「誰も上げられないね」
「そうだな」
アキ:レベル15 剣術4/付与魔法4/召喚魔法5/肉体4/運動4 スキルポイント7
ハクカ:レベル14 治療魔法6 スキルポイント7
ミア:レベル12 地魔法4/風魔法4 スキルポイント4
ぼくが白い部屋からもとの樹の上に戻るのとほぼ同時に、オークの側にも変化があった。
ついにオークたちの士気が決壊し、エリート・オークの指示もきかず、算を乱して逃げ出し始めたのだ。
左右の森に逃げ入るオーク。
エリート・オークの横を抜けようとしてミンチになるオーク。
やぶれかぶれに前線を抜けようとして槍に貫かれるオーク。
阿鼻叫喚の地獄絵図のなか、アリスとたまきは冷静に目の前の獲物を狩り続ける。
それでいい。
まずは邪魔な雑魚を排除し、エリート・オークへの道を切り開くのだ。
そのときだった。
敵陣の奥から、身も凍るような咆哮があがる。
エリート・オークの雄たけびだった。
それが三体同時。
だが幸いにして、今回は仲間の誰ひとりしてひるまない。
アリスに猛然と接近する者がいる。
オークが逃げまどったことで集団の密度が薄くなり、エリート・オークとアリスの間に一本の道ができてしまったのだ。
エリート・オークが、アリスに突進する。
「アリス、来るぞ!」
和弘は叫ぶ。
だが彼女は、和弘の声が届く前に素早く身をひるがえし、森のなかに飛び込んだ。
エリート・オークは、アリスを追って森のなかに分け入っていく。
もう一体のエリート・オークが、たまきを追って、やはり森のなかへ入っていく。
「ミア」
「ん」
「志木さん、お願い」
「わかったわ、任せて」
ミアは樹から飛び下り、志木さんと組んで走り出す。
志木さんが森のなかでアリスやたまきを探し出し、ミアがエリート・オークの武器をヒート・メタルで落とす。
そういう作戦である。
さて、問題は残る一体、フリーとなってしまったエリート・オークなのだが……。
前への道は、逃げまどうオークで塞がれている。
左右の森に抜けるルートはある。
こいつが、どちらに向かうか。
それ次第で、今後の作戦を決めなければ……。
と、その残る一体のエリート・オークは、正面から突っ込んできた。
え?
逃げまどう周囲のオークを大斧で切り殺し、強引に距離を詰めてくる。
って、味方を殺して前進するのかよ!
まずい。
ぼくの背筋に冷たいものが走る。
ここまで強引な手に出てくるのは、ちょっと予想外だった。
こいつらにとって、仲間の命など、使い捨てのコマに過ぎないのだろう。
「逃げろ!」
和弘は落とし穴を挟んで槍を構える三人の少女に叫ぶ。
和弘の声で、僕は正気に戻り、木の上から飛び降りた。
槍を構える少女たちは、逃げなかった。
その場に踏みとどまり、穴の手前まで迫ったエリート・オークを待ち構えていた。
「守りますから!」「サモン・ウェポン」
少女たちのひとりが、叫ぶのと同時に剣を召還した。
叫んだ人間は、ぼくにおにぎりを持ってきてくれた少女だった。
「カズさんのこと、守りますから! いまのうちに、逃げてください!」
は?
とぼくは呆気にとられる。
守る?
彼女たちが、和弘を?
なぜ。
「昨日、カズさんはわたしたちを助けてくれたじゃないですか! 今度は、わたしたちがカズさんを助けますから!」
和弘は樹から飛び降りる。
少女たちの数歩、後ろだ。
僕は、和弘の数十歩後ろにいる。
「サモン・エレメンタル・アース」
僕の後方に、無骨な岩肌の巨人が現れたのと同時にエリート・オークが穴の手前で跳躍するところだった。
まずい!
