様々な小説の2次小説とオリジナル小説

 転送門が出てから俺はカナリアに後ろから呼び止められた。

「ルチェルのことだけど、あなたに逢いたがってたわよ」

「そう、か……」

 随分長い間会っていない気がする。
 突然消えて寂しくしてないといいけど。

「逢って欲しくないけど」

 どういうこと?

 カナリアが門をくぐる。
 俺は追いかけるように門をくぐるとそこはどこかの路地裏だった。
 日差しは真上に昇っていて影から湿気った空気が漏れだしている。
 レイアーナが俺を見てから前に進み出す。

「ここは?」

「前回のアウトブレイクでこの国は魔女狩りを決めた。私たちは魔女をまず保護する必要がある。竜を斃すには魔女の力が必要」

 俺はレイアーナに首を振った。

「全然話が見えないな。魔女狩りってルチェルやカナリアのような魔女のことを狩るっていうのか? そんなことされる理由もわからないし、それに助けが必要な理由もわからない」

 魔女は強い。
 保護するとはどういうことなのだろうか。

「着いてきて」

 ――――。

 幻想的な曲を弾いている女の子が腰掛けていた。
 ウクレレのようなギターのような楽器はどこか原始的な楽器にも見える。
 広場で子供たちに囲まれているが、その曲を傍聴している者はいない。
 彼女の趣味なのか。
 この曲……歌詞はあるようだが、言葉の意味はわからない。

 俺たちが彼女に近づくと彼女は詩を止めて俺たちを見上げた。
 澄んだマリンブルーの瞳はカナリアよりも強い青を放つ。
 褐色の髪は陽の光を受けてオレンジ色に輝いていた。
 魔女は美人揃いなのか? マキトの趣味なのか。
 優しげな瞳に小高い鼻は愛らしく丸みを帯びている。

 輪郭はやや丸みを帯びていてまだ若干のあどけなさも思わせた。

「なにか?」

「私たちは魔女の力を必要としている」

「魔女狩りで処されるか、私たちの力を欲する者に利用されるか……」

 自嘲的な笑みを浮かべながら彼女は弦楽器を奏でる。
 俺は彼女の声色が酷く哀愁に満ちたもののような気がした。
 とても澄んだ歌声はどこまでも響いていくような錯覚を覚える。

「済んだ?」

 レイアーナはドライだった。銀髪が風に揺れてうなじを覗かせている。
 見上げた少女の髪もまた揺れ動く。

「……済んだわ。あの契約を果たすときが来た、そうゆうことよね?」

 レイアーナが静かに頷く。
 少女は褐色の宝石をレイアーナに差し出した。
 静かに首を振って俺にその宝石を見せる。

 彼女の魔石を受け取ってから俺はレイアーナを見た。

「説明してくれよ、俺に何をさせようっていうんだ?」

「マキトを斃す。ハクもそうしたいはず」

 確かにマキトは話の通りなら絶大な力を持つだろう。
 魔女を道具にしているっていうのも気に入らない。
 けれど、世界の理が憎しみによって保たれている理由を俺はまだ知らない。

「すぐには決められない」

 俺だってそいつを斃すことが魔女の……ルチェルのためならそうする。
 だけどそんな短絡的に考えられるほど俺は単純じゃない。
 レイアーナの厳しい視線を受けたって俺は引かないぞ。

「なら、魔石をエレナに返して」

 言われた通りに返すとエレナはぽかんとしていた。

「私の契約は?」

「私の見込み違いだった」

 レイアーナは俺を置いてゲートを開いてしまう。ルチェルとは違って呪文を描くこともなく一瞬だった。
 残されたエレナは石垣に立てかけたウクレレを持って再びゆっくりと奏で始める。

「まるでイベントフラグを折った勇者みたいだな」

 後ろから声を掛けられて俺は咄嗟に振り返る。
 よく聞き知ったその声に振り返ると北島の姿があった。

「見てたのか?」

「まあな。ルチェルとシュレも来てるぜ」

 北島の背中から駆け寄ってきたルチェルとシュレ。

「ハク」

「ハク様」

 ルチェルとシュレが抱き付いてきた。

「ルチェル、それにシュレ」

 俺はルチェルとシュレを抱きしめた。
 マキト斃しは北島や幸太あたりに任せよう。
 エレナは俺に関せず歌っている。


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