それからも、何度か先頭を行くアルファ号への襲撃があった。
半分は、啓子さんがリフレクションで彼方に吹き飛ばした。
残る場合も、たいていはベータ号のファイアボール連打で終わった。
船底にガツンとおおきなものがぶつかる音とともに、和弘たちの身が投げ出される。
くるくると宙を舞い……。
「和弘たちを回収する。来るよ」
「はい」
僕たちは、和弘たちをベータ号に拾った。
見れば、巨大なヌルヌルの触手が、アルファ号を覆い尽くして水のなかに沈んでいく。
ベータ号に乗ったぼくたちは、慌ててその場を離れた。
戦えば勝てるかもしれないけど、敵はこの不気味に濁った水中だ、誰だってこのなかに入りたくはない。
「油断すると、これね」
「いやはや、まったくだ。こっちの気が緩んだところを見透かされた感じだよ」
「で、ござるな。拙者たちも気合を入れ直すでござるよ」
ベータ号で、そんなことを話す。
「兄が殊勝で気持ちが悪い」
ミアは軽口を叩き、啓子さんに「もー、そんな憎まれ口叩いちゃだめよー」とたしなめられていた。
「はい、ごめんなさい」
「おまえ……啓子さんには素直なんだな」
「相手を見て卑屈に態度を変えるのが社会の処世術」
「新しい船を召喚するよ」
ぼくたちは、安全距離まで逃げたあと、ガンマ号を召喚していた。
アルファ号の乗員がそのままガンマ号に乗り移り、移動を再開する。
そうして、空飛ぶ船の旅は合計で三十分ほど続き……。
ぼくたちは、陸地に辿りつく。
旅の終着点だ。
霧を割って、乾いた土地が見えた。
木製の桟橋がある。
綺麗に掃除されたピカピカの桟橋だ。
って……え、こんなところにある桟橋が、ピカピカに磨かれているの?
おかしくないか……?
とぼくが不審に思う間にも、アリスが操縦する空飛ぶ船は桟橋に近づく。
「待つでござる、あれは嫌な予感が……っ」
結城先輩が叫ぶ。
でも、その警告は少しだけ遅かった。
桟橋から黒い棒状のものが、無数に伸びる。
次の瞬間。
高さ五メートルで飛ぶガンマ号を、強い衝撃が襲った。
アリスと志木さんの悲鳴。
「アリス、脱出だ!」
和弘は志木さんに抱きつき、そのまま空中を駆けて船から離脱。
結城先輩と啓子さんも同じく船から脱出したようだ。
その直後、船体が中央から真っ二つに割れる。
船の甲板から、黒い細長いものが無数、出現した。
ぼくたちに襲いかかってくる。
舵から手を放すのを躊躇したためわずかに逃げ遅れたアリスが、それに身を貫かれる。
少女の悲鳴。
「アリスっ」
桟橋に背を向けていたアリスは、親指くらいの太さの黒い棒に左脇腹と右肩をえぐられ、串刺しとなる。
手足がちからなく垂れ下がっていた。
愛用の槍は、いま手放していて、甲板に転がったままだ。
和弘たちは追ってくる黒い棒から逃げた。
なんだこれ、触手みたいなものか?
「ミア」
「ん、アリスちんを助けるよ」
ベータ号は、そのままガンマ号の残骸に向かって突進していた。
「「ホワイト・カノン」」
アリスの胴体を抉っていた棒の甲板から生えた付け根あたりに、2つの白いビームが命中する。
ミアとアリハの必殺風魔法だ。
黒いドリルが真っ二つになる。
アリスはそれを受けて、己の身をおおきく振る。
獣のような叫び声。
右肩のドリルを強引に引きはがす……というか右腕の肉ごと引きちぎってみせる。
「アリス、だいじょうぶっ?」
ちからなく倒れる彼女のもとに、たまきが駆け寄る。
たまきは剣を右手に握ったまま、左腕でだけでアリスを抱えた。
そんな彼女たちを、桟橋から伸びた黒いドリルが襲うも……。
「フレイム・カッター」
百合子と潮音の炎魔法が、ドリルに衝突しこれを潰す。
「インフェルノ」
さらにルシアの爆炎が、残るドリルを焼き尽くす。
大爆発が起こる。
アリスを抱えたたまきが、宙をくるくる舞う。
「タマキは、ハクカの下にアリスを」
「いまのうち、砲撃を続けて!」
「ミア、風で視界をクリアに。ルシア、タイミングを合わせて三倍のプロミネンス・スネーク。目標、桟橋」
「ん、了解」
「わかりました、カズ」
「きみのこと、すっかり忘れてた」
「でしょうね。もっと熱烈にハグしてくれるのかしら」
ミアがテンペストで強引に煙を吹き飛ばす。
タマキがアリスをハクカの下に連れて行く。
ハクカはアリスにリヴァイブを使用し、傷口を再生させる。
と同時に、ルシアが魔力解放で三倍のプロミネンス・スネークを使用する。
巨大な炎の蛇が、ドリルの触手を漂わせる桟橋に吸いこまれ……。
巨大な爆発が起こる。
ふう……なんとか倒せたか。
次