エレメンタル・アースに指示を出す前に動き出す。
青銅色のオークは、高くジャンプしながら、空中で斧を振りかぶる。
さっき和弘に対して「助ける」と叫んだ少女の脳天めがけて、どでかい斧を振りおろす。
少女は一歩もひるまず、刺突を繰り出す。
槍の穂先が、エリート・オークの腹に突き刺さる。
だが青銅色のオークは微塵もひるまない。
跳躍の勢いを上乗せして、大斧を振りおろす。
キーン
と音が鳴り響く。
エリート・オークと少女が、驚愕する。
次
「そうだな」
アキ:レベル15 剣術4/付与魔法4/召喚魔法5/肉体4/運動4 スキルポイント7
ハクカ:レベル14 治療魔法6 スキルポイント7
ミア:レベル12 地魔法4/風魔法4 スキルポイント4
ぼくが白い部屋からもとの樹の上に戻るのとほぼ同時に、オークの側にも変化があった。
ついにオークたちの士気が決壊し、エリート・オークの指示もきかず、算を乱して逃げ出し始めたのだ。
左右の森に逃げ入るオーク。
エリート・オークの横を抜けようとしてミンチになるオーク。
やぶれかぶれに前線を抜けようとして槍に貫かれるオーク。
阿鼻叫喚の地獄絵図のなか、アリスとたまきは冷静に目の前の獲物を狩り続ける。
それでいい。
まずは邪魔な雑魚を排除し、エリート・オークへの道を切り開くのだ。
そのときだった。
敵陣の奥から、身も凍るような咆哮があがる。
エリート・オークの雄たけびだった。
それが三体同時。
だが幸いにして、今回は仲間の誰ひとりしてひるまない。
アリスに猛然と接近する者がいる。
オークが逃げまどったことで集団の密度が薄くなり、エリート・オークとアリスの間に一本の道ができてしまったのだ。
エリート・オークが、アリスに突進する。
「アリス、来るぞ!」
和弘は叫ぶ。
だが彼女は、和弘の声が届く前に素早く身をひるがえし、森のなかに飛び込んだ。
エリート・オークは、アリスを追って森のなかに分け入っていく。
もう一体のエリート・オークが、たまきを追って、やはり森のなかへ入っていく。
「ミア」
「ん」
「志木さん、お願い」
「わかったわ、任せて」
ミアは樹から飛び下り、志木さんと組んで走り出す。
志木さんが森のなかでアリスやたまきを探し出し、ミアがエリート・オークの武器をヒート・メタルで落とす。
そういう作戦である。
さて、問題は残る一体、フリーとなってしまったエリート・オークなのだが……。
前への道は、逃げまどうオークで塞がれている。
左右の森に抜けるルートはある。
こいつが、どちらに向かうか。
それ次第で、今後の作戦を決めなければ……。
と、その残る一体のエリート・オークは、正面から突っ込んできた。
え?
逃げまどう周囲のオークを大斧で切り殺し、強引に距離を詰めてくる。
って、味方を殺して前進するのかよ!
まずい。
ぼくの背筋に冷たいものが走る。
ここまで強引な手に出てくるのは、ちょっと予想外だった。
こいつらにとって、仲間の命など、使い捨てのコマに過ぎないのだろう。
「逃げろ!」
和弘は落とし穴を挟んで槍を構える三人の少女に叫ぶ。
和弘の声で、僕は正気に戻り、木の上から飛び降りた。
槍を構える少女たちは、逃げなかった。
その場に踏みとどまり、穴の手前まで迫ったエリート・オークを待ち構えていた。
「守りますから!」「サモン・ウェポン」
少女たちのひとりが、叫ぶのと同時に剣を召還した。
叫んだ人間は、ぼくにおにぎりを持ってきてくれた少女だった。
「カズさんのこと、守りますから! いまのうちに、逃げてください!」
は?
とぼくは呆気にとられる。
守る?
彼女たちが、和弘を?
なぜ。
「昨日、カズさんはわたしたちを助けてくれたじゃないですか! 今度は、わたしたちがカズさんを助けますから!」
和弘は樹から飛び降りる。
少女たちの数歩、後ろだ。
僕は、和弘の数十歩後ろにいる。
「サモン・エレメンタル・アース」
僕の後方に、無骨な岩肌の巨人が現れたのと同時にエリート・オークが穴の手前で跳躍するところだった。
まずい!
エレメンタル・アースに指示を出す前に動き出す。
青銅色のオークは、高くジャンプしながら、空中で斧を振りかぶる。
さっき和弘に対して「助ける」と叫んだ少女の脳天めがけて、どでかい斧を振りおろす。
少女は一歩もひるまず、刺突を繰り出す。
槍の穂先が、エリート・オークの腹に突き刺さる。
だが青銅色のオークは微塵もひるまない。
跳躍の勢いを上乗せして、大斧を振りおろす。
キーン
と音が鳴り響く。
エリート・オークと少女が、驚愕する。
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