様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「オーガマスター。この戦い何でもありで間違いありませんね」

「そうだ。二言は無い」

 まずは、一番大事なルールの確認を取れた。

「戦闘範囲は裏庭の芝生の範囲ですか」

「そうだな。目の届かない場所で戦われては、正確な強さを測れんからな」

「オウカはこの村でどれぐらいの実力者なのか聞いてもいいかい?」

「あ、聞きたい!? 実はね、二番目なのです! お爺ちゃんには未だに一度も勝てないけど、他の人には負けたことないのが自慢なんだ!」

 自慢げに胸を張ると同時に、大きな胸が上下に揺れた。

「リオウよりオウカの方が強いのか」

「うん、そうだよ! でも、リオウ凄いんだ! お爺ちゃん以外で、オウカに初めて傷をつけた男なんだよ! 格好いいでしょ!」

 その口ぶりだと、実力は圧倒的にオウカの方が上のように聞こえるのだが。
 そう思い、リオウに視線を向けると。こちらの心意が理解できたのだろう、肯定の意味を込め小さく頷いた。

「ところで、その武器と服装を変えたのは何か意味があるのかい」

 さっきまでは鞘付きの日本刀と革製の鎧を着こんでいたオウカだったが、今は木刀を腰に差し、服装も革鎧からクリーム色の毛糸のセーターに見える服を着こんでいる。下は革製のショートパンツのようだ。

「あ、ごめん。別に手を抜いているわけじゃないんだよ。むしろ、逆! 私って寸止めとか器用なことができないから、本気で手合せする時は木刀を使うことにしているの。これなら、全力で殴っても死ににくいでしょ!」

 さらっと怖いことを口にするな。
 確かに真剣を使われるよりか、生存率は上がりそうだが……木刀の素振りで、粉塵が巻き起こっている威力があれば、木刀でも人ぐらい軽く粉砕できるだろ。

「この服装は、動きやすさを重視しているのとお婆ちゃんが男の人と戦う時は、これを着ると勝率が上がるって教えてくれたんだ」

 体にぴったりと貼り付くセーターのような服は、体のラインを際立たせてくれるので、ただでさえ豊満な胸と腰の括れがハッキリと見えてる服装だ。

「あ、ごめん、装備が一つ抜けていたわ」

 そう言って細長い革製の紐のような物を取り出すと、それをたすき掛けにした。

「そんなもん、防具にすら――んぐぐぐっ!」

 権蔵は途中で否定の言葉を止め、オウカの胸元を凝視している。
 その熱すぎる視線の先には乳房の間を斜めに走る革の紐があり、それにより胸元が抑えられ、更に胸のボリュームが増したオウカの姿があった。

「わしも婆さんのこの手に何度やられたことかっ」

 オーガマスターが忌々しい過去を思い出したようで、苦虫を噛み潰したような顔になる。

「オウカはこの格好の意味わかっているのか?」

「へっ? いや、何か相手の動きが鈍くなるし、この格好嫌いじゃないからしてるけど」

「恥ずかしくないのかい?」

「何で? 胸元がちょっときついけど、裸になっているわけじゃないし、恥ずかしがる理由が無いよね」

 裸に対する羞恥心はあるのか。

「な、何て恐ろしい策だっ……って、何で土屋さん無反応なんだよ」

「いや、立派だなと思っているぞ」

「タンパク過ぎるだろ! 何だその反応! 前から思っていたけど、土屋さん20代にしては枯れ過ぎてないか!」

「失敬な。あまり現実離れした女性の身体つきって、興奮を通り越して怖いんだよ。作り物のような感じがしてな」

「ダメだこの人……マニアックな格好が好みだったりするし、男として終わっている」

「何だか良くわからないのだけど、この格好は土屋さんに効果ないのかー」

「ほう、土屋はこの攻撃が効かぬのか、侮れんな」

 オーガマスター、感心するポイントがおかしい。

「じゃあ、最後にもう一つだけ質問を。この戦いにおける勝敗の決定は、相手が気を失う、オーガマスターが止めに入る、相手が負けを認める。でよろしいでしょうか」

「ああ、構わん。では、お互いに準備はいいか」

「いつでもいいよー」

「ちょっと、距離を取らせてもらう――よし、いいよ」

 土屋さんは裏庭の敷地境界線ギリギリの場所まで移動していた。
 オウカは中心部より少し後ろに下がったところで、木刀を肩に担いでいる。

「では、勝負開始!」

 土屋さんは六本の糸に『気』を送り込み強度と操作性を上げて、アイテムボックスから取り出した丸太を先端に絡ませる。
 丸太の波状攻撃が、オウカに襲い掛かった。
 頭上から振り下ろされる一本目の丸太。
 更に肩口を狙い左右から挟み込むような軌跡を描く、二本の丸太。
 屈んで避けられないように、左右の足首の高さにも二本の丸太を正面から飛ばしていた。
 残りの一本は後部に回り込ませ、背中の中心部を狙う。
 六方向から微妙に時間をずらした攻撃。逃げ場を完全に塞いだ状態のこれを避ける術はない。

