様々な小説の2次小説とオリジナル小説

 翌朝、身体の快調さとは裏腹に困惑した気分での目覚めだった。
 昨夜、見た夢が決してただの夢ではないと思い知らされたからだ。

 股間にははち切れんばかりにそそり立つ巨根……。
 昨日までは13cmと平均的だったが、今では21cmと大きくなり、頭をすっかり現した威風堂々たる様相を呈している。いや、異変に気付いてすぐ物差しで計りましたから……。
 これが突発性陰茎肥大症候群とかだったら手放しで喜べるのだが、どう考えても一晩でこんな成長するなんてのは有り得ない。

 つまりはこれが昨夜の悪魔との契約結果というわけだ。

 俗にいうマジカルチンポ――どんな女でも一突きで天国に送るという、エロ業界至高のアイテム……とは少し違う。
 ペニス自体は快適に使用出来るようサイズを調整されただけで、そこいらにある物と何ら変わらない。射精しない限り、普通にセックスしてるのと差異はないという。
 問題は射精して出される物質が精子だけではなく、媚薬である点。しかも地球上に存在するどんなドラッグよりも、激しい中毒症状を引き起こすまがまがしい暗黒物質であるという。

 何それ恐い……。
 そんな物、体内で生成して俺自身大丈夫なの? と思ったが、自身には全く影響がないらしいから不思議。
 このご都合物質を他人が体内に吸収すると、激しい快楽に溺れ多幸感に包まれるというわけだ。中毒症状以外の後遺症もなく、幻覚症状も出ない。
 まあ、最初はそこまで絶大な影響を及ぼすわけではなく、何回も回数を重ねる毎に効果が増して行くらしい。個人の体質により効きやすかったり、効き難かったりはあるみたいだが。

 実際、男のロマンを具現化したような素晴らしい贈り物ではあるのだが、悪魔との取引がメリットばかりのはずがない。

 当然ながら俺が失ったものもある。

 ――魔力咆哮というスキルだ。

 ラフォマイトと名乗る悪魔が言うには、悪魔とは人間との間で公平な取引をするため、様々な契約を交わすのだという。
 例えば王となる権力を得る代わりに、生け贄として数多くの魂を要求したり……。
 当たり前の話だが、契約者本人の魂をくれと言って了承されるはずもなく、悪魔は他者の魂を要求する。悪魔自身は人間を殺す事が出来ず、寿命で死んだ魂は輪廻を迎え手を出す事が出来ない。
 別に老衰ではなく病死や殺害でも、それが元から定められた寿命である限り輪廻の輪は途切れないが、悪魔と取引した契約者が本来死ぬ予定ではない人間を殺したりすれば、運命が捩曲(ねじま)げられる事により輪廻の輪から外れ、めでたく悪魔のお口の中に……という算段らしい。

 だが、これも最近は頓(とみ)に上手くいかなくなってな……と、まるで地方の閑散とした商店主みたいな事をぬかす悪魔。
 昔は何十人と生け贄を捧げた優秀な殺人鬼も居たらしいが、科学技術や警察組織が発達する中で、そうそう怪奇殺人なんて行えるわけがない。せいぜい二、三人生け贄を捧げたところで、契約者自身もお縄になり電気椅子へと送られる。

 まあ、その魂も美味しくいただいたわけだがと、山羊頭がにっこり微笑んだ時にはゾッとした。

 勿論、俺は快楽殺人主義者ではないし、そんな提案なら受けたりはしない。悪魔も俺に生け簀を捧げさせる気などはなからないらしい。
 ただ奴は、恐ろしく冷たい渇いた声でこう言った……。

 ――汝の能力の一部を貰えれば、それだけで良い。

 膜がかかったような頭では、満足に考える事もままならず、俺は簡単に了承する旨を伝えてしまった。
 今になってみると何故、自分が了承してしまったのか分からない。おそらく精神誘導みたいな事をされていたのではないかと思う。
 俺はセックスへの期待感で緩みっぱなしのニヤケ顔を引き締めると、制服に着替えて学校へ行く支度を始めた。



 学校に着くまでもけっこう大変だった。
 通学の満員電車の中、ふとした刺激で勃起してしまうのだ。目の前に立つ美人OLから漂う香水の匂いに反応し、痛いほど股間が突っ張る。どうも感度が相当敏感になってるようで、股間に血が滾(たぎ)るのが早い。

 美人OLの視線が俺の下半身に向く。
 マズイ! くっ……鎮まれ!
 一度大きく膨らんだものは毒を吐き出さない限り、そう簡単には萎(しぼ)んだりしない。
 俺と美人OLの間には二十cmほどの隙間があるので、痴漢扱いされる事はないだろうが、恥ずかしさで顔から火が出そうだ。

 ねえねえ、今朝電車で隣にフル勃起してる高校生が居たんだけど――そんな会話が会社の給湯室で繰り広げられるのではなかろうか?
 真っ赤に染まっているであろう俺の顔面と、下半身の間を行き来する美人OLの視線……もうやめてッ! おいらのライフはすでにゼロよ!

