「私はどうすればいいでござるか?」
筋肉男(キンニズム)が怯えた表情で尋ねている。
「キンニズムさんは北島君の友達とかいってましたよね」
「いかにも、私はスパークンの心と体の友です」
「荷物運びとかお願いできませんか」
「お安いご用でござる」
眞鍋さんはキンニズムを早くも手懐けようとしているのか?
「綾芽、キンニズムさんに家具運び手伝って貰って」
違ったらしい。
眞鍋さんがこちらに歩いてくる。
ボブカットになった眞鍋さんは今やちょっとしたキャリアウーマンのように見えなくもない。
「それじゃ、行きましょうか」
「あ、どこに?」
「どこって、シェレちゃんをそんな格好で放っておくつもり?」
怒気を忍ばせた声、これには俺も反論できなかった。
ここクリストラは今最もホットな街らしい。
ダンジョンから採掘されるオーブクリスタルを始めとした各種魔石が高値で取引される。
魔石といってもルチェルが持つような特殊な もの(おれ)ではなく、人々の生活を豊かにするエネルギー源としての魔石だ。
魔法は魔力を消費するために疲労感が伴う。しかし魔石を使用すると魔力がいらないため楽をできるという仕組みだ。
このダンジョンは近年発見されたもので、難易度も比較的優しく、階層も深いために世界中の冒険者がここで生計を立てているという話だ。
「ギルドって呼ばれる労働組合があるのよ。魔石発掘ではたまに怪物みたいなのと戦わないといけないから……これが結構楽しくって」
眞鍋さん、普通に異世界楽しんでた。
「北島……えと、綾芽さんとはここで会ったの?」
「うん、偶然組合で似た名前を見つけたから会ってみたら本人だったから驚いたわあ。しかもあの北島兄並にスッゴく強いの、あ、これは内緒ね。本人は隠してるから」
そうなのか……みんな、チートか。
街の中は非常に乾燥していて太陽に照り返された砂ぼこりがちょっと靄をつくっているほどだ。
それでも水が流れる広場があるし、行き交う人たちの顔も明るい。
本当に潤っている街なんだろう。
「眞鍋さんはいつからここにいるの?」
「もう1ヶ月くらい。あ、そうだ。まだ私のスキルっていうか技を教えてなかったね」
眞鍋さんが俺に手をかざす。俺に何かするのか?
「解析――スキル付与・ライトリーディング」
目の前に青い砂嵐が走る。
一瞬眩暈がしたが何も起きなかった。
「狭間君はこの世界にきて言語の違いに困らなかった?」
そういえば眞鍋さんって――。
「私の持ってる不思議な力はそういうのを分かるようにしたり、こうしたいって思った技を相手に与えてあげることなの」
「え、今なんて?」
こうしたい(・・・・・)と思った技を相手に与える??
????????
「だから、私が考えた技は何でも技になって……そうね、例えば空を飛びたいって思ったらフライとかいう技が出来てそれを使う度に空を飛べるの」
なんじゃそのチートは!?
おいおいおい、じゃあ俺の蘇り10億ポイント払って得た技は何なんだ? ゴミか?
「驚くのも無理はないよね。私だってこれに気がついたときはびっくりしたし」
「待った、それなら元の世界に帰るスキルも作れるって事?」
「やっぱり男の子はみんなスキルって呼ぶよね。作れるよ、ただこれには代償もあるの」
代償? なんだ?
ルチェルが俺を睨んでいる。
「ええとね……私が幸せな気持ちになること」
「はい?」
「やっぱ今のなし!」
幸せな気持ちになるか。じゃあ今幸せな気持ちで俺にスキルを与えたのか?
眞鍋さんは頬を赤くして視線を逸らしている。
「痛って――!?」
いきなり腰に激痛が!
ルチェルの方を見るとルチェルはそっぽ向いていた。
「それよりさっき私が上げたスキルだけど、あそこの看板読んでみて」
「……食事処」
マジか。俺、初めてこの世界の看板読んだぞ。
「ね?」
「すっげえよ眞鍋さん!」
うぉおおおこれで俺もこの世界で色々できるわけだ。
ガッツポーズしてみせる。エロいところも探して見たい!
