様々な小説の2次小説とオリジナル小説

 俺の通う学園には超絶美少女がいる。もうそれはその辺のアイドルでは歯が立たないくらいの美少女。
 その女子の名前は藤咲彩音(ふじさきあやね)という。
 入学当初からその美貌は遺憾無く発揮されていた。もうオーラからして他とは違っていたね。
 男子どもはもちろん教師の男どもでさえエロい目を向けていたよ。セクハラで訴えられてもおかしくないくらいの視線。家庭持ってるいい大人があんなに鼻の下伸ばしていいのかって感じ。
 大きくくっきりとしたかわいらしい目は見つめられてしまえばそれだけで恋してしまえそうなほどの魔眼である。チャームの魔法でもかけてるのかね。
 薄い唇は思わずしゃぶりつきたくなるような魅惑の唇。誘われているとしか思えない。
 腰まで届きそうなほどの長く綺麗な黒髪。それとは真逆に白く透き通るような肌。どちらも互いを活かしあってる白と黒。
 胸も大きくEカップは確実にある。ムチムチとした肉付きの良い事。だがウエストはキュッと締まっているし、手足は細く長い。つまり最高の身体なのだ。
 しかも藤咲が完璧なのは容姿だけにとどまらず、成績優秀、スポーツ万能、人当たりも良いと何をあげても完璧だった。
 そんな学園一の美少女藤咲彩音に告る男子が後を絶たないのは自明の理というものだ。しかも教師も含めてだ。公にはされてないが知ってる奴は知っている情報。俺も知ってる時点でかなりの奴が知っているだろうがな。
 だがそれだけモテる藤咲はただの一度も告白を了承した事はなかった。
 もとより学園に藤咲につり合うほどの男がいなかったのだが、その中にはカッコいいとか言われるような奴もいたよ。そんな奴らでも考える素振りすらなく速攻で断られたらしい。まあ同じ美形でもレベルが全く違っていたけどな。俺が言う事じゃないけど。
 難攻不落の藤咲彩音。いつの間にか彼女はそう呼ばれていた。
 入学から半年で全校の男子の半数以上が玉砕したとか。もはや伝説級の美少女だなと感心させられる。
 ちょっと他人事のように語っているが実は俺も学園一の美少女に告った一人だったりする。いやあ、お恥ずかしながら。まあ若気の至りって事にしといてほしかったり。



「好きです、付き合ってください」

「ごめんなさい」

 何のひねりもない告白の言葉を口にした俺は今までの例にもれず速攻で玉砕した。
 元々勝ち目なぞなかったのだ。俺の容姿は不細工と分類されるようなものだし、勉強や運動は並み以下、人付き合いだって下手くそだ。僕は友達が少ない。
 告白なんぞする気はなかった。だが間が悪かったのか藤咲の魔力に当てられたのかいつの間にか告白の定番の屋上に藤咲を呼び出してこんな事になっていた。
 それでも告白前は色々と夢想するもので、もしもオーケーされて藤咲と付き合う事になったらと考えて、言わなきゃ始まらない可能性はゼロじゃない、もう当たって砕けろだ! とか盛り上がってた。断られて一気に冷めたけど。

「あなたの気持ちは嬉しいのだけど、私今は誰とも付き合う気はないの」

 そう言って目尻を下げて心底申し訳なさそうに俺を見つめる藤咲。唯一の救いはそんな藤咲と見つめ合えた事かな。目を合わせる機会すらない俺とすればそれすらレアものだったね。
 一人取り残された俺はしばらく空を見上げていたよ。なぜだか滲んで見えたけど。ぐすん。