 肩にかけたリュックを外し、さりげなさを装いながらリュックで股間を隠す。
 ニヤリと口角を上げる美人OLの表情から目を背け、目的の駅に到着するまで悟りを開くべく、無我の境地に埋没するほかなかった。



 コツコツとシャープペンの走る音が鳴り響く。あの相坂でさえ黒板とノートを往復する目線をとっているというのに、俺の脳内はあらぬ妄想で溢れかえっていた。

 クラスメートの女子達を餌食とする妄想――である。

 特にクラスメート限定というわけでもないのだが、最初から全く接点のない人間、というのも無理がある。悪魔の話からすると、俺の精子中毒にすれば女なんてやりたい放題のはず。
 だが、肝心のその手段が思い付かない……。

 無理矢理にでもレイプして中出し? さすがにそれは倫理的に出来ない。というより、万が一全てが俺の妄想であった場合、人生が終わる……。高校生にして強姦魔の前歴を持ち、生きていく勇気は俺にはない。
 初めはバレても問題にならない方法を取るしかないだろう。

 クラス一のヤリマンとの呼び声が高い、中野(なかの)洋子(ようこ)にするか?
 中野は高校に入ってからすでに何人かにパコられてるという噂だし、相坂のようなエロさはないが、ボディタッチが激しい女だ。顔は中の上、スタイルもそこそこといったところだが、殊更にモテる要因はあの馴れ馴れしいボディタッチにある。
 めぼしい男と話す時、腕を絡ませ、胸を押し付けているのを幾度か見掛けた事があるのだ。三村もその標的らしく、たまにこのリア充グループの輪に混ざり、ちょっかいをかけてくるが、成果はあまり芳(かんば)しくはないようだ。

 こいつなら俺でもイケそう……と、勘違いさせるのが上手い女である。

 俺も一度だけ、中野のボディタッチ攻撃を喰らいそうになったが相坂の、『うぜえ……』の一言に場が凍り付き、みすみす女子高生の胸の感触を味わう機会を逸した。
 何人かは中野に頼んでいるはずだが、尻が軽いくせに口は堅いらしく、中野セックス名簿なるものが世に出回る気配もなく、それとなく頼めば内緒で一発くらいやらせてくれるかも知れない。中野は好みではないが、実験材料としては適任な気がする。

 難解な数式を解くフリをしながら、そんな淫らな妄想にふけっていると、ふと隣のクソビッチもとい相坂の視線を感じた。
 しかし、視線の先は俺の顔ではなく、明らかに下を向いている。

 おぅふ……今、めっちゃテント張ってるじゃん。

 一瞬、相坂と目が合った。俺の苦り切った表情を読み取ったのかあいつは、『まあ若いんだから、勃つのも仕方ないよね』という感じで微笑み……。

 前の席に座る三村の肩を叩き、ボソボソと何事か呟いた。

 三村がプッと吹き出すのと同じくして、今度は右隣りに座る中野にまで告げ口し、わざわざ見やすいよう身体を反らしやがった。

 クソッ! クソッ! ……この女を少しでも信じた俺が愚かだった。

 椅子を前にずらし、咄嗟に下半身を隠したが、時すでに遅し。笑い声が波紋のように広がって行くのを、教師の注意する声が入るまで、ただ黙って見守るしかなかった。



 昼休みになり、気恥ずかしさから逃げるように教室をあとにすると、前方からトテトテと可愛らしく歩いて来る久美ちゃんと廊下ですれ違った。
 俺に気付き、ニッコリ微笑んで小さく手を振る仕種に、心臓を鷲掴みされそうになる。

 はあぁ、やっぱり天使やでこの子は……。

 あの可愛らしいお口でフェラチオしてるのかと思うと、ムクムクときかんぼうが暴れ出す。いや、あの清純な久美ちゃんがそんな事するはずがない。木嶋と付き合ってる久美ちゃんなんか、最初から存在しなかったんや!

 心の平穏を取り戻した俺が階段を駆け降り、購買で弁当を購入したあと仕方なく教室に戻る。


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