ゴブリンたちの倍は軽く超える身長が5メートルは超えている大きなゴブリンがいた。
やせ気味のゴブリンと対照的な筋骨隆々のボディービルダーの大会で優勝できそうな身体つき。頭が大きく首も異様に太い。
見るからに強そうというより化け物と呼ぶに相応しい生物だ。
そんな化け物を相手にしているのは、中性的な美少年であった。
だが、あの顔に別の顔が浮かび上がる。何かをたくらんでそうな目をした少年であった。
あれは・・・・
一振りごとに瓦礫と土砂が飛び散り、鉄錆の浮いた巨大な剣を振り回している化け物。
そんな化け物を相手にしている男の顔には微笑が貼りついているのだが、よく見ると頬が引きつっているように見える。
男から化け物へ向いて吹く烈風が化け物の皮膚を切り裂き、赤黒い液体が飛び散っているのだが、傷が浅くダメージを与えるどころか化け物の猛攻の手を緩めることすら叶わないでいる。一番ひどい傷は、化け物の腹にできている深い傷である。
「うおおおおっ!」
叫び声をあげ、大地を派手に転がり掘立小屋に激突する男。
瓦礫を吹き上げる小屋跡に片膝を突いた状態の男がいる。左腕からは大量の出血。それに加え、かなり魔力を消耗したようで息も荒い。
早くも決着が付きそうだ。
「大丈夫?」
男に声を掛けると僕を見て
「大丈夫に見える」
血を流しているのでまったく大丈夫に見えない。
「全然・・・・はい」
僕は『傷薬』を男に渡した。
傷薬を飲み干し、勢いよく立ち上がった男。
「そういえば、名前は・・?」
「僕は春矢だ」
「秋だよ。とりあえずあれを倒・・・・」
「ゴブルアアアアアアアアアアアアアアッ!」
化け物の大きな声で僕たちの身体は震えた。
だが、春矢は、すぐに身体の震えを抑えた。
春矢に勇気付けられ、僕も身体の震えが静まりつつあった。
『怖い怖い怖い怖い、やめて! 助けて! お母さん、お父さん、もう引きこもりなんてやめるから! 元の世界に戻してええっ!』
女性の叫ぶ声が直接脳内に響いてきた。
これは教室でも感じた声!?
『嫌だ、嫌だ、こんな世界! 誰か、お願い!?』
『第6感』を頼りに見ると小屋の入り口付近で震えている少女を見た。
周囲には、忙しなくこちらに向かってこようとしているゴブリンたちやどこかに行こうとしているゴブリンたちがいた。
「春矢君・・・少しだけいい」
「仕方ないね・・・・ハーレムは、英雄たる僕の役目なんだけど」
「光おねえちゃん・・・・ここにいて」
僕は、光おねえちゃんに毛布を手渡し、少女を落ち着かせるために抱きしめる。
『・・・え・・・・』
「大丈夫だよ」
少女は、僕の顔をまじまじと見る。
ゴブリンたちがこちらに向かってきた。
剣に『気』を収束させていく。
「・・・んっ・・・・ぇ・・・・あんっ・・・・」
「『風の傷』」
少女から何か声が漏れているが気にせずに剣に集まった気を一振りの風の刃として振り下ろす。
集まってきたゴブリンたちを風の刃で切り裂くと光の粒子となり消えていく。
「二人はここにいて」
少女を光お姉ちゃんに預ける。
「『風の傷』」
再び剣に気を収束させ、化け物に放つ。
化け物は、手で防御したようだが、その手に深い傷がつき、化け物を1歩後退させた。
「・・・やるね」
そう言いながらも、目に見えない風の弾丸を春矢が化け物へ叩きつけてくれている。
「『風の傷』」
再び風の刃を化け物に向ける。
何度も風の傷をぶっ放すと次第に化け物の傷が増えていく。
「・・・長期戦は不利だね」
「そうだね」
少しだけ考え、剣に視線を通し、春矢君の風の弾丸・・・!
「光お姉ちゃん」
「・・・え・・・なに」
「風の魔法を僕の剣に与えられる」
「・・・・やってみる」
僕は、光お姉ちゃんに駆け寄り、剣を差し出す。
光お姉ちゃんが剣に風の魔法を施す。
剣を化け物に向け
「・・・いくよ」
剣に気を通すと剣から凄まじい風が噴出してくる。
この出来事に化け物がギョッとし、春矢君も少しだけ驚いていた。
剣が
ピキピキ
と音が響く。
やばいかも・・・・集中・・・集中
剣からの風が収まりつつあったが剣の刀身が紅く染まっていく。
化け物がこちらに向かってきた。
ドスドスドス
と音が響く。
後、数歩で、攻撃できる距離まで近づく化け物。
僕は、目を剣にむけ、剣を振り下ろす。
「・・・・『爆竜波』」
紅き風が剣から放出され、一直線に化け物に向かっていく。
化け物が腕を構えるも紅き風に化け物ごと飲み込まれていく。
赤き風は、一直線に塀を破壊し、森を飲み込んでいく。
僕たちは、その姿を見てポカーンとしてしまう。
何せ、数百m先まで森や塀がなくなったのだ。
地面に倒れ伏す化け物の巨体。
自分たちを支配していた存在が死に絶えたことが信じられないのか、何度も手にした武器を叩きつけ、動かないことを確認すると一斉に天に向かい歓声を上げた。
僕たちの存在が頭から抜け落ちているゴブリンたちが騒ぐ姿をぼーっと眺めながら、少しだけ迷ってしまう。
「生き残りも倒しておくべきだよな」
「まあ、当たり前だね」
そう言い放った春矢君は何も言わずにゴブリンたちの方へと歩み寄り、右手を振るう度にゴブリンの首が宙を舞う。
僕も春矢に加わることにした。
次
