様々な小説の2次小説とオリジナル小説

 それからまた少し飛行し、ぼくたちはついに、テパトの寺院に辿りつく。
 それは森のなかに唐突に出現した野球場くらいのおおきさがある虹色に輝くドーム状の建造物だった。
 天井の部分が不定期なリズムで脈動しているせいで、まるで生き物のようだ。

 いや、ひょっとしたら本当に生き物……なのか?

 わからない。
 とにかく、あまりにも異形すぎる存在だ。

「ルシア、リーンさん、アリハ、これって……」

 いちおうこの世界の住人である三人に訊ねてみたけれど、芳しい返事は得られなかった。
 シャ・ラウも『このような存在、われの記憶にはない』と首を振る。

「ん。やっぱSAN値直葬系なのでは」

「ミアちゃんにツッコミ入れたいけど、なんだかわたしも……それ系に思えてきたわ」

 志木さんの乾いた笑いが響く。
 ぼくとしても、なんかこれそんな感じっぽいなーと思い始めていたりする。

「聖女ポクル・ハララによれば、魔王はこの地に大切なものを保管していると捕らえたモンスターが話したとのことです」

 リーンさんが、鷹の口で語る。

「この地に近づくことは、配下のモンスターであってもまかりならないと」

「そのモンスターさん、なんでそんなことを知っていたのかしらー?」

「以前、この幽雷湿地の近くで警備の任についていたホブゴブリンであったとのことです」

 あー、ホブゴブさんかー。
 たしかにあいつら、警備員っぽい。
 で、そんなやつらだから、モンスター軍の領地についてあちこち詳しくてもおかしくはないのか。

 しかし、配下のモンスターも近づけない場所なのにいた、あのクラゲは……。
 よほど特殊なガーディアンなのだろうか。
 たまたまあそこに住みついただけという可能性は……ないよなあ。

「とりあえず、偵察してみるか」

 ぼくたちは虹色に輝く東京ドーム風の建物から少し離れ、木陰に隠れる。
 結城先輩と啓子さんが周囲を警戒するなか、和弘はグレイウルフを召喚する。

 グレイウルフをドームに近づけさせる。
 ここからだと入り口が見当たらないから、まわりをうろつかせてみたのだが……。

 グレイウルフがドームから数歩の距離に近づいたとたん、壁面の一角が動いた。
 半円の穴が生まれる。
 穴の内部は、真っ暗に見えた。

「自動ドアか」

 グレイウルフは警戒しながらドームのなかへ入っていって……。

「死んだ……? いや、生きているな。召喚者だから、それはわかるんだけど……でも同調が途切れるって、どういうことだ」

「なんらかの結界の内部に入ってしまったのでしょう」

 リーンさんの声。
 なるほど、そういうこともあるのか……。
 まあそうか、偵察魔法系の対策くらい、この世界にも存在するよなあ。

「定番の使い魔偵察ができないとなると、どうするかな」

「どうするもなにも、いくしかない」

 ミアがいった。
 ない胸を張り、「根性と度胸」と宣言する。

「魔王に関する情報とかいらないっていうなら、その限りじゃないけど」

「それは……まあ、そうだな。ここまで来た以上、逃げ帰るなんてのはナシだ」

 でもそうなると、レベルの低い志木さんは連れていけないなあ。
 百合子、潮音、アリハも厳しい。
 ここは六人一パーティに絞るべきだろう。

「ぼくたちのパーティから志木さんが抜けて、かわりに結城先輩か啓子さんが入ってもらうかたちがいいかな」

「そうね。わたしとしても、あんな得体のしれないところにレベル14で突っ込むつもりはないわ」

「わたしがいくわー。たぶん、偵察スキルが高い方がいいでしょうしー」

 啓子さんは偵察スキルを中心に上げ、いまランク7であるとのこと。
 なんとも頼もしい限りである。

「拙者としては、自分の目であの内部を観察したいところでござるが……」

「だーめ。それに第一、ユウくんはリーダーなんだから」

 ま、普通はそうだよな。
 リーダーが率先して偵察に出る組織っておかしいよな。
 で、いまここに高等部のリーダーと育芸館組のリーダーが揃ってるんですけどね……。

「とりあえず、ちょっとなかを見て、撤退できるようならすぐ撤退って感じでいこうと思う」

 和弘はいった。
 こんな未知の状況で、無理をすることはない。
 偵察にいく全員にナイトサイトをかける。

「無理をしてはならぬでござるよ」

「くれぐれも、気をつけてね」

 和弘、アリス、たまき、ミア、ルシア、そして啓子さんの六人で、虹色のドームに近づいていき、中に入っていった。


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