様々な小説の2次小説とオリジナル小説

「(ようやく跡取り息子が結婚か……。うちも色々と事情があったからなぁ……)」

 今年で30歳になるマリオがようやく結婚をすると父が報告をした翌日。
 僕は、ローラン兄さんと茶髪の幼女と共にいつも採集に出かける森の中にいた。
 なぜかと言えば、もう数日中にはお嫁さんがこのファブレ騎士領に到着して結婚式が行われるからである。
 小なりとはいえ、一応は貴族の結婚式である。
 更に、こんな何も無い僻地の田舎村での冠婚葬祭ともなれば、それは普段は娯楽に飢えている領民達も一緒に祝いたいわけだ。
 実際には、我がファブレ家が全て負担する結婚式に出す料理や酒が目当てだと思う。
 まあ、そんな本音は別にして、数百人にもなるはずの結婚パーティーに顔を出すであろう面子が飲み食いする食料や酒ともなれば、これは膨大な量になる。

 かと言って、この地を治めるお館様ともあろうお方が、その部分をケチってしまうと問題になってしまう。

 領地の治める貴族が、その領民達にケチ臭いと思われてしまえば、それは後に大きな禍根の原因となってしまうであろうからだ。
 普段はいかに、パンとチーズで凌ごうとも、こういう時には食べ切れない、飲み切れないほどの酒やご馳走を準備しないといけないのだ。

 嫁の実家に払う持参金、衣装やアクセサリーなどは嫁の実家が準備するとしても、旦那の方の衣装なども新しく作らないといけないし、今話をしたパーティーで出すご馳走や酒の件もある。

 何しろうちは、天地の森への無謀な出兵で無視し得ない人的・物的・金銭的な損失を出している。
 領内の体制を建て直しつつ、跡取りであるマリオの嫁さん探しに、式を行えるだけの蓄え。
 そんな我がファブレ家の方針が色々と決まり、結婚式の準備に忙しいはずなのに、僕とローラン兄さんが森の中にいる理由。
 容易に想像がつくわけだが、要するに結婚式で出す料理の食材を獲って来るようにと父からの命令であったのだ。

「彼女は、母親に頼まれて僕らと一緒に狩猟のお手伝いをすることになったんだ」

 ローラン兄さんが茶髪の幼女を紹介してくれるようだ。
 腰下まで伸びた茶髪、明るい茶色の瞳、白色のワンピース、身長は僕と同じぐらいだから95cmぐらいだ。

「は・・はく・・か・・・です。よろしく・・お願いします」

 ローラン兄さんの手を握りながら不安そうな顔を浮かべながらも挨拶をしてきた。

「ルークだよ。よろしくね、ハクカちゃん」

「うん」

 僕の返事に途端に安堵した笑顔を浮かべるハクカ。

「遠慮しないで、魔法を使っても良いんだよ」

「ええと……」

 突然のローラン兄さんからの『魔法を使っても良い』発言に口を篭らせてしまう僕であった。

「ルークは、身体を洗うときにお湯を使っているだろう」

 僕が一人で森に入って心配されなかった理由の一つには、最低でも魔法を使っている件に対して黙認というか家族の間で緘口令が敷かれているようだ。

「ルークは、やはり6歳とは思えないほど賢いね」

 僕が、ファブレ家の八男ルークへと転生したその日、夢の中で六歳以前の彼の様子を知る事となる。
 僕が転生する前のルークは、いつも父の書斎に篭って本を読む、年齢に相応しくない行動を見せる人物であったらしい。
 その点は、今の僕と共通項も多いようだ。

「そう。父上も母上も、マリオ兄さん達も家族全員が知っていたのさ。ルークに魔法の才能があるという事を」

 そうなると一つ疑問が出て来る。
 なぜ、僕の魔法をもっと領地の発展に生かさないのかだ。
 するとローラン兄さんが僕の疑問に気が付いたらしく、すぐに僕の疑問に答えてくれた。

「もし、ルークが幼くして魔法の才能を領民達に発揮したとしよう。そうなれば、これはお家騒動の発端となるだろうね」

 この世界における貴族を含めた家の相続は、長男が優先される。
 これに加えて王族や貴族ともなると、今度はその子を産んだ妻の身分が重要となる。
 貴族でない名主の娘である妾の子供達には相続権が基本的には無い。
 あるとすれば、それは本妻に男子が生まれなかった時の事だ。
 本妻の子供が女子だけであった場合、これはその貴族によって判断が分かれる。
 長女に婿を取って跡を継がせるケースと妾の産んだ長男を継がせる場合。
 要するに、一応は本妻の子優先、長男優先という風習はあるが、最後には当主である父親の決定が最優先されるようになっていたのだ。
 このせいで、良くお家騒動が発生して双方が刃傷沙汰に及んだり、騒ぎを自力で収拾できずに王家に知られてしまい、罰として領地を減らされたり、果ては改易という処分まで受ける貴族家も数年に一度は必ず発生するそうなのだ。

「ルーク、君は僕と同じく家を出たいんだよね?」

「はい、冒険者として身を立てたいです」

「なら良いんだ。父上も、それは把握している」

「そうなのですか」

「漢字は読めないけど、一応は貴族家の当主なのさ」

 父は、僕が魔法を領民のために大々的に発揮した場合を想定し、これによる領内の利益よりも家臣達や領民達が無責任に『魔法の使えるルークこそ、ファブレ家の当主に相応しいのでは?』などと騒ぎ、おかしな派閥でも作られたら堪らないと考えているそうだ。

「そうでなくても、五年前の出兵の失敗が糸を引いているんだ。だから、ルークの魔法を大っぴらに宣伝しないのさ」

 間違いなく、僕こそがファブレ家の次期当主に相応しいと騒ぐ人間が出て来るはずだ。

「なるほど、そのための森篭りの黙認であると」

「十五歳になって成人したら、遠慮しないで家を出て欲しいんだろうね」

「個人的には、もっと早く家を出る予定です」

「ユリが目指している冒険者予備校だね」

「はい」

 僕はローラン兄さんから、規模は小なれどお家騒動の芽がある事を知り、早く成人してこの領を出たいと真剣に思ってしまうのであった。



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