様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「おい、あの子は確か……」

「お館様の八男で、名前は確か……ルーク様だったような……」

「なにをしているのかな?」

「さあ? うちのような村では、子供でも貴重な労働力なんだがな。噂によると、あまり働き者の気質は持っていないらしい」

「お館様のお子だからなぁ。迷惑にさえならなければ問題ないべ」

「そうだな。触らぬ神になんとやらだ」

 マリオが結婚し、他の姉兄さんたちが家を出てから、領内の平原を走り抜けていた。
 途中、農作業に向かう農民たちが僕の噂話をしてるのが聞こえる。
 その内容は、『家の手伝いもしない、我が侭な末っ子』というのはとっくに理解している。
 いや、敢えてそうなるように父やマリオが噂を流していたのだ。
 ローラン兄さんとクリス姉さんが出て行ってからの僕の立ち位置は微妙なものになっていた。
 お家騒動に発展させないための措置であることは、想像に難くないのだ。
 父から家の手伝いをしない代わりに自由に外に出ても良いという許可を得ていた。
 外に出れば、自由に動いても問題はないはずだ。
 なぜなら、このファブレ騎士爵領はとにかく広い。
 その中で父たちが認識している領域は、北西部の山脈の麓にある人口240人が住んでいる村と森などを含めて大よそ800k屬療效呂阿蕕い澄

 しかし実際には、ファブレ騎士爵領の領地や権利は、実は開発さえ出来れば大公領となれる可能性を秘めていた。
 秘めているのと、それを実際にできるのかどうかには、大きな隔たりが存在していた。
 何しろファブレ騎士爵領の未開地には、天地の森を含めて多数の魔物領域が数十万箇所も存在していたのだ。 

 父に言わせると特に海が惜しいようだ。
 多くの野生動物や魔物が跳梁跋扈する南の未開地を突破できなければ開発すら困難なわけでだ。
 ただ他に手を出せる貴族は皆無であり、よそに取られる心配だけはなかった。
 開発できれば大量の魚産物が手に入り、港を作って、貿易や海運と夢は広がる一方だ。


 
 とまあ、我がファブレ騎士爵領の実情はこんな所であったが、僕はとりあえずは行動範囲を広げるために動いていた。

「さて、今日こそは天地の森を拝むぞ」

 現在、僕が集中的に訓練を行っている魔法は、『飛翔』と『瞬間移動』の二つであった。
 両方とも、魔法自体はすぐに使えるようになっていた。
 最初にあまりよく考えないで『飛翔』のスピードを上げた結果、息が詰りかけたのはいい思い出であったが、それは自分の体を空気の膜で防御するようになってからは発生していない。
 スピードも高速道路を走る車並には出ているので、これも特に問題はないであろう。
 さらに、一度覚えたポイントには『瞬間移動』ですぐに可能となった。
 あまりに順調なので、海まで到達するのはあっという間という思いが頭の中に浮かんだのだが、実際にはまだ天地の森に到着していなかった。

 なぜなら、人が住んでいる地域以外の地図すらなかったので、天地の森に行くまでの未開地の地図を作成しながらこの1ヶ月をすごしていたからだ。

 しかし、この1ヶ月でわかったことであったが、この未開地は宝の山だ。

 開墾可能な土地は多いし、治水工事は不可欠だが河川が多くて水には困らない。

 点在する林や森は様々な産物の宝庫だし、鉄、銅、金、銀、各種宝石を産出する鉱山すら複数存在していた。
 開発さえできれば、ファブレ騎士爵領は辺境伯領にジョブチェンジ可能であろう。
 ただそれは、現時点では夢物語であった。
 王国はまだ中央部の開発すら半分も終わらせておらず、南部辺境にも多くの大小様々な貴族たちが配置されていたが、彼らも自領に開発可能な未開地を多数抱えていたからだ。

 ようするに、このファブレ騎士爵領の未開地に送る人間や資金が不足していたのだ。

 この地の開発が始まるのは、多分数数万年も先であろう。

 というわけで僕とハクカは、無人の未開地で自由に採取をしたり、

「・・・・ん・・・ぁ・・・・」

 ハクカと『器合わせ』をしていた。
 ハクカから漏れる熱帯びた吐息にドキリとした。
 『器合わせ』を終えるとハクカが僕に力なく寄りかかってきた。

「大丈夫」

「・・・う・・・ん・・・」

 僕とハクカの魔力量は、同じぐらいである。
 『器合わせ』を終えると新しい魔法の練習場として利用していた。
 特に高威力の上級攻撃魔法練習には、この誰もいない未開地は格好のポイントとも言えた。

