様々な小説の2次小説とオリジナル小説

 朝日が小屋の窓から室内へ射し込む。
 光お姉ちゃんの眠りも浅かったようで、一声ですっと目を覚ました。
 特に無駄口を叩くことなく、食事を終え、準備を整えると屋外に出る。
 あと数分で約束の時間となる。

『おはようー。ミトコンドリアも頑張るよっ!』

 家の外で待っていたのだろう朝日を浴び翡翠色の髪がキラキラと輝いている。
 僕たちの元に飛んでくると、何が嬉しいのか周囲をぐるぐると回っていた。



 土屋たちの決闘周辺にきていた。
 すでに土屋さんたちが決闘しているようだ。
 僕たちも急いで、援軍の有無を調べるために決闘周辺を探索した。
 迎田は、本当に一人で決着をつけるために来ていたようだ。
 その途中

「・・・大丈夫?」

「お兄さんたちのおかげでね」

 見覚えのある美少年とあった。

「オークキングは、一人のようだね」

「・・・そうだね。僕たちも土屋さんたちのところに行く予定だよ」

「そうか」

 決闘の場所に行くと大きな穴が開いていた。

「土屋さんたちは?」

「穴の中だ」

 と権蔵が答えた。
 穴の周辺にいるのは、サウワ、権蔵の二人だけだったのだが

「ゴルホ」

 背中に岩の塊を背負ったゴルホがいた。
 そのままゴルホが穴の中に落ちた。

「・・・おい」

 僕の静止は、ゴルホに届かなかった。

【魂くらいが発動しました。スキルとスキルポイントを獲得します。魂を死を司る神に献上します】

 少しすると

「この『気』は、迎田か」

「どうしたんだよ」

「ものすごい『気』が増幅している」

「そんなにか」

「うん」

「僕は行くよ」

 春矢が、時空魔法の転移を発動させ、消えた。



 しばらくすると

「うおっ! びっくりしたっ」

 土屋さんたちが穴の直ぐ側で、転移してきた。

「土屋さん、桜さん無事だったか! 縁野とゴルホと春矢はどうした? 3人とも姿を消したままなのか?」

 サウワは何も言わず、じっと土屋さんを見つめていた。

「すまない、3人は……」

「ごめんなさい。守れなかった……」

「そうか、いや、謝らないでくれ! 縁野が透過して落ちた時もゴルホが糸を断ち切って飛び込んでいった時も、俺は何もできなかった。そんな俺に責める権利なんてあるわけがない!」

「土屋さん・・・話は後、穴の中やばいよ」

 話をしている間にも、穴の底から感じる尋常ではない量の気は膨張を続けている。それは限界まで膨らませて、今にも弾けそうな風船を連想させる。

「すまない、みんな! ここから早く立ち去らないと! 桜、ここから一番遠い場所への転移を頼めるかい?」

「すみません、紅さん……さっきの転移で使用回数を使い果たしてしまいました……」

「ミト! ここから全力で退避するから、逃げ道を作ってくれ!」

『よくわかんないけど、わかったよ!』

 ミトコンドリアが草木に命令し、森を突っ切る一本道を作り上げると、土屋さんは迷いもなく先頭で飛び出した。後方から、権蔵、サウワ、桜、光お姉ちゃん、僕、ミトコンドリアの順で続いている。

「え、あ、どうなっているんだ!? 穴の中から感じる馬鹿でかい気が関係しているのか?」

 走る速度を上げ並走している権蔵が、しかめ面で土屋さんに訊ねてきた。

「今は詳しく説明する時間も惜しい。それに、穴の中で何があったかは、実際に見てもらった方が早いか」

 土屋さんは、心に記憶した映像と音を『精神感応』で余すところなく伝えてきた。
 映像を流されながらも、その足を止めることなく僕たちは走り続け、全ての映像を見終えると大きく息を吐いた。

「そうか、縁野もゴルホも活躍したんだな」

「ゴルホ、かっこ良かった。うん、かっこ良かった」

「そうね、サウワちゃん。ゴルホ君、紅さんを守ってくれて、ありがとう」

 サウワと桜は目をそっと閉じ、走りながらではあるが、ゴルホの冥福を祈ってくれているようだ。
 権蔵は悲しそうでもあり、悔しそうでもある、複雑な感情が入り混じった表現し辛い表情を顔に貼り付けている。

「春矢については、皆に黙っていてすまないと思っている。破魔の糸で本当に相手の精神感応を防げる確信がなかったので、万が一、読まれた時のことを考慮して、伝えていなかった」

「それはわかる。土屋お兄ちゃんの判断は間違ってない……と思う」

「そんなことより、俺の未熟な気の操作でも、異様な気の高まりを感じるぐらいだ。これって、かなりヤバいよな!」

「そうだ。これ程の力が暴発した場合の破壊力は想像できない。それこそ、核爆弾並の威力があっても、おかしくない!」

 このメンバーで一番足の遅い光お姉ちゃんに速度を合わせていては間に合わないかもしれない。
 光お姉ちゃんの背後に移動し、ひざ裏と肩下付近に腕を伸ばし抱き上げる。
 土屋さんも桜さんを抱き上げていた。
 次に遅いのは

「ミトは先に木に戻っていて」

『は〜い』

 ミトは、消えた。
 次に、遅いのは

「サウワ、背負うから僕の背に」

「うん」

 僕は、サウワを背負う。
 土屋さんがスピードを上げた。

「うひょえええええええええええええええっ!」

 まさに風を切り裂き、大地を走り抜ける速度に驚愕したようで、桜が妙な奇声を上げ、風圧に顔を歪める。

「・・・ん」

 僕は、スピードを上げた。

「権蔵は俺の後ろに並んで!」

 口を噤み懸命に走り続ける僕の足元が大きく縦に揺れ、思わず前のめりに転びそうになるが、何とか踏みとどまった。

「今の揺れ――」

 二人も同じ揺れを感知したようで、後方を振り返ると大穴を開けた地点から、天に向かい巨大な光の柱が昇っていく姿が目に入る。
 それは、土砂や木を巻き込み、光の規模を広げながらこちらに迫ってきていた。

「うおおおおおおっ! 逃げるぞおおおっ!」

 僕は、土屋さんたちを追い越しながら、権蔵が叫び、土屋さんも桜を抱え上げたまま、走り続ける。

 背後からは大地が削られ、粉砕される音が響いてくるが、振り返る余裕は微塵もない!

「後ろおおおおっ! 後ろおおおっ!」

 抱き上げられている桜からは後ろが良く見えるようで、人に見せてはいけない崩壊した表情で絶叫を上げている。
 言われるまでもなく、後ろから押し寄せる巨大な力を背に感じているが、どうしようもない。今できることは脚が千切れようが、全力で駆け抜けるだけだ!

 懸命に走る僕の耳に「あっ終わった」という、達観した桜の声が聞こえたかと思うと僕の体は閃光に包まれ、体は浮かび上がり宙を舞った。



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