 一世一代の俺の愛の告白は不発に終わった。腹いせにその日は藤咲をオカズにオナニー。六発も出した。若いってすごい。
 まあこれは蛇足と言っていい。問題が起こったのは次の日から。
 父さんが死んだ。
 仕事中に建設中のビルとかがあってそこの上から鉄骨が降ってきて直撃したらしい。それ聞いた時どんな確率だよって思った。話だけじゃ現実味がなかったんだよな。
 父さんは保険会社に勤めていた。そのせいか生命保険に入っていたらしく、かなり多額の金が俺の所に転がり込んできた。それに加えて慰謝料もけっこうもらった。
 母さんはいない。俺が小さい頃に事故で死んでしまったからだ。
 男手一つで俺を育てた父さんもいなくなって、残ったのは多額の金。この時点で藤咲の事は頭からすっかりと抜け落ちていた。
 それでも時間は流れて月日は進んでいく。
 気が付けば一年が終わって春休みを迎えた。その頃にはショックから立ち直って俺は普通に生活していた。強制的な一人暮らしに最初は戸惑ったもののまあなんとかなるもんだ。
 一年生最後の登校が終わってすぐさま帰宅。一応部活には入ってはいるが今日はない。だからすぐに家に直行。
 帰って着替えて昼飯のカップラーメンにお湯を注いで三分待つ間、突然家の電話が鳴りだした。
 ただ待つには長い三分、しかし何かをするには短い三分。どうせ自宅にかかる電話なんてそういいものじゃないだろう。俺は自分に制限時間三分を設定して電話に出た。

「もしもし」

『こちら狭間悠様のお宅でしょうか?』

「はい、そうですけど」

『ああ、もしかしてご本人様でしたか?』

「はい」

 声色で男だというのはわかる。でも何なんだろう? ものすごく耳障りだ。電話の相手はデブでにやけ顔の中年オヤジだと予想する。

『あなた様、ご両親を亡くされたそうですね。お可哀想に』

「!」

 何なんだ今さら!? 俺は無性にイラついた。

「何だよあんた! 何者なんだ!?」

 俺は電話越しの男を怒鳴った。もしかしたら金目当ての奴かもしれない。父さんが死んだ時、人の良い顔して寄って来た害虫どもを見て来たのだ。そのほとんどが親戚連中だった。嘆かわしい。

『これは申し遅れました。私(わたくし)堂本(どうもと)と申します。どうぞお見知りおきを』

 堂本と名乗った男は俺のイラつきなどどこ吹く風である。

「あんたの名前なんてどうでもいい。早く要件を話せ」

 そろそろ三分が経過する。できればさっさと電話を切りたい。

『では単刀直入に要件を伝えさせていただきますね』

 男は一呼吸置いて言った。

『狭間様はメイドに興味はありませんか?』



「ごめんくださーい!」

 来客を知らせるチャイムの音が家中に鳴り響く。

「はいはーい」

 玄関のドアを開けるとニコニコとした笑みを向けてくる腹の出た中年の男が立っていた。三月という暑くもない季節なのに額には汗を垂らしている。まあ予想した通りの男なので驚く事は何もないけどな。

