様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「我がファブレ騎士爵領は、実はその領域の広さでいえば、大公領に匹敵するほどの広さを誇るんだよ」

 朝食後。
 僕は、ローラン兄さんから、自分の実家であるファブレ騎士爵領の実情について説明を受けていた。
 僕の新しい故郷であるファブレ騎士爵領は、主家でもあるヘルムート王国領土内の南東端にある。
 六歳の子供が急にこんな難しい質問をするのでおかしいと思われるかもしれなかったが、新しい両親も含め、他の兄弟たちも特に違和感を覚えていないようだ。

「では、全てを開発すれば父上は・・・」

「開発できたら・・・辺境伯は堅いだろうね」

 ただローラン兄さんの口調は鈍く、あくまでももし開発できたらと付け加えるのを忘れなかった。
 ファブレ騎士領内は、全領域が海に面している。
 だが、ファブレ騎士家が辛うじて開発できた土地と海の間には、広大な未開地が広がっている。
 未開地には、様々な自然の食材や薬草や鉱物や宝石が産出する場所もあり、膨大な富が眠る場所であると同時に多数の魔物領域も内包していたりする。

 魔物とは、野生動物が巨大、凶暴化したり、明らかに自然の生態系から一脱したような生き物のことを指す。
 彼らは繁殖力が旺盛で、その強さは、最弱の魔物で普通の人間が歯が立たないほどである。その代わり、彼らを倒すと毛皮や牙や肉などは高級な素材や食料が手に入る。
 だからこそ、魔物の討伐を専門とする冒険者たちや彼らを支援、管理する冒険者ギルドが存在するわけだが、問題なのはその冒険者ギルドにすら支部設置を断られるほど、このファブレ騎士領が辺境にあるという事実であろう。

「確かに天地の森は強い冒険者にとっては実入りが大きいのかもしれない。けれど、あのくらいの魔物の領域は、大陸中に何千箇所も存在していてね」

 リンガイア大陸には、このような魔物の住まう領域というのが大小何千箇所も存在しているらしい。
 それは、荒野だったり、平原だったり、川や湖沼だったり、森だったりとする。
 とにかく一定の領域が魔物のテリトリーとなっていて、そこに侵入する人間や他の動物たちを見つけると排除してしまう。
 先程、父が話していたブライヒレーダー辺境伯家諸侯軍の悲惨な最期は、魔物の縄張り意識を軽視した結果のようであった。

「ブライヒレーダー辺境伯軍の最期に関しては、あれは先々代ブライヒレーダー辺境伯も焦り過ぎ・・・というのかな」

 だが、単独や少人数でこっそりと魔物の領域に侵入し、その力量に合わせて小数の魔物を狩ってくる冒険者という仕事はちゃんと成立しているそうだ。

 勿論途中で命を落す者たちも多いが、危険な分実入りも大きいので、一代で財を成し、有名になって国や貴族に仕える者たちも多いとローラン兄さんが教えてくれた。

「ですがローラン兄さん。どうして、冒険者ギルドから支部の設置を断られたのですか?」

「とても手が回らないってさ」

 そう、魔物の住まう領域は王都の近くにも複数存在しているのだ。
 彼らは、大規模に繁殖しない限り、自分たちのテリトリーからは一歩も出てこないのだが、逆に侵入した冒険者や軍勢には容赦をしない。

 一攫千金を求めて魔物の領域へと侵入する人間と、それを排除しようとする魔物たちとの死闘。

 そんな事情があり、いくら多くの人たちが冒険者となってもその分損耗もするので、リンガイア大陸にはいまだ中央部にも手付かずの魔物の住まう領域が多数存在している。

 当然これら領域の開発など不可能なので、ヘルムート王国もアーカート神聖帝国も魔物の住まう領域を『大陸の痣』と呼んで悩みの種となっていたのだ。

「考えてもみるんだ。いくら辺境とはいえ、たかが騎士爵しか持たない我がファブレ騎士爵領が広大な領域を有するのかを」

 ファブレ騎士領の興りは、ずっと王都で無役で燻っていた貧乏騎士の次男が数十名の貧民たちを連れ、この地に農村を開いたのが始まりらしい。

「王宮は、まさかこの地に人間が農村を開けるとは思っていなかったようで、ご先祖様が村の設置に成功したと報告を受けると、すぐにリーグ大山脈南東を含めた領土をファブレ騎士爵領と認めたんだよ」

 とはいえ、このファブレ騎士領は辺境にあり、外部との交流手段も乏しかった。

「北西部の領域境を走る山脈の麓に開いた村が1つと人口が約292人。主産業は農業と製糸と狩猟かな」

 隣人には、天地の森に関わって痛い目を見たブライヒレーダー辺境伯領が北西部、うちと同じような弱小領主連合の領地が固まっているのが北部、ブロワ辺境伯領が北東部、ファブレ騎士領と同じ事情のバウマイスター騎士爵領が西部にあるそうだ。

 ただ、その間には飛竜が群れを作って生息する山脈が走り、他にも海には、竜に似た海竜などの魔物が多数生息するのだ。彼らとの交流はバウマイスター騎士爵領とオイレンベルク騎士爵領を除くと数ヶ月に一度訪れる商隊との交易のみであった。

「辛うじて、護衛付きなら通れる山道が存在するらしい。ただ冒険者たちによる護衛は必須だからね。その分、商品代金は、高く付いてしまうんだ」

「そんなに高いんですか?」

「王都からファブレ騎士領までの商隊費用が1パーティにつき84万セントほどかかるわけだけど、商品1kg当たりの輸送代金が大よそ210セントかな」

「・・・高いですね」

 ローラン兄さんは苦笑しながら説明を続けてくれたが、ようするに四方を魔物の住まう領域に囲まれ、その地も含めて膨大な未開地が領地として王国から認められているものの、開発が非常に困難な状態にある田舎の弱小領。

 これが、僕の新しい家であるファブレ騎士爵家の現実であるようであった。



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