やせ気味のゴブリンと対照的な筋骨隆々のボディービルダーの大会で優勝できそうな身体つき。頭が大きく首も異様に太い。
見るからに強そうというより化け物と呼ぶに相応しい生物だ。
そんな化け物を相手にしているのは、中性的な美少年であった。
だが、あの顔に別の顔が浮かび上がる。何かをたくらんでそうな目をした少年であった。
あれは・・・・
一振りごとに瓦礫と土砂が飛び散り、鉄錆の浮いた巨大な剣を振り回している化け物。
そんな化け物を相手にしている男の顔には微笑が貼りついているのだが、よく見ると頬が引きつっているように見える。
男から化け物へ向いて吹く烈風が化け物の皮膚を切り裂き、赤黒い液体が飛び散っているのだが、傷が浅くダメージを与えるどころか化け物の猛攻の手を緩めることすら叶わないでいる。一番ひどい傷は、化け物の腹にできている深い傷である。
「うおおおおっ!」
叫び声をあげ、大地を派手に転がり掘立小屋に激突する男。
瓦礫を吹き上げる小屋跡に片膝を突いた状態の男がいる。左腕からは大量の出血。それに加え、かなり魔力を消耗したようで息も荒い。
早くも決着が付きそうだ。
「大丈夫?」
男に声を掛けると僕を見て
「大丈夫に見える」
血を流しているのでまったく大丈夫に見えない。
「全然・・・・はい」
僕は『傷薬』を男に渡した。
傷薬を飲み干し、勢いよく立ち上がった男。
「そういえば、名前は・・?」
「僕は春矢だ」
「秋だよ。とりあえずあれを倒・・・・」
「ゴブルアアアアアアアアアアアアアアッ!」
化け物の大きな声で僕たちの身体は震えた。
だが、春矢は、すぐに身体の震えを抑えた。
春矢に勇気付けられ、僕も身体の震えが静まりつつあった。
『怖い怖い怖い怖い、やめて! 助けて! お母さん、お父さん、もう引きこもりなんてやめるから! 元の世界に戻してええっ!』
女性の叫ぶ声が直接脳内に響いてきた。
これは教室でも感じた声!?
『嫌だ、嫌だ、こんな世界! 誰か、お願い!?』
『第6感』を頼りに見ると小屋の入り口付近で震えている少女を見た。
周囲には、忙しなくこちらに向かってこようとしているゴブリンたちやどこかに行こうとしているゴブリンたちがいた。
「春矢君・・・少しだけいい」
「仕方ないね・・・・ハーレムは、英雄たる僕の役目なんだけど」
「光おねえちゃん・・・・ここにいて」
僕は、光おねえちゃんに毛布を手渡し、少女を落ち着かせるために抱きしめる。
『・・・え・・・・』
「大丈夫だよ」
少女は、僕の顔をまじまじと見る。
ゴブリンたちがこちらに向かってきた。
剣に『気』を収束させていく。
「・・・んっ・・・・ぇ・・・・あんっ・・・・」
「『風の傷』」
少女から何か声が漏れているが気にせずに剣に集まった気を一振りの風の刃として振り下ろす。
集まってきたゴブリンたちを風の刃で切り裂くと光の粒子となり消えていく。
「二人はここにいて」
少女を光お姉ちゃんに預ける。
「『風の傷』」
再び剣に気を収束させ、化け物に放つ。
化け物は、手で防御したようだが、その手に深い傷がつき、化け物を1歩後退させた。
「・・・やるね」
そう言いながらも、目に見えない風の弾丸を春矢が化け物へ叩きつけてくれている。
「『風の傷』」
再び風の刃を化け物に向ける。
何度も風の傷をぶっ放すと次第に化け物の傷が増えていく。
「・・・長期戦は不利だね」
「そうだね」
少しだけ考え、剣に視線を通し、春矢君の風の弾丸・・・!
「光お姉ちゃん」
「・・・え・・・なに」
「風の魔法を僕の剣に与えられる」
「・・・・やってみる」
僕は、光お姉ちゃんに駆け寄り、剣を差し出す。
光お姉ちゃんが剣に風の魔法を施す。
剣を化け物に向け
「・・・いくよ」
剣に気を通すと剣から凄まじい風が噴出してくる。
この出来事に化け物がギョッとし、春矢君も少しだけ驚いていた。
剣が
ピキピキ
と音が響く。
やばいかも・・・・集中・・・集中
剣からの風が収まりつつあったが剣の刀身が紅く染まっていく。
化け物がこちらに向かってきた。
ドスドスドス
と音が響く。
後、数歩で、攻撃できる距離まで近づく化け物。
僕は、目を剣にむけ、剣を振り下ろす。
「・・・・『爆竜波』」
紅き風が剣から放出され、一直線に化け物に向かっていく。
化け物が腕を構えるも紅き風に化け物ごと飲み込まれていく。
赤き風は、一直線に塀を破壊し、森を飲み込んでいく。
僕たちは、その姿を見てポカーンとしてしまう。
何せ、数百m先まで森や塀がなくなったのだ。
地面に倒れ伏す化け物の巨体。
自分たちを支配していた存在が死に絶えたことが信じられないのか、何度も手にした武器を叩きつけ、動かないことを確認すると一斉に天に向かい歓声を上げた。
僕たちの存在が頭から抜け落ちているゴブリンたちが騒ぐ姿をぼーっと眺めながら、少しだけ迷ってしまう。
「生き残りも倒しておくべきだよな」
「まあ、当たり前だね」
そう言い放った春矢君は何も言わずにゴブリンたちの方へと歩み寄り、右手を振るう度にゴブリンの首が宙を舞う。
僕も春矢に加わることにした。
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