様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「……」

 あの睡眠学習とでも言おうか、夢の中でルークの情報を得た僕はその後すぐに目を醒ました。
 ベッドから起き上がり、着替えて、髪を梳き、身支度を整える。
 夢の中の情報で分かっている通り、僕の洋服は、長女のクリス姉さんのお下がりである。お下がりなのでほつれた後のある場所は、クリス姉さんが縫ってくれたおかげで問題なく着ることが出来るのだ。問題があるとしたら、スカートであることと中性よりの女顔なので女に間違われることぐらいである。スカートが原因で女に間違われるのかと思い、ローラン兄さんのボロボロのお下がりを着てみたのだが、女に間違われただけであった。
 ちなみに僕がローラン兄さんのお下がりでなくクリス姉さんのお下がりを着ている理由も洋服がぼろすぎて、領主の子供が着るのは問題だと思われ、父によって古くなった洋服が村人たちに下賜されたのだ。そのためクリス姉さんの洋服しか残っていないのだ。

 身支度が終わったので、屋敷の食堂で朝食を食べていた。

 屋敷とはいえ、そこは下級貴族。
 それなりの部屋数はあったし、書斎や食料や金品・武具などをしまう倉庫などもあったが、実際にこの家で個人の部屋が貰えるのは、当主トール(55歳)と正妻アン(45歳)と側室のオリヴァー(35歳)の他には、マリオとニコとクリス姉さんだけであった。

 残りのオットーとカールとローラン兄さんと僕は、共同男部屋、ハンナとユリが共同女部屋に割り当てられていたのだ。

 あとは屋敷を維持する使用人であったが、先代から仕えている執事のアーベル七十一歳がいるだけらしい。本来なら使用人としてメイドがいるのだろうけど、僕が産まれる前に疫病が流行り、領民たちの3分の1が亡くなった為、メイドを雇う余裕がなくなったそうだ。現在、料理や掃除は、母や側室やクリス姉さんたちの女性陣が行っている。

 他にも、戦時に諸侯軍を指揮する従士たちなどもいるのだが、屋敷にはおらず、普段は、村の見回りをしながら、たまに呼び出されて訓練するくらいだそうだ。

 有事の際に、忠誠を誓った主家のために兵を出す。

 そのために狭いとはいえ領地を貰っているのだが、肝心の戦争とやらはここ二百年以上も発生していないらしい。
 そもそも、この現当主トール・フォン・ストラトス・ファブレが治めるファブレ騎士爵領は、主家であるヘルムート王国領の東南端にある。
 現在ヘルムート王国の仮想敵国は、王国のあるリンガイア大陸をほぼ南北で二分しているアーカート神聖帝国だけである。
 さらにこの両国は、ヘルムート王国は南方未開発領域に、アーカート神聖帝国は北方の未開発領域の開発に資金と労力を多く費やしていた。

 つまり、両者共に戦争などしている余裕がない、必要性を感じていなかったのだ。
 それでも今から二百年前くらいまでは、数年に一度は諸侯軍の召集があったらしい。
 だが、無駄に人、金、食料、物資を消費して損ばかりであるという理由から、国境線を確定して停戦条約を結んでしまっていた。
 その後両国間で貿易も始まってしまったので、今では極一部の強硬派を除いて、戦争などという言葉を口にする者たちはいなくなってしまったそうだ。

 どうやら、戦争にだけは借り出されないで済むらしい。
 その部分では、ラッキーとも言える。

「あなた、いかがなされましたか?」

 朝食は、パンが2つと一口サイズのチーズのみである。
 なんとも味気ない食事であった。
 貴族は一日三食、農民は一日二食。
 パンとスープのメニューに、身分差はあまり存在しないらしい。
 そこに、ジャム、バター、チーズ、紅茶などがつく。
 もしくは、スープの具が貧しいか豪華になるくらい。
 農村と都市部、他にも地域によっても大分差はあるようだが、僕が聞いている範囲ではそういうことのようであった。
 それが事実なのかは、外の地域に行ってみないとわからないのだが、我がファブレ騎士爵領は、スープを作るのですら困るほど貧しい方のようだ。ルークの幼い頃の記憶を探ってもスープや肉や果物が食事に出た記憶が一切ないのだ。

 いつもボソボソとしたパン2つとチーズだけの食事であった。

「冒険者ギルド支部の設置だが、見事に断られてしまった」

「まあ、お仕事ならいくらでもありましょうに」

「もっと開けていて、交通の便もいい、同じように稼げるポイントならいくらでもあるそうだ」

 我が新しい父は、苦虫を噛み潰したような表情をしていた。
 前に、この新しい世界には魔法が存在することが確認されたが、今度は冒険ギルドまで存在する事実も確認された。

「うちの領内の魔物は手強いからな……」

「父上、ここは一度軍を召集してある程度を一気に狩らないと」

「マリオ、それはできんのだ。・・・ブライヒレーダー辺境伯殿の二の舞はゴメンだからな」

 マリオが、『領内で軍を集めて一気に討伐しては?』と進言したが、それは父の苦々しい口調によって退けられてしまった。

「あの……お父様?」

「なんだ?ルーク。パンやチーズのお替りなら無いぞ」

「いえ、パンやチーズのお替りの話ではなくて、ブライヒレーダー辺境伯様が魔物の討伐軍を出した件についてです」

「ああ、そういえば、ルークは産まれたばかりだったな。数年前に一部の利権を条件にファブレ騎士爵領内の魔物の討伐をお願いしたのだが……」

 相当の利権を条件に断腸の思いでお願いしたらしいのだが、下手に大軍で魔物の領域に攻めたために向こうを無駄に刺激してしまい、ブライヒレーダー辺境伯の二千人の軍勢は哀れ壊滅的な打撃を受けたそうだ。
 直後にブライヒレーダー辺境伯は代替わりをし、新しい当主の最初の仕事が、壊滅した諸侯軍の建て直しだったらしいので、相当に大損害だったようだ。

「新しいブライヒレーダー辺境伯殿に言われたよ。『他領の利権を貰うなど、貴族としては相応しくないので・・・』とな。ようするに、二度と我がファブレ騎士爵領内の魔物たちとは関わらないということだな」

 どうやら僕は、とんでもない魔境で成人までを過ごさなければいけないようであった。



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