 あとは、特殊魔法の練習であろう。
 鉱山で、適当に集めた鉱石を『鑑定』をして複数の成分の詳細を調べる。成分が分かると1つの成分だけを『抽出』してから『再結合』をして純度100%の金属を作る。

『鑑定』とは、文字通りに何かを鑑定する物で無属性魔法に分類される物である。『鑑定』のレベルが上がると名称だけでなく品質や効果などが判明するのだ。

『抽出』とは、特定の成分を抽出する特殊魔法である。主に鉱石の成分を抽出するために土系統の特殊魔法で分類されるが実際は、水や風等の成分も抽出できるので無属性+該当する属性の魔法同時行使の特殊魔法に該当する魔法である。

『再結合』とは、特定の成分を再度結合させる特殊魔法である。これも『抽出』と同じで主に鉱石の成分を『再結合』させるために土系統の特殊魔法だと分類されているのだ。

 他にも上級魔法として、銀に魔力を添加してミスリルを生成するというものもある。
 使用する魔力に比して出来上がるミスリルの量は少なく、低品質である。高品質のミスリルを作りたいなら銀に魔石を加えて錬金釜で錬金するか一定の魔力を長時間放出すると高品質のミスリルが作れるのだ。

 なお、僕よりも先にこの未開地どころか天地の森に到達した先々代ブライヒレーダー辺境伯とその軍勢と、我がファブレ騎士爵家諸侯軍だが、彼らはただ天地の森までの最短距離を移動のみしたらしい。

 せめて鉱山の一つくらい見つけてくれたら、彼らも無茶をしなかった……そんなわけないか。

 よくよく考えると、こんな辺鄙な未開地に採掘者を大量に送るのは難しいし、目先の天地の森産の素材などに目が眩んで無視されたのであろうと容易に予想できた。

「くらいもりだよ……なにかでそうだよ……」

 今日、ついに天地の森をその視界におさめることに成功した。
 昼なのに外からでもわかるほど不気味な薄暗い森で、耳には不気味な鳥の鳴き声や聞いたこともないような魔物の叫び声や悲鳴なども聞こる。

 どう考えても、6歳の子供が2人で入っていいような場所には見えなかった。
 ハクカが怯えながら、僕の手を掴んでいる。

「まあ、成人するまで入るつもりはないけど」

 いくら魔法が使えても、その身体能力を強化できるとしても。
 この程度の実力で油断して天地の森に入っても、今の僕だと死んでしまう可能性があったからだ。
 もしかしたら大丈夫かもしれないが、それを自分の命をチップに試すつもりは僕にはなかった。
 この世界は、ゲームではない。
 一度死んでも、コンティニューするというわけにはいかないのだ。
 もう少し大きくなってから剣や他の武芸の訓練を始め、それがある程度形になって成人してからにしよう。
 その前準備のために、僕は『瞬間移動』でここに来れるようにしているのだから。
 あの先生ですら、天地の森の魔物の群れには勝てずに命を落としている。
 慎重に慎重を重ねても、それはすぎたとは言わないと僕は思っていた。

「とはいえ、海に行くのを諦めたわけではない」

 それから一週間、僕は『飛翔』を駆使して天地の森の上空を探っていた。
 まずは、天地の森が一番薄くて海に近い地点を探り、その進路上に飛行可能な手強い魔物がないかを探るのだ。
 そこに竜などがいればアウトだが、いなければ『飛翔』で全力で飛べば海に辿り着くことも可能であろう。
 一週間の捜索の結果、どうにか『飛翔』で海まで飛び越えられそうな天地の森が薄い地点を発見することに成功する。
 幸いにして、魔物は天地の森からは絶対に一歩も出ないし、『飛翔』で全速力を出せば竜よりは少し速く飛べる。

「海には、美味しいお魚さんがいるんだ!『飛翔!』 マックススピードで! いざ、海へと!」

「お〜」

 ハクカが恥ずかしそうに手を上げながら声を出していた。
 久しぶりに燃えて来た僕は、ハクカを抱き寄せると多くの魔力を燃やして『飛翔』で魔の森を超高高度・超高速で飛び越える。

