気づくと、ぼくは白い部屋にいた。
天井全体が蛍光灯のように光っている。
そのせいか、真昼のように明るい。
部屋の広さは、教室ひとつくらいだろう。
でも机と椅子は、ひとつきりだった。
机の上には、ノート型のPCが置かれていた。
机、椅子、ノートPC。
それが、この部屋にあるもののすべてだった。
ノートPCはすでに起動していて、エクセルのような画面がフルスクリーンで映っていた。
ぼくはおそるおそる机に歩み寄った。
PCの画面を覗き込んだ。
画面の上部にぼくの名前が書かれていた。
その下に、レベル1、スキルポイント2と書かれていた。
さらにその下には、剣とか槍とか魔法とか、そんな単語がずらずらと並ぶ表があった。
さらにその下にはスキルとして
肉体1、剣術1
と書かれていた。
ぼくは困惑して首を振った。
なんの冗談なのだろう。
これはいったい、なんなのだろう。
いや、これがなにかまったくわからないというわけではない。
これはステータス表だ。
ぼくのステータス表だ。
まるでコンピュータゲームのように、ぼくのステータスが表示されている。
といっても、筋力とか知力とかHPとかMPが書いてあるわけではない。
このゲームじみたなにかでぼくにわかるものは、レベルとスキルだけ、ということなのだろう。
そういうゲームは実際に存在する。
なかにはキャラクターの能力がすべてマスクデータのゲームもある。
さて、この画面の意味だが……。
ぼくは混乱した頭で考える。
レベルが1でスキルポイントが2ということは、ぼくはこれからスキルを2つ取ることができるということだろうか。
それともスキルごとに取得に必要なポイントが違って……。
いや、そんなことはどうでもいい。
どうでもよくないかもしれないが、いまは置いておく。
もっと重要なのは、いま、ぼくの身になにが起こっているのか、ということだ。
「誰か!」
ぼくは叫んだ。
「誰かいませんか!」
PCの画面にポップアップで文字が表示された。
「質問をどうぞ」
親切に入力ウィンドウまで現れた。
ぼくとコンピュータの応答でわかったことは、以下の通りだった。
・これは夢じゃない。
・この部屋にはぼくしかいない。プライベートルームということだ。寮は2人部屋だから、これはちょっと嬉しい。
・この部屋にいられるのは、ぼくがPCを操作してスキル取得画面を閉じるまで。その操作を行った瞬間、ぼくはもとの場所、つまり森のなかに戻されるのだという。すごい技術だ。
・この部屋のなかにいる限り、外では時間が経過しない。何年いても、コンマ一秒たりとも経過しないという。時と精神の部屋より高性能だ。びっくりするほどすごい技術だ。
・この部屋に来るための条件は、レベルアップすること。ふたたびこの部屋にやってくるには、再度、レベルアップする必要がある。レベルアップするためには、敵を殺して所定の経験値を貯めなければならない。正直、なんといっていいかわからないが、とにかくすごい。
・レベルアップするごとにスキルポイントが得られる。スキルポイントを消費してスキルを得られる。一度、取得したスキルの払い戻しは、基本的に不可能。これは不便だ。
・スキルとは、いまのぼくの身体に付与されるボーナスのようなものらしい。つまり、剣術スキルを得た瞬間、ぼくは剣の達人になる。それはさすがに嘘だ。スキルにはスキルランクがあって、ランク1では達人というほどじゃないらしい。ランクを上げるには、やはりスキルポイントを使う。
・ランク1にするためには、スキルポイント1が必要。ランク1からランク2にするためには、2ポイントが必要。同様、2から3にするには3ポイントが必要らしい。スキルランクの最大値は9だという。
・レベルがあがると、それ以外にも、人間としての頑丈さとか精神の強さみたいなのが上昇するらしい。HPとMPか。ますますゲームじみている。
・スキルランクは、あくまでもともと存在するぼくという肉体に与えられるボーナスだという。つまりもともとぼくが剣の達人なら、剣術スキルが9の人間に勝つこともできる、かもしれない。ぼくは竹刀すら体育の授業でしか握ったことがないけれど。
・武器攻撃スキルは六種類。素手戦闘、剣術、槍術、棍術、そして射撃、投擲。
・剣術スキルを持つことで、剣を持ったときの身のこなしなども上手くなる。また、斧なんかも剣術スキルの範疇であるらしい。つまり切りつける武器全般か。
・同様、槍術スキルは、竹槍のみならず突き刺す武器全般を持ったときに効果を発揮する。
・弓もパチンコも拳銃も機関銃も射撃スキル。
・ジャベリンなどの投擲にも使える槍を投げるときはどうなのだ、と訊ねた。こういった場合、槍術スキルでも投擲スキルでもOKとのこと。ダガーを投げたり、手斧を投げたりする場合も同様とのこと。
・ぼくが殺した生き物は、現地でオークと呼ばれるモンスター。現地ってなんだ。モンスターってなんだよ。