「お初にお目にかかります。堂本です。上がってもよろしいですかな?」

「ああ、どうぞどうぞ」

 汗を拭く堂本を中に案内する。
 俺は堂本とあの電話の後からも連絡を取り合っていた。とゆーか堂本の方から一方的に連絡がきていたのだが。
 堂本の要件というのは金持ちになった俺にメイドを雇わないかというものだった。堂本はメイドを売買する仕事をしているらしく、金のある奴には片っ端から声をかけているらしい。
 確かに一人暮らしの俺にとって家事はけっこう大変だ。もう面倒臭いったらない。
 だけどそれとこれとは別もんだ。こんな事で金の無駄遣いはできないと考えた。何より怪しい。
 それでも堂本はしつこかった。こいつどうしてやろうかと考えるくらいにしつこかった。
 俺の考えが変わったのは一つの封筒が原因だった。送り主はもちろん堂本だ。
 送られてきた分厚い封筒には分厚い冊子が入っていた。
 その中にはプロ野球の選手名鑑みたいな感じに女の子のプロフィールがずらりと並んでいた。写真付きでみんなかわいい娘ばかりだ。この時点でぐらりときていた。まさかここまでかわいいとは思ってなかった。てかみんな若い、十代もけっこう多い。メイドってかわいく「ご主人様っ」と言ってくれるような妄想の産物ではなく、もっとリアルにおばちゃんとかだと思っていただけにちょっと衝撃を受けた。
 プロフィールは細かく載っていてスリーサイズまである。それだけで興奮する。
 写真はメイド服を着た全身の前と後ろ、顔のアップ、それからブラジャー着用状態の胸のアップの写真の四種類あった。この写真本当にもらっていいんですか?下半身がちょっと元気になった。
 載っていた女性の数はおよそ三十人くらいだったかな。年齢の幅は十四歳から二十七歳まであった。みんなむちゃくちゃ綺麗だった。
 その中で俺は一人の人物に目を惹かれた。とゆーか信じられないものを見た。もう釘付けだったね。
 俺は電話をかけていた。相手はもちろん堂本。
 色々と説明を聞いて俺の心は完全に移り変わっていた。
 そして俺はメイドを「注文」した。

「……という事です。では何か質問はありますか?」

 俺の目の前でソファーに座る堂本は説明を終えて一息つく。出していたお茶をぐいっと飲み干している。よっぽど喉が渇いていたのかゴクゴクと喉を鳴らす。良い飲みっぷりだった。
 俺は重要な事を確認しておかなければならない。そう重要な事だ。

「じゃあ一つ確認を」

「どうぞ」

「本当に何でも言う事を聞くんですね? 俺に絶対服従なんですね?」

「はははっ、大丈夫ですよ。狭間様はしつこいですなあ」

 堂本は俺が何を聞きたいかを知っている。電話越しでも何回も確認したからね。言葉通りしつこいと思ってるだろうな。何か立場が逆転した気分。

「もちろんどんな理不尽な要求でも狭間様には逆らえませんよ。たとえ性奴隷になれと狭間様が命じればその通りになるでしょう」

 堂本の笑みが厭らしい笑みに変わる。ポーカーフェイスを貫こうとしていた俺も口角が上がったのがわかる。

「詳しくは申せませんが他の利用者様方もほとんどがそういう扱いをメイドにされています。気にする事はありません。メイドに人権はありませんから」

 そう言って堂本は下品に笑う。むちゃくちゃな話をしているのはわかる。とんでもない事をしようとしている自覚はある。
 これは人身売買だ。だけどもし金で買える人がいるなら、どんなに金を積んでも惜しくないと思えるほど欲しい人がいるなら、俺は手を伸ばしてしまうようなそんな人間なのだ。最低な奴だと指を指されても全力で耳を塞いでやる。

「それでは狭間様も待ち遠しいと思いますのでそろそろ連れて来ますね」

 堂本が立ちあがって玄関に向かう。俺もその後をついて行く。後ろから見ると堂本のシャツはびっしょりと濡れていた。そんなに暑いか? 今日は暖かく過ごしやすい。春を感じさせられるが決して夏を感じる気温ではないと思うのだが。
 外の車庫には父さんの形見の車が一台置いてあるだけでまだ余裕がある。そのスペースに明らかに高級車だと思われる黒塗りの車が一台停まっている。堂本が乗ってきた車である。
 堂本はその高級車の後部座席のドアを開けて乗っていた人物を降りるように促す。
 車から出て来た人物はメイド服を着ていた。フリルのついた白いカチューシャとエプロンが黒のメイド服を際立たせている。
 手には大きなカバンが握られている。これから俺の家に住む事を考えたらもっと物はいるだろうな。
 風で長い髪がなびく。陽光で全身が輝いて見える。神々しささえ感じる。
 その人物を俺はよく知っている。
 その人物は学園で一番有名で、学園で一番人気者で、学園で一番の美少女。
 藤咲彩音、その人なのだから。
 こうして藤咲彩音は俺のメイドになったのだ。


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