「痛って――!?」
さっきからチクチクなんなんだ。
ルチェルはそっぽ向いてるし。
「狭間君はこの世界に来てどんな風になったの? 何も変わってない?」
「そうだなあ」
変わったというか、人間ですらなくなったというか。
「石になったかな」
「ふふ、何それ」
洋服店に入ると眞鍋さんは流石に俺からは離れた。
店主は男だったが、2人を見て歓迎するように微笑んでいる。
シュレは服を摘まんで選ぶ。
しばらくシュレのことは彼女に任せてルチェルに今までの経緯を説明した。
「じゃあ、嫌いになって別れたわけじゃないのね」
「全く違うけど、海に漂流して拾ってくれたのがシュレだけどね」
「それで恋人になったと?」
「・・・なんといえばいいのかな。旅仲間で恋人に近いという表現が一番近い」
「それって恋人ってことじゃ。ってあんたはあたしの魔石でしょ」
「そうなんだけど・・・眞鍋さんたちにどれくらい俺たちについて聞いた」
「え・・・とそれは…あんまり聞いてない」
ルチェルに説明
「魔石の中に人間がね」
「・・・ああ。ところで魔石を新しく手に入ることができるのか」
「それって、魔女の」
「ああ・・・ルチェル用の魔石を入手したほうがいいだろうと思ってな。それが俺なりのけじめだと思っている」
「しばらく考えさせて」
「わかった」
「これはどこでござる?」
家に帰り、部屋に戻ると
「おおい!?」
「見たかよ、十字架だよ十字架。普通兄貴を張り付けにするかね? そんなに裸がいいなら十字架にくっついてろだとよ」
ケッと北島は部屋の隅でイエス様を実践していた。
あの十字架に張り付けられた北島は圧巻の一言だ。
足下に置かれたバケツは間違いなく北島の下の世話用。
これが人間の扱いか? ガッテム……北島妹。
「狭間君、戻ったならただいまくらい言ってください。それと不躾ですが、兄の面倒をお願いします……私は家具を整理しないとならないので」
オーケーオーケー……。
「もし兄を逃がすことに荷担するなら狭間君は他人とはいえ兄と同じになって貰います」
「オーケー!」
声が裏返ったぞ。
「迷惑掛けるなよ」
「兄がそれを言うんですか? せめてパンツ1枚と言っているこちらの譲歩が理解できない人間を私は人間とは思いません」
確かにっ。パンツ1枚すら嫌だとは……北島、お前真性だな。
「消えろ」
「そっくりそのままの言葉をお返しします」
なんて兄妹だ……。苛烈すぎるだろ……。
しかしなあ……北島――、
「パンツ1枚くらい譲歩してやれよ」
「裸に何の罪があるんだ? 言っておくがここは日本じゃないし、地球ですらない。真っ裸でいるやつだって大勢いるんだ」
「え、いるのか?」
「獣族って見たことあるか? あいつら男も女も全員真っ裸だぞ? 性器が体毛に覆われてて見えないだけなんだ」
へえ……。
「でよ、小便とかどうするんだろうって気になって見たらしゃがんだ瞬間にあそこがぱっくり割れるんだよ! いやあ、感動したなあ、あれは」
「すげぇ機構付いてるんだな」
「たまに奴隷で売られてるから買おうか迷ったぜ。ま、結局やめたけどな」
北島らしくないな。
俺はあぐらをあいて北島を見上げた。
「奴隷商からよ、人間とヤったら大抵一発で孕むから気をつけてくださいって言われてな」
「それは……凄いな」
獣族凄いな。
「でも滅茶苦茶いいらしい。それで破産した貴族もいたらしいぜ。何でも生まれた奴――おっと、話が脱線したな」
北島も北島なりに異世界エンジョイしてるなあ。
「シュレはどうした? 珍しく傍にいないじゃないか」
「ああ、今、眞鍋さんの所」
次
筋肉男(キンニズム)が怯えた表情で尋ねている。
「キンニズムさんは北島君の友達とかいってましたよね」
「いかにも、私はスパークンの心と体の友です」
「荷物運びとかお願いできませんか」
「お安いご用でござる」
眞鍋さんはキンニズムを早くも手懐けようとしているのか?