「きゃ〜〜」

 ハクカの悲鳴が響き渡る。
 そして数分後、僕は無事に海へと到着していた。

「・・・ハァハァハァ・・・」

「やったぁーーー! 海だぁ!」

 息を乱しグッタリしているハクカと海についた喜ぶ僕がいた。
 そこは、まったく人の手が入っていない綺麗な砂浜と透明度の高い海水でのみ構成された海であった。

「・・・こわかった・・・」

「・・・あ・・・ごめん」

 涙目をするハクカに海に到着して浮かれていた僕は、ハクカに謝った。

「・・・きれい」

「ああ」

 ハクカが足を海水につけていた。

「・・・・きもちいい」

「まずは、ご飯だな」

 僕は、釣り道具を砂浜近くにある岩場でパンを餌に釣りを始める。

「わたしもする」

「分かった・・・交代でしよう」

「うん」

 するとここの魚は擦れていないらしく、釣り経験の少ない僕でも簡単に釣り上げることができた。
 前世で自炊をしていたおかげで、つたないながらも魚も捌けたので、すぐにサバに似たこの魚が食えるのかを『鑑定』で確認してから、念のために『毒消し』もかけ、火で焼いて食べてみることにする。

 味付けは塩だけであったが、久しぶりの海の焼き魚に僕とハクカは舌鼓を打っていた。

「あとは、貝とかエビにカニだな」

 岩場では他にもカキやサザエやアワビに似た貝や食べられる大型のエビやカニなどが簡単に獲れた。
 それらも串に刺してから火で焼くと懐かしくて美味しい匂いが漂ってくる。

「おいしい」「美味い!」

 ハクカの心からの笑みに見惚れながら、僕とハクカは海の幸を心から堪能するのであった。



 数日後。
 海岸で新たな取り組みを開始していた。
 別に海岸で試す必要はないのだが、ここだと人目は皆無であったし、なにより自由に海の幸が食べられるのがいい。

「ここでは、塩も大量にあるからな」

 僕が今挑戦しているのは、土系統魔法の応用オリジナル魔法であった。
 まずは、いくらでも好きに使える大量の海水を材料に魔法で塩を作る実験を行うのだ。
 ただ、この魔法は先生が残した本にも書かれている。
 冒険者が塩を切らした時に、土や岩塊、動植物に、果ては魔物の死骸まで。
 そこにわずかに含まれる塩を魔法で精製して得ることはよくあるそうだ。
 人間とは不思議なもので、まだ食料が十分に残っていても、それに塩味がついていないだけで、食欲をなくして死んでしまうケースがあるそうだ。

 人間にとって、塩とはそれほど重要なものなのだ。
 話を戻すが、先生からの本に書かれていた魔法のコツによって、僕は素早く大量に高純度の塩を得ることに成功していた。

「というか、塩の販売で生きていけるかも」

 塩商人も悪くない……などと考えてしまう僕であった。
 ふと南方に島を発見し、そこで自生していたサトウキビから砂糖の精製を魔法で試みていたりした。
 砂糖は、リンガイア大陸の南端地域や南方海上に浮かぶ島嶼などで栽培されているらしい。
 当然、王都や北方地域、果ては輸出品としてアーカート神聖帝国にも輸出されていると本で見たが、僕はファブレ騎士爵領内では一度も見たことがなかった。

 なんでも、需要に比べて極端に生産量が少ないので、価格が塩よりも圧倒的に高いからだそうだ。
 あとは、森で獲れるハチミツや果物とか、汁を煮ると軽く甘い蜜が出来る蔓などで甘味を補っているのが普通であった。

「・・・米が欲しくなるな。第一の目標は、ブライヒレーダー辺境伯家の館がある南部最大の商業都市ブライヒブルクだな」

 ブライヒブルクは、先代が大きな失敗をしてその損害の回復で苦労はしていたが、その程度では揺るがない大身ブライヒレーダー辺境伯領の本拠地で、南部辺境地域における最大の商業都市であった。

 南部に領地を持つ貴族たちは、必ず贔屓の商人に商会支店を作らせて常駐させていたし、近隣の領地からも多くの人たちが観光や買い物に訪れる。

 そしてなにより、ここには南部辺境地域を統括する冒険者のみならず、各種ギルドの南方本部が設立されていたのだ。

「次の目標は、ブライヒブルクに『瞬間移動』できるようになることだな」

 米の購入に関しては、魔法の袋の中に入っているものでいくらでも購入可能であった。

「明日からは、山道を走らないといけないからな。早く帰って寝よう」

 僕は、『瞬間移動』を唱えて急ぎ家へと帰還するのであった。



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