・魔法とは、マナというものを使って火をおこしたり風をおこしたりする技術らしい。
・魔法スキルは、七種類。地水火風の四種類に付与魔法と召喚魔法、それと治療魔法。スキルごとに、まったく違う魔法が用意されている。
・そのほかにも、以下のようなスキルが存在する。肉体、運動、偵察、音楽。
・肉体スキルは、筋肉増強剤みたいなもの。重いものも持てるようになる。身の丈よりでかい剣とか振りまわせるってことだろう。
・運動スキルは、身軽に動いたり、高くジャンプしたりできるらしい。足のはやさそのものは変化しないけど、瞬発力は上がるみたいだ。
・偵察スキルは、隠密行動をとったり、遠くの音を聞き分けたり、遠くのものを見たりするスキル。つまりレンジャー隊員に必要な能力とかすべてひっくるめているのか。
・音楽スキルは、音感がよくなり歌が上手くなるらしい。
・こんなものを用意した存在に関する質問には、なにひとつ回答なし。
・なぜぼくがレベルやスキルなんてものを与えられたのか、という質問に対しては、これからのぼくに必要だから、という返答が返ってきた。
・これは現実らしい。最悪である。
・死んだら蘇生する方法はない。最悪すぎる。
重要なのは、ぼくがスキルを得られるということだ。
そしていまを逃すと、次にスキルを得られるのはレベルアップしたとき。
レベルアップするためには、あのオークとかいうモンスターを倒さなきゃいけない。
スキルがなきゃ、そんなの無理ゲーだ。
よって、スキルについてまとめる。
現在、PCの画面に表示されているスキルは、以下ですべてだ。
・物理:素手戦闘、剣術、槍術、棍術、射撃、投擲
・魔法:地魔法、水魔法、火魔法、風魔法、付与魔法、召喚魔法、治療魔法
・その他:肉体、運動、偵察、音楽
合計で十七個のスキルからひとつ、あるいはふたつを選んで、ランク1にしなければならないらしい。
ポイントは使いきらなくてもいいとのこと。
ぼくは熟考し、さらにいくつかの質問を行った。
ぼくは、ついに決意して、ノートPCの前に立つ。
スキルリストから、ふたつのスキルを選んで、ランク1にする。
アキ:レベル1 剣術1/付与魔法0→1/召喚魔法0→1/肉体1 スキルポイント2→0
決定のボタンにカーソルを合わせ、エンターキーを押した。
次の瞬間、ぼくの身体は森のなかに戻っていた。
次
天井全体が蛍光灯のように光っている。
そのせいか、真昼のように明るい。
部屋の広さは、教室ひとつくらいだろう。
でも机と椅子は、ひとつきりだった。
机の上には、ノート型のPCが置かれていた。
机、椅子、ノートPC。
それが、この部屋にあるもののすべてだった。
ノートPCはすでに起動していて、エクセルのような画面がフルスクリーンで映っていた。
ぼくはおそるおそる机に歩み寄った。
PCの画面を覗き込んだ。
画面の上部にぼくの名前が書かれていた。
その下に、レベル1、スキルポイント2と書かれていた。
さらにその下には、剣とか槍とか魔法とか、そんな単語がずらずらと並ぶ表があった。
さらにその下にはスキルとして
肉体1、剣術1
と書かれていた。
ぼくは困惑して首を振った。
なんの冗談なのだろう。
これはいったい、なんなのだろう。
いや、これがなにかまったくわからないというわけではない。
これはステータス表だ。
ぼくのステータス表だ。
まるでコンピュータゲームのように、ぼくのステータスが表示されている。
といっても、筋力とか知力とかHPとかMPが書いてあるわけではない。
このゲームじみたなにかでぼくにわかるものは、レベルとスキルだけ、ということなのだろう。
そういうゲームは実際に存在する。
なかにはキャラクターの能力がすべてマスクデータのゲームもある。
さて、この画面の意味だが……。
ぼくは混乱した頭で考える。
レベルが1でスキルポイントが2ということは、ぼくはこれからスキルを2つ取ることができるということだろうか。
それともスキルごとに取得に必要なポイントが違って……。
いや、そんなことはどうでもいい。
どうでもよくないかもしれないが、いまは置いておく。
もっと重要なのは、いま、ぼくの身になにが起こっているのか、ということだ。
「誰か!」
ぼくは叫んだ。
「誰かいませんか!」
PCの画面にポップアップで文字が表示された。
「質問をどうぞ」
親切に入力ウィンドウまで現れた。
ぼくとコンピュータの応答でわかったことは、以下の通りだった。
・これは夢じゃない。
・この部屋にはぼくしかいない。プライベートルームということだ。寮は2人部屋だから、これはちょっと嬉しい。
・この部屋にいられるのは、ぼくがPCを操作してスキル取得画面を閉じるまで。その操作を行った瞬間、ぼくはもとの場所、つまり森のなかに戻されるのだという。すごい技術だ。
