様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「・・・大きい・・・」

 森を暫く進んで遭遇したのが、この大きな黒犬。
 目が異様に赤い。それに、何か体毛が黒いというより、全身に黒い煙らしきものが纏わりついているような感じだ。

「グルアアアアッ!」

 牙剥き出しで飛び込んできた。

「うわ〜」

 反射的に顔面に拳をぶつけてしまった。
 犬は、頭をブルリと振ると僕めがけてサイド、飛び掛ってきた。
 仕方なしに剣を構え、犬が突っ込んできたところで避け、剣を振る。

 シュ スタッ

 と犬に避けられた。
 そのまま、僕と犬はお互いの攻撃をかわし、斬りつけたり、切り裂いたりの攻撃が続く。だが、それも長く続かず、ついに剣が犬の体を大きく切りつけた。すると犬から血が流れる、だが犬は諦めずに僕に向かってきた。だが、先ほど以上の速度の遅さだったので、すかさずかわし、剣で犬を思いっきり斬りつけた。犬は、剣にきりつけられると痙攣し、体が消えた跡に宝石みたいなのが落ちている。何だろう、赤くて綺麗な石だ。まあ、何処かで売れるかもしれないから、拾っておこうかな。



 再び、人を目指して進む。
 周囲に丈の長い草があり大木を通り

「・・・・うわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 僕は、悲鳴をあげてしまった。
 そこには体中から血を吹き出した血塗れの人間がいた。

「うぐっ」

 非現実的な血塗れの人間という存在とその異様な姿に僕の胃液が逆流し、嘔吐した。
 鉄の錆びたような匂いが気持ちの悪さを倍増させる。
 微動だにしない人間は、スーツを着込んではいた。
 性別はたぶん男だ。
 尚、僕の服装は、下は、ジーンズ。上は白の半そでと黒のジャケットを着ていた。
 僕は、ビクビクとしながらもその人に近づいていった。

 スーツに触れると

『魂喰らいが発動しました。スキルポイントを獲得しました。魂を死を司る神に献上します』

「・・・何、今の声?」

 キョロキョロ

 とするが周囲には誰もいない。
 お化けではないし、人のいたずらでもない。

 じゃあ、何?

 少し考えたが、答えは出そうにない。

『横田さんの生徒手帳からスキルを1つ選んでください』

「・・・え・・・」

 僕の驚きを無視して、突如、空間に『魔力』『錬金術』の文字が出てきた。
 恐る恐る『錬金術』の文字を押す。

【『錬金術』を獲得しました】

 と声が聞こえた。

「『錬金術』を手に入れたのかな?」

 疑問を浮かべるが、そんな場合ではないと思い、やることを思い出す。
 スーツに触れるとお目当てのものの場所がわかった。
 僕は、スーツの裏側にある胸ポケットに、手を伸ばし、血に濡れたそれを布越しに掴み、表面の血を拭き取った。

 血を拭い取ると、それの表紙に神立異世界転移学園という文字が見えた。
 僕の所有している生徒手帳と同じように。
 死体の生徒手帳をめくると、そこには顔写真、名前、年齢。ステータスといった物が書かれている。仕組みは全く同じようだ。

「名前は……横田 信王。男性」

 本命はこの先だ。
 取得スキルの一覧に『体力』2『知力』2『精神力』2の文字が見える。他のステータスにはポイントを一切振っていない。
 この人の死因はステータスを取らなかったことか。筋力もなければ、頑強もない状態では自分の体を保つことすらできなかったのだろう。

 異世界に到着と同時に、全身から血を吹きだして死亡という流れか。

 所有しているスキルは『魔力』1『錬金術』1だ。
 錬金術の説明を見た。

『錬金術』:この世界にあるあらゆるものを作りだせる可能性がある。能力が高ければ存在しない新たな物を創造することも可能

 僕は取得スキルの下に目をやる。
 そこには、所持品の欄があり『アイテムボックス』1という文字が目に飛び込んできた。

「どれがアイテムボックスだろう」

 死体の顔は極力見ないようにして、僕は首から下を観察する。アイテムとして存在するのだから、袋か鞄らしき物だと思う。
 仰向けの死体はスーツを着こんでいるだけで、他に何も所有しているようには見えない。リュックサックのような物を背負っているわけでもない。となるとポーチの様に腰回りに装着するタイプかな。
 死体の左腰部分に小さな長方形の革袋を発見した。おそらく、あれが『アイテムボックス』なのかな。
 微かに震える指先がアイテムボックスに触れた途端、頭の中に文字が浮かんだ。

『所有者が死亡したことによりアイテム権限が移ります。このアイテムボックスを所有しますか? はい いいえ』

 驚きはしたが迷う必要はないよね。
 僕は はい を選択した。

『所有者の変更を確認』

 その瞬間、死亡した彼の生徒手帳と自分の生徒手帳が小さく輝いた。

「何、ページが光っている?」

 二冊の生徒手帳を地面に置き、光るページを開いた。
 死亡している彼の所持品から『アイテムボックス』の文字の上に赤いバツが重ねられ、代わりに自分の生徒手帳の所持品に『アイテムボックス』が書き込まれている。
 大量の血に濡れていた彼の腰にあったにもかかわらず、その小袋は一切汚れていなかった。
 僕が『アイテムボックス』の袋を腰に当てると、ぴたりとくっついた。

 ビニール袋に入ったままの水を試しに入れてみた。
 手を突っ込むと頭に布の映像が浮かび、その水を取りたいと思うと手に容器の感触があった。
 何度か実験し、出し入れに問題が無いのを確認すると1週間分の飲食料水とお菓子を放り込んでおく。

 『アイテムボックス』は、五種類ほど収納できるみたいだ。
 お菓子はお菓子という種類にまとめられ飲食料水も全てが飲食料水という種類でまとめられた。

 思っている以上に『アイテムボックス』は便利らしい。
 それに加え有難いことに、アイテムボックスの中には予め2つアイテムが入っていた。
 『傷薬』が四つ。死体の彼が所有していた物だろう。確か、傷薬五つでワンセットだった筈、一つ足りない。考えられることは……この世界へ召喚された際にまだ息があり、何とか傷薬を使ったのか。でも、結局は助からなかった。
 もうひとつは、『錬金基本セット』であった。錬金術に必要な基本的な道具が備わっているようだ。でもどうやって錬金術を作成すれば良いのかさっぱりである。
 他に特筆すべきものは何もない事を確認し、僕は横田さんを埋葬した。
 穴をあけた方法は、『気』を用いて、その辺に落ちていた石を使って穴をあけた。
 横田さんを入れるのに問題ないぐらいの大きさになったので、埋葬した。
 墓前には、木の枝を立てて、花を供えて、冥福を祈り黙祷する。

「どうか安らかにお眠りください」

 僕は深々と頭を下げると背を向け、その場から立ち去った。



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