半分は、啓子さんがリフレクションで彼方に吹き飛ばした。
残る場合も、たいていはベータ号のファイアボール連打で終わった。
船底にガツンとおおきなものがぶつかる音とともに、和弘たちの身が投げ出される。
くるくると宙を舞い……。
「和弘たちを回収する。来るよ」
「はい」
僕たちは、和弘たちをベータ号に拾った。
見れば、巨大なヌルヌルの触手が、アルファ号を覆い尽くして水のなかに沈んでいく。
ベータ号に乗ったぼくたちは、慌ててその場を離れた。
戦えば勝てるかもしれないけど、敵はこの不気味に濁った水中だ、誰だってこのなかに入りたくはない。
「油断すると、これね」
「いやはや、まったくだ。こっちの気が緩んだところを見透かされた感じだよ」
「で、ござるな。拙者たちも気合を入れ直すでござるよ」
ベータ号で、そんなことを話す。
「兄が殊勝で気持ちが悪い」
ミアは軽口を叩き、啓子さんに「もー、そんな憎まれ口叩いちゃだめよー」とたしなめられていた。
「はい、ごめんなさい」
「おまえ……啓子さんには素直なんだな」
「相手を見て卑屈に態度を変えるのが社会の処世術」
「新しい船を召喚するよ」
ぼくたちは、安全距離まで逃げたあと、ガンマ号を召喚していた。
アルファ号の乗員がそのままガンマ号に乗り移り、移動を再開する。
そうして、空飛ぶ船の旅は合計で三十分ほど続き……。
ぼくたちは、陸地に辿りつく。
旅の終着点だ。
霧を割って、乾いた土地が見えた。
木製の桟橋がある。
綺麗に掃除されたピカピカの桟橋だ。
って……え、こんなところにある桟橋が、ピカピカに磨かれているの?
おかしくないか……?
とぼくが不審に思う間にも、アリスが操縦する空飛ぶ船は桟橋に近づく。
「待つでござる、あれは嫌な予感が……っ」
結城先輩が叫ぶ。
でも、その警告は少しだけ遅かった。
桟橋から黒い棒状のものが、無数に伸びる。
次の瞬間。
高さ五メートルで飛ぶガンマ号を、強い衝撃が襲った。
アリスと志木さんの悲鳴。
「アリス、脱出だ!」
和弘は志木さんに抱きつき、そのまま空中を駆けて船から離脱。
結城先輩と啓子さんも同じく船から脱出したようだ。
その直後、船体が中央から真っ二つに割れる。
船の甲板から、黒い細長いものが無数、出現した。
ぼくたちに襲いかかってくる。
舵から手を放すのを躊躇したためわずかに逃げ遅れたアリスが、それに身を貫かれる。
少女の悲鳴。
「アリスっ」
桟橋に背を向けていたアリスは、親指くらいの太さの黒い棒に左脇腹と右肩をえぐられ、串刺しとなる。
手足がちからなく垂れ下がっていた。
愛用の槍は、いま手放していて、甲板に転がったままだ。
和弘たちは追ってくる黒い棒から逃げた。
なんだこれ、触手みたいなものか?
「ミア」
「ん、アリスちんを助けるよ」
ベータ号は、そのままガンマ号の残骸に向かって突進していた。
「「ホワイト・カノン」」
アリスの胴体を抉っていた棒の甲板から生えた付け根あたりに、2つの白いビームが命中する。
ミアとアリハの必殺風魔法だ。
黒いドリルが真っ二つになる。
アリスはそれを受けて、己の身をおおきく振る。
獣のような叫び声。
右肩のドリルを強引に引きはがす……というか右腕の肉ごと引きちぎってみせる。
「アリス、だいじょうぶっ?」
ちからなく倒れる彼女のもとに、たまきが駆け寄る。
たまきは剣を右手に握ったまま、左腕でだけでアリスを抱えた。
そんな彼女たちを、桟橋から伸びた黒いドリルが襲うも……。
「フレイム・カッター」
百合子と潮音の炎魔法が、ドリルに衝突しこれを潰す。
「インフェルノ」
さらにルシアの爆炎が、残るドリルを焼き尽くす。
大爆発が起こる。
アリスを抱えたたまきが、宙をくるくる舞う。
「タマキは、ハクカの下にアリスを」
「いまのうち、砲撃を続けて!」
「ミア、風で視界をクリアに。ルシア、タイミングを合わせて三倍のプロミネンス・スネーク。目標、桟橋」
「ん、了解」
「わかりました、カズ」
「きみのこと、すっかり忘れてた」
「でしょうね。もっと熱烈にハグしてくれるのかしら」
ミアがテンペストで強引に煙を吹き飛ばす。
タマキがアリスをハクカの下に連れて行く。
ハクカはアリスにリヴァイブを使用し、傷口を再生させる。
と同時に、ルシアが魔力解放で三倍のプロミネンス・スネークを使用する。
巨大な炎の蛇が、ドリルの触手を漂わせる桟橋に吸いこまれ……。
巨大な爆発が起こる。
ふう……なんとか倒せたか。
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