・この部屋のなかにいる限り、外では時間が経過しない。何年いても、コンマ一秒たりとも経過しないという。時と精神の部屋より高性能だ。びっくりするほどすごい技術だ。
・この部屋に来るための条件は、レベルアップすること。ふたたびこの部屋にやってくるには、再度、レベルアップする必要がある。レベルアップするためには、敵を殺して所定の経験値を貯めなければならない。正直、なんといっていいかわからないが、とにかくすごい。
・レベルアップするごとにスキルポイントが得られる。スキルポイントを消費してスキルを得られる。一度、取得したスキルの払い戻しは、基本的に不可能。これは不便だ。
・スキルとは、いまのぼくの身体に付与されるボーナスのようなものらしい。つまり、剣術スキルを得た瞬間、ぼくは剣の達人になる。それはさすがに嘘だ。スキルにはスキルランクがあって、ランク1では達人というほどじゃないらしい。ランクを上げるには、やはりスキルポイントを使う。
・ランク1にするためには、スキルポイント1が必要。ランク1からランク2にするためには、2ポイントが必要。同様、2から3にするには3ポイントが必要らしい。スキルランクの最大値は9だという。
・レベルがあがると、それ以外にも、人間としての頑丈さとか精神の強さみたいなのが上昇するらしい。HPとMPか。ますますゲームじみている。
・スキルランクは、あくまでもともと存在するぼくという肉体に与えられるボーナスだという。つまりもともとぼくが剣の達人なら、剣術スキルが9の人間に勝つこともできる、かもしれない。ぼくは竹刀すら体育の授業でしか握ったことがないけれど。
・武器攻撃スキルは六種類。素手戦闘、剣術、槍術、棍術、そして射撃、投擲。
・剣術スキルを持つことで、剣を持ったときの身のこなしなども上手くなる。また、斧なんかも剣術スキルの範疇であるらしい。つまり切りつける武器全般か。
・同様、槍術スキルは、竹槍のみならず突き刺す武器全般を持ったときに効果を発揮する。
・弓もパチンコも拳銃も機関銃も射撃スキル。
・ジャベリンなどの投擲にも使える槍を投げるときはどうなのだ、と訊ねた。こういった場合、槍術スキルでも投擲スキルでもOKとのこと。ダガーを投げたり、手斧を投げたりする場合も同様とのこと。
・ぼくが殺した生き物は、現地でオークと呼ばれるモンスター。現地ってなんだ。モンスターってなんだよ。
・魔法とは、マナというものを使って火をおこしたり風をおこしたりする技術らしい。
・魔法スキルは、七種類。地水火風の四種類に付与魔法と召喚魔法、それと治療魔法。スキルごとに、まったく違う魔法が用意されている。
・そのほかにも、以下のようなスキルが存在する。肉体、運動、偵察、音楽。
・肉体スキルは、筋肉増強剤みたいなもの。重いものも持てるようになる。身の丈よりでかい剣とか振りまわせるってことだろう。
・運動スキルは、身軽に動いたり、高くジャンプしたりできるらしい。足のはやさそのものは変化しないけど、瞬発力は上がるみたいだ。
・偵察スキルは、隠密行動をとったり、遠くの音を聞き分けたり、遠くのものを見たりするスキル。つまりレンジャー隊員に必要な能力とかすべてひっくるめているのか。
・音楽スキルは、音感がよくなり歌が上手くなるらしい。
・こんなものを用意した存在に関する質問には、なにひとつ回答なし。
・なぜぼくがレベルやスキルなんてものを与えられたのか、という質問に対しては、これからのぼくに必要だから、という返答が返ってきた。
・これは現実らしい。最悪である。
・死んだら蘇生する方法はない。最悪すぎる。
重要なのは、ぼくがスキルを得られるということだ。
そしていまを逃すと、次にスキルを得られるのはレベルアップしたとき。
レベルアップするためには、あのオークとかいうモンスターを倒さなきゃいけない。
スキルがなきゃ、そんなの無理ゲーだ。
よって、スキルについてまとめる。
現在、PCの画面に表示されているスキルは、以下ですべてだ。
・物理:素手戦闘、剣術、槍術、棍術、射撃、投擲
・魔法:地魔法、水魔法、火魔法、風魔法、付与魔法、召喚魔法、治療魔法
・その他:肉体、運動、偵察、音楽
合計で十七個のスキルからひとつ、あるいはふたつを選んで、ランク1にしなければならないらしい。
ポイントは使いきらなくてもいいとのこと。
ぼくは熟考し、さらにいくつかの質問を行った。
ぼくは、ついに決意して、ノートPCの前に立つ。
スキルリストから、ふたつのスキルを選んで、ランク1にする。
アキ:レベル1 剣術1/付与魔法0→1/召喚魔法0→1/肉体1 スキルポイント2→0
決定のボタンにカーソルを合わせ、エンターキーを押した。
次の瞬間、ぼくの身体は森のなかに戻っていた。
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