「綾芽、キンニズムさんに家具運び手伝って貰って」
違ったらしい。
眞鍋さんがこちらに歩いてくる。
ボブカットになった眞鍋さんは今やちょっとしたキャリアウーマンのように見えなくもない。
「それじゃ、行きましょうか」
「あ、どこに?」
「どこって、シェレちゃんをそんな格好で放っておくつもり?」
怒気を忍ばせた声、これには俺も反論できなかった。
ここクリストラは今最もホットな街らしい。
ダンジョンから採掘されるオーブクリスタルを始めとした各種魔石が高値で取引される。
魔石といってもルチェルが持つような特殊な もの(おれ)ではなく、人々の生活を豊かにするエネルギー源としての魔石だ。
魔法は魔力を消費するために疲労感が伴う。しかし魔石を使用すると魔力がいらないため楽をできるという仕組みだ。
このダンジョンは近年発見されたもので、難易度も比較的優しく、階層も深いために世界中の冒険者がここで生計を立てているという話だ。
「ギルドって呼ばれる労働組合があるのよ。魔石発掘ではたまに怪物みたいなのと戦わないといけないから……これが結構楽しくって」
眞鍋さん、普通に異世界楽しんでた。
「北島……えと、綾芽さんとはここで会ったの?」
「うん、偶然組合で似た名前を見つけたから会ってみたら本人だったから驚いたわあ。しかもあの北島兄並にスッゴく強いの、あ、これは内緒ね。本人は隠してるから」
そうなのか……みんな、チートか。
街の中は非常に乾燥していて太陽に照り返された砂ぼこりがちょっと靄をつくっているほどだ。
それでも水が流れる広場があるし、行き交う人たちの顔も明るい。
本当に潤っている街なんだろう。
「眞鍋さんはいつからここにいるの?」
「もう1ヶ月くらい。あ、そうだ。まだ私のスキルっていうか技を教えてなかったね」
眞鍋さんが俺に手をかざす。俺に何かするのか?
「解析――スキル付与・ライトリーディング」
目の前に青い砂嵐が走る。
一瞬眩暈がしたが何も起きなかった。
「狭間君はこの世界にきて言語の違いに困らなかった?」
そういえば眞鍋さんって――。
「私の持ってる不思議な力はそういうのを分かるようにしたり、こうしたいって思った技を相手に与えてあげることなの」
「え、今なんて?」
こうしたい(・・・・・)と思った技を相手に与える??
????????
「だから、私が考えた技は何でも技になって……そうね、例えば空を飛びたいって思ったらフライとかいう技が出来てそれを使う度に空を飛べるの」
なんじゃそのチートは!?
おいおいおい、じゃあ俺の蘇り10億ポイント払って得た技は何なんだ? ゴミか?
「驚くのも無理はないよね。私だってこれに気がついたときはびっくりしたし」
「待った、それなら元の世界に帰るスキルも作れるって事?」
「やっぱり男の子はみんなスキルって呼ぶよね。作れるよ、ただこれには代償もあるの」
代償? なんだ?
ルチェルが俺を睨んでいる。
「ええとね……私が幸せな気持ちになること」
「はい?」
「やっぱ今のなし!」
幸せな気持ちになるか。じゃあ今幸せな気持ちで俺にスキルを与えたのか?
眞鍋さんは頬を赤くして視線を逸らしている。
「痛って――!?」
いきなり腰に激痛が!
ルチェルの方を見るとルチェルはそっぽ向いていた。
「それよりさっき私が上げたスキルだけど、あそこの看板読んでみて」
「……食事処」
マジか。俺、初めてこの世界の看板読んだぞ。
「ね?」
「すっげえよ眞鍋さん!」
うぉおおおこれで俺もこの世界で色々できるわけだ。
ガッツポーズしてみせる。エロいところも探して見たい!
「痛って――!?」
さっきからチクチクなんなんだ。
ルチェルはそっぽ向いてるし。
「狭間君はこの世界に来てどんな風になったの? 何も変わってない?」
「そうだなあ」
変わったというか、人間ですらなくなったというか。
「石になったかな」
「ふふ、何それ」
洋服店に入ると眞鍋さんは流石に俺からは離れた。
店主は男だったが、2人を見て歓迎するように微笑んでいる。
シュレは服を摘まんで選ぶ。
しばらくシュレのことは彼女に任せてルチェルに今までの経緯を説明した。
「じゃあ、嫌いになって別れたわけじゃないのね」
「全く違うけど、海に漂流して拾ってくれたのがシュレだけどね」
「それで恋人になったと?」
「・・・なんといえばいいのかな。旅仲間で恋人に近いという表現が一番近い」
「それって恋人ってことじゃ。ってあんたはあたしの魔石でしょ」
「そうなんだけど・・・眞鍋さんたちにどれくらい俺たちについて聞いた」
「え・・・とそれは…あんまり聞いてない」
ルチェルに説明
「魔石の中に人間がね」
「・・・ああ。ところで魔石を新しく手に入ることができるのか」
「それって、魔女の」
「ああ・・・ルチェル用の魔石を入手したほうがいいだろうと思ってな。それが俺なりのけじめだと思っている」
「しばらく考えさせて」
「わかった」
「これはどこでござる?」
家に帰り、部屋に戻ると
「おおい!?」
「見たかよ、十字架だよ十字架。普通兄貴を張り付けにするかね? そんなに裸がいいなら十字架にくっついてろだとよ」
ケッと北島は部屋の隅でイエス様を実践していた。
あの十字架に張り付けられた北島は圧巻の一言だ。
足下に置かれたバケツは間違いなく北島の下の世話用。
これが人間の扱いか? ガッテム……北島妹。
「狭間君、戻ったならただいまくらい言ってください。それと不躾ですが、兄の面倒をお願いします……私は家具を整理しないとならないので」
オーケーオーケー……。
「もし兄を逃がすことに荷担するなら狭間君は他人とはいえ兄と同じになって貰います」
「オーケー!」
声が裏返ったぞ。
「迷惑掛けるなよ」
「兄がそれを言うんですか? せめてパンツ1枚と言っているこちらの譲歩が理解できない人間を私は人間とは思いません」
確かにっ。パンツ1枚すら嫌だとは……北島、お前真性だな。
「消えろ」
「そっくりそのままの言葉をお返しします」
なんて兄妹だ……。苛烈すぎるだろ……。
しかしなあ……北島――、
「パンツ1枚くらい譲歩してやれよ」
「裸に何の罪があるんだ? 言っておくがここは日本じゃないし、地球ですらない。真っ裸でいるやつだって大勢いるんだ」
「え、いるのか?」
「獣族って見たことあるか? あいつら男も女も全員真っ裸だぞ? 性器が体毛に覆われてて見えないだけなんだ」
へえ……。
「でよ、小便とかどうするんだろうって気になって見たらしゃがんだ瞬間にあそこがぱっくり割れるんだよ! いやあ、感動したなあ、あれは」
「すげぇ機構付いてるんだな」
「たまに奴隷で売られてるから買おうか迷ったぜ。ま、結局やめたけどな」
北島らしくないな。
俺はあぐらをあいて北島を見上げた。
「奴隷商からよ、人間とヤったら大抵一発で孕むから気をつけてくださいって言われてな」
「それは……凄いな」
獣族凄いな。
「でも滅茶苦茶いいらしい。それで破産した貴族もいたらしいぜ。何でも生まれた奴――おっと、話が脱線したな」
北島も北島なりに異世界エンジョイしてるなあ。
「シュレはどうした? 珍しく傍にいないじゃないか」
「ああ、今、眞鍋さんの所」
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