様々な小説の2次小説とオリジナル小説

 中等部と高等部をあわせて、最低でも百人から三百人の女子生徒の行方が未だ分からない。
 中等部女子寮の生き残りによれば、メイジ・オークらしき存在がオークを指揮して女子生徒を連れ去ったという。

 いずこかに。
 おそらくは、この洞窟のなかに。

 なんのために?

 目の前にある光景こそが、その答えだ。

 人間の内臓を思わせる全長五メートルほどの不気味な肉塊が、部屋の隅で絶えず蠢いている。
 肉のあちこちから触手のようなものが生え出て、天井に向かって手を伸ばすようにゆらめいている。

 陽光のもとなら、たぶんそれは、艶めかしいピンク色をしているのだろう。
 ナイトサイトだと夕暮れくらいの明るさになるから、それはいま、血のように染まって、余計におぞましく見えた。

 その肉塊に、行方不明だった女子生徒たちが囚われている。
 いや、喰われているといった方が正しいだろうか。

 身体の大部分は肉の塊に埋まり、顔だけを突きだし、悲痛に喘いでいる者。
 腕や脚だけが出て、ぴくぴく痙攣している者。
 白い乳房だけが露出している者。

 こちらから見えるだけでも、五名か六名。
 そんな生贄の生徒たちの姿を前に、ぼくとミアとハクカと和弘の身体が、一瞬、硬直する。
 ミアがごくりと生唾を飲み込み……。

「しょ、触手プレイ」

「・・・へ・・・」

 ぼくの緊張が一瞬で解けた。

「そのショゴスっぽいのは後まわしだ! たまき、アリス、左手奥に近づくな! ミア、右のアーチャーに魔法で攻撃!」

「ん、任せて。ライトニング」

 ミアの放った電撃が、いましも弓に矢をつがえようとしていた右手のアーチャーの身体を貫く。
 アーチャーは全身をけいれんさせ、よろめくようにあとずさりする。

 たまきは予備のダガーを手に正面のアーチャーに肉薄する。
 アリスはそれより少し先にそのそばのアーチャーへ刺突を放っている。
 ふたりとも、ちらりと左奥を見たあと、すぐ顔をそむけていた。

 メイジさえ封殺してしまえば、敵の数こそ多いものの、個々はさしたる強敵ではない。
 こちらも落とし穴でアイアン・ゴーレムが無力化されているが、こいつはあとでフライでもかければ復帰できる。
 いまは、そのフライをかける時間が惜しいのだけれど。

 正面のアーチャー十体は、アリスとたまきに肉薄され、弓を地面に落として剣を抜いている。
 とはいえ、剣の腕でふたりに敵うはずもない。
 たまきも、得物がダガーになったとはいえ、それでもアリスより鋭いひと太刀を放っている。

 アーチャーたちが、次々と討ちとられていく。
 右のアーチャーは、ウィンド・エレメンタルによって1体討ち取られていた。
 その直後、ミアのライトニングが別の一体を葬り去る。
 これで右手は残り二体だ。

 正面ではアリスとたまきが、剣を手にしたアーチャーと乱戦を繰り広げている。
 ふたりとも、アーチャーを圧倒し、次々と倒していくが……。
 そのとき、右手奥の暗闇からメイジが姿を現す。

 メイジの杖が、アリスを指し示す。
 いや、正確には、アリスの持つ鉄槍だ。
 まずい、あれが来る。

「アリス!」

「だいじょうぶ……ですっ!」

 アリスは、両手でぐっと槍を強く握った。
 唇をきつく噛んでいる。
 ヒート・メタルによって赤熱化した槍を、根性だけで握りなおしたのだ。

「ディスペル」

 アリスはさらに、自らの槍の柄に魔法を使う。
 治療魔法ランク3のディスペルは、任意の魔法効果を打ち消す魔法だ。
 今回の場合、ヒート・メタルの赤熱効果をキャンセルしたのだろう。

 それによって焼けたアリスの手は、そのままだ。
 それでも、メイジは動揺するようにあとずさった。
 自分の魔法がレジストされ、さらにディスペルされたことに驚いた様子である。

 メイジ・オークは別の魔法に切り替える。
 石つぶてを飛ばすランク1魔法、ストーン・バレットだ。
 だがランク1程度なら、たいしたダメージにはならない。

 むしろその隙に、アリスが背負ったジャベリンを抜いて、メイジめがけ投擲する。
 投げ槍は見事にメイジの胸を貫く。
 メイジは口から激しく吐血し、その場に倒れ伏す。

『魂喰らいが発動しました。魂をスキルに変換します』

 戦闘は終局へと向かう。



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