「うわー、こんなの初めて!」

 その攻撃に怖気づくどころか、歓喜の声を上げオウカは木刀を振り、丸太が粉砕されていく。
 彼女の周辺に砕かれた木片が散らばっていた。

「オウカ、その木刀。特別製だったりするかい」

「そんなことないよ。練習で使う、ごく一般的な木刀だよ」

「もしかして、気のスキル所有していないか」

「何でわかったの! 土屋さんすっごい!」

「何で、優しい目で俺を見るんだ……」

 土屋さんの優しい視線に気づいた権蔵が、半眼で睨んでいた。

「それに、今の丸太に繋がっていたのって糸かな。へええ、面白いスキルを使うね!」

 あ、この子は戦闘狂だ。今、楽しくて仕方がないと表情が語っている。

「今度は、こちらからいくよ!」

 オウカが前屈みになり、腰を下ろす。その瞳が土屋さんを見つめた瞬間、土屋さんと彼女とを結ぶ線上に、無数の糸を張り巡らせていた。

「あ、何これ!」

 糸を避けるわけでもなく、木刀で断ち切るわけでもなく、オウカは真正面から突っ込んでくる。

「ちょっと、邪魔よっ!」

 ぶちっ、ぶちっ、と糸の切れる音が続き、オウカが目の前まで迫っている。
 土屋さんが右側面へととんだ。

「嘘っ! 本気の一撃が避けられるなんて!」

 彼女が振り下ろした剣先を中心に、半径5メートル範囲の芝生が抉れ、地面が凹んでいる。

「はああああっ!?」

 あまりの威力に度肝を抜かれ、奇声を上げた権蔵は、開いた口が塞がらないようだ。

「土屋さんって、逃げるのは上手ね!次は、どんな攻撃しようかなー」

「オーガマスター、オウカが負けを認めたら私の勝ちで、間違いないですね?」

「そうだが、この状況で何を考えている」

 土屋さんの発言の意図が掴めないのだろう、オーガマスターは眉根を寄せて首を傾げている。

「え、土屋さん勝つ気なの!?」

「オウカ、キミって風邪をひきにくいタイプかな?」

「え、えっと、まあ、そうかな」

「じゃあ、大丈夫だな!」

 土屋さんは再び、アイテムボックスから丸太を取り出すと今度は九本同時に操っていた。

「うわ、うわっ、楽しいっ!」

 この状況下で丸太だけを見極めて木刀で壊し、拳銃からの射撃は躱してみせる。
 そして、油が満載の一斗缶は破損しないように、そっと手の平で受け止めてしまった。
 全ての攻撃を凌いだオウカが満足げに微笑んでいる。

「土屋さんって、やっぱり面白い! 強くないけど、何か、私と違った面白い動きをするわ!」

 僕たちは、オウカの状態に気づき、赤面した。

「でも、もう終わりにしようかなー。そっちの手は出尽くしたみたいだし。目を閉じているのは諦めているってことだよね。じゃあ、一気にいく――」

 どうやらオウカは、気づいてないようだ。

「・・・秋君・・・見ちゃ駄目」

「・・・うん」

 僕は、光お姉ちゃんに目をふさがれた。

「ところで、裸で戦うのはオーガの流儀なのかい?」

「何を言っている……のおおおおおおおぉ!?」

 オウカハ、上半身剥き出しで、堂々と外部に晒された二つの大きすぎる膨らみがあった。

「きゃあああああっ!」

 胸元を両腕で覆い跪くオウカの動きが、気の光で見えた。

「さて、まだ戦うならこの瞼を開けて、正々堂々、オウカを見据えて戦うけど?」

「や、やめて! 私の負けで良いから!」

「何だ、急に視界がっ! 何で、顔に布が巻き付いてんだっ!?」

「勝ちは勝ちなのだが……それでいいのか、土屋」

 何故か、オーガマスターが疲れたように大きく息を吐いた。

「ええ、もちろん。どれだけ実力の差があっても、やり方次第で勝てるということを、彼女に知ってもらいたかったのですよ」

「光お姉ちゃん・・・目を閉じたから」

「・・・え・・・うん」

 ようやく、光お姉ちゃんの手が目から外れた。
 『気』でオウカの場所を確認し、『大きな毛布』を取り出し、オウカに手渡す。

「ありがとう・・・・目を開けて良いわよ」

 僕は、目を見開いた。

「しかし、いつのまに孫の服を脱がしたのだ」

「脱がしたというか、セーターを解いただけですよ」

「よくわからんが、恐ろしい男だな土屋は……婆さんみたいだ」

「この人に勝ちたかったら、ちゃんとルールで雁字搦めにして戦わないとダメだぜ」



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