、ローラン兄さんはその上司の家を継ぐこととなるのだが、結婚式の調整に手間取っているそうだ。
 この調整というのは、ファブレ騎士家との話し合いも含まれているのだ。
 それとクリス姉さんは、子供を出産したそうだ。



「明日か」

 明日で、ファブレ領を出ることになっている。
 理由は、冒険者予備校に入学するためである。
 冒険者予備校とは、冒険者に必要な技術などを教えてしまおうという趣旨で作られた学校であった。

 入学の条件は、最低でも十二歳からであった。
 ただし、辺境の子供は移動日数を貴族は御家騒動を考慮して1年の年齢差ぐらいなら問題ないとされている。

 訓練は、基本的に魔物の生息領域では行われない。
 だが、入学して一年以上経つと数ヶ月に一度。
 成績優秀者のみ、護衛にプロの冒険者を付け、比較的難易度の低い魔物が生息する領域で実習に参加できるそうだ。

「いいねぇ。これには是非参加しないと」

 しかもこの予備校、入学試験で成績優秀だと認められると、学費が一切免除になるらしい。
 家族には『学費は免除になるように努力するし、もしそうなれば、狩りで学費と生活費を賄うから大丈夫』と言って説得するつもりであった。

 どうせ家族は俺をなるべく領民たちの前に曝したくないわけだし、学費も生活費も自分でなんとかするのだから反対などしないであろう。

 実際、この話を家に戻ってから父に話したら反対されなかった。
 学費と生活費は自分で何とかするのが条件だったが、そのくらいは問題ないのだ。
 とはいえ、予備校入学までに特にしなければいけないことはない。
 むしろ今までどおり、武芸と魔法の訓練を続行するつもりであった。
 そんなわけで無事に進路も決まり、俺はハクカを迎えに行くといつものように森に入り、そこから『瞬間